コワーキングと交流スペースでおもしろいことを育てる「川内村複合まちなか拠点うまわーる」

仕事、暮らし、将来の夢。福島12市町村には、豊かな自然環境のなかで暮らしながら人生の理想を叶えたい方を応援する施設が各地にあります。川内村に2025年11月にオープンした「川内村複合まちなか拠点うまわーる」(以下、うまわーる)もその一つです。
今回は、川内村総務課企画政策係の秋元喜夫(あきもと よしお)さんと、施設コンシェルジュの橋本見穂(はしもと みほ)さん、高橋文子(たかはし あやこ)さんに、施設のルーツと展望を伺いました。
静かな作業、楽しいおしゃべり、デジタル相談もできる拠点

村役場からほど近く、民家や飲食店などが集まる川内村の町分(まちわけ)地区。そこにある小高い丘は、かつて川内村立川内第二小学校があった場所です。里山の木々を揺らしながら心地よい風が吹き抜けるその場所に「うまわーる」はあります。
うまわーるは、コワーキングスペースを備えた多目的交流空間です。村内外の方が仕事や会議、集会などに使えるほか、常駐している施設コンシェルジュと川内村の暮らしについて情報交換ができます。取材時(2026年7月)は実証利用期間として村が直接運営管理しており、利用希望者は利用申請フォームから申し込むスタイルとなっています。コワーキングスペース・多目的会議室は使用開始時間まで、チャレンジスペースは使用の前日までに申請が必要です。

コワーキングスペースは合計12席。電源、フリーWi-Fi、複合コピー機、シュレッダーといったオフィス環境に加えて、フリードリンクも利用可能です。自然に囲まれた立地はとても静かで、作業に没頭できます。時には自分自身と向き合って思考する時間も作れそう。

施設内にはほかにも、大型モニターが備え付けられた多目的会議室や、作品や商品をPRできる貸し棚付きのチャレンジスペースもあります。2027年以降には貸オフィス2室もオープン予定です。
施設には、老若男女、さまざまな方が訪れます。子育て中のリフレッシュを兼ねておしゃべりに来る村内の方。移動中に立ち寄り、通信環境の整った場所でのパソコン作業に利用する村外の方。施設に常設している村民向けのサービス「デジタルよろず相談」を利用してスマートフォンやパソコンの困りごとを相談する方など、その目的は実に多彩です。

「施設ができたばかりの頃は『村の中心地に何ができたのかな?』と気になりつつも、足は向かない方が多かったようです。利用者層を押し広げてくれたのは、口コミでした。施設を利用した方が友人や知人におすすめしてくださることで、少しずつ利用者の幅が広がっていきました。『いいところだよ』と紹介してもらえるのは本当にうれしいですね」(橋本さん)
村外からの利用者も少しずつ増えていると言います。
「オープンしたばかりの頃は視察などで来る方が多かったのですが、今は、コワーキングスペースを求めてたまたま立ち寄った方がこの場所を気に入ってリピーターになってくれています。静かで集中できる環境がお気に入りだそうです」(高橋さん)
お二人の話からは、うまわーるの穏やかな日常の様子がありありと伝わってきました。
未来へつなぐ建物と、村のシンボルにちなんだ名称
構想から実現まで約4年。時間をかけ、メッセージを込めて作り上げたうまわーるのこだわりポイントの一つは、建物です。ドイツ風建築の高気密・高断熱な造りとなっており、屋内環境を常に穏やかに保ちます。

「この建物は、震災後に村外の有志から日本赤十字社を通して仮設のコミュニティセンターとして寄贈されたものです。全村避難の期間は郡山市内で使われ、避難指示解除後は村内に移築されて、放課後児童クラブや長崎大学の川内村復興推進拠点、福島大学の相双地域支援サテライトとして使われてきた、常に村民の傍らにあった建物です。この建物を使うことは、村の大切な歩みを未来へつなぐうえで大きな意味があると感じました」(秋元さん)
村の未来のために長く使い続けてほしい――寄贈者のそんな願いが込められた建物が、新たな挑戦が生まれる場所として姿を変えたのです。

さらに、「うまわーる」という名称は、全国からの公募で決定しました。応募総数は866件。予想を大きく上回る反響に、秋元さんは大変驚いたそうです。村と有識者で候補を絞り決定したその名前は、村にゆかりのある詩人・草野心平が詠んだ
「うまわるや 森の蛙は 阿武隈の 平伏の沼べ 水楢のかげ」
という詩が由来となっています。森の蛙とは、川内村に生息するモリアオガエルのこと。全村避難を経験した村にとって、帰村のシンボルとなった特別な存在です。

この詩の「うまわる」とは、「殖(うまわ)る」と書き、カエルの卵からおたまじゃくしが増えて広がっていく様子を詠っています。
「この施設名には、さまざまなチャレンジや交流が生まれ広がっていく施設になってほしいとの願いが込められています。ロゴマークも施設名に連動し、もこもことしたモリアオガエルの卵と、地域の縁を示す輪をモチーフにしました。『うまわーる』の文字はプロジェクトメンバーの手書きによるものです」(秋元さん)
建物、名称、ロゴマーク。それぞれに込められた村の想いが、これから未来へとつながっていきます。
インターン拠点、企業誘致……わくわくする未来が「うまわる」場所へ
うまわーるは現在、村で活動する大学生やインターン生の拠点、そして地域おこし協力隊の活動拠点としても活用されています。今後、貸オフィスへの企業誘致が進み、おもしろいことがどんどん「うまわる」場所になっていけばと、秋元さんは語ります。
「今年度は、福島県内外の大学生とのコラボイベントや、村外のアーティストを講師に招いたワークショップを開催予定です。貸オフィスに入居してくださった企業と協業し、魅力的な仕事の創出など、村の地域課題にアプローチする取り組みもできたらと考えています」(秋元さん)

また、施設コンシェルジュが常駐する施設として、移住後の暮らしのサポートにも積極的にチャレンジしたいと話します。
「移住後の暮らしは、自分の行動次第で変わります。やりたいことや叶えたいことを、どんどん口に出せる場所として、うまわーるを利用してもらえたら嬉しいです。うまわーるは利用者のニーズに合わせて柔軟に姿を変えられる場所であると同時に、村内の各所へのつなぎを行える『村の総合案内所』なんです」(橋本さん)
また、移住後の方だけでなく、これから移住を考える方へもメッセージを発信していきます。
「インターネットで得られる地域の情報には限りがあり、実際に現地で触れるものとは印象が異なる場合があります。地域との相性は、肌感覚でしか確かめられません。だからこそ、まずは気軽に川内村を訪れてみてほしいです。コワーキングや交流スペースがある当施設を、訪れる理由のひとつにしていただければと思います」(高橋さん)

秋元さんは最後にこう結びました。最終的に移住先を決めるのは「人の縁」であり、移住前に現地の人たちと関係をはぐくめるかどうかが重要なのだ、と。
仕事場として、交流スペースとして、そして地域にもっと関わりたくなるきっかけをくれる施設として。川内村への移住を検討中の方は、うまわーるへぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
■川内村複合まちなか拠点うまわーる
所在地:〒979-1201 福島県双葉郡川内村上川内町分138-1
TEL:0240-23-6852
HP:https://www.kawauchimura.jp/gyosei/yakuba-kokyoshisetsu/dxsuishin/umawaru/
Instagram:https://www.instagram.com/umawaru.kawauchi/
※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:橋本華加 写真:中島悠二