事業紹介

ものづくりを愛し、家具づくりを楽しむ職人たちが働く楢葉町の宏昇製作所

2026年3月12日

今年で創業65年目を迎えた家具メーカー、株式会社宏昇(ひろしょう)製作所の福島工場は、楢葉町の工業団地の一角にあります。東京に本社を置く同社が生産拠点をここに構えたのは、35年前の1990年のことでした。東日本大震災と原子力発電所事故のあとは一時的に県外に拠点を移しましたが、2019年に帰還。以来、オリジナルブランド開発にも力を入れ、ベテランと若手スタッフが一丸となって高級木製家具の製造・販売を行っています。斎藤修弘(さいとう のぶひろ)社長はじめ社員の皆さんの話を聞きました。

OEMを中心に設計・製造から在庫管理まで

「東京・深川で父が創業した家具屋がルーツです。主に椅子を作ってきました。40年前に私があとを継いでまもなく、東京の工場が手狭になったため、工場を新設する用地を日本各地に探し、たまたま楢葉町にご縁をいただいたのです」

カラフルでポップなスツール、畳を使った和モダンなベンチなど、スタイリッシュな家具が並ぶショールームで、斎藤社長は宏昇製作所の歴史について話してくださいました。

斎藤社長

高級木製家具メーカーである宏昇製作所は長年、企業やホテル、店舗向けのオフィス家具・インテリア家具のOEM(他社ブランド製品の製造)を中心に成長を続けてきました。現在は楢葉町の自社工場に加えて国内4社、海外6社の協力工場を持ち、そこでつくる製品もすべてこの福島工場に集めて、検品・在庫管理から出荷まで行っています。

椅子を中心とする家具の製造工程は大きく①木工、②塗装、③椅子張り・組み立てという段階に分かれ、いずれもベテランと若手がともに活躍しています。さっそく工場構内を見学させてもらいました。

約5,000坪という広大な敷地には大量の資材や製品在庫を管理する倉庫が並び、その一角に事務所棟と各工程の作業場があります。木材選定から木取り、プレス、加工などを行う木工作業場。続いて下塗り、中塗り、仕上げと何回も重ねる塗装の作業場。いずれも大きな作業機械が並んでいます。

検品前の最終工程である椅子張り・組み立ての作業場では、断裁された布地をミシンで縫製する作業と、大きな肘掛け椅子に布地を張る作業が行われていました。機械で行う布地断裁を除き、すべてはていねいな手作業による仕上げ。完成間近の肘掛け椅子はとても座り心地がよさそうでした。

椅子張りは力仕事。ソファなど大型のものは特に腕力を要する

76歳から27歳へ技術伝承、30代も活躍

現在、福島工場に勤務する従業員は12名ほど。家具職人というと、長く修業を積んだ年配者というイメージが強いかもしれませんが、ここで働く人は20~30代が多いそうです。その一人、2026年2月現在27歳で最年少という佐藤大樹(さとう たいき)さんに話を聞きました。佐藤さんは2019年に専門学校を卒業後すぐ宏昇製作所に入社し、塗装部に所属しています。

「私は学校で木工(ギターの製作)を学んでいました。関東の楽器メーカーに就職を考えていましたが、家庭の事情で、実家のある南相馬市に近いところで就職先を探すことになりまして。学校で学んだ技術を活かしつつ、新しいことに挑戦できると考えて決めました。現場では、この道50年というベテランの先輩から指導を受けています。数年前に自分のつくったものを今あらためて見ると、技術の上達を確信できてやりがいを感じます」

塗装のほか、カタログ用写真撮影や営業資料作成なども担当する佐藤さん

もっとも、佐藤さんのように学校でものづくりを学んだ人は、ここでは少数派とのこと。同じ時期に入社した仲間たちはほとんどが未経験からの出発だったそうです。企画開発部部長で木工も担当する亀田昌哉(かめだ まさや)さんの前職は、県外でシステムエンジニアをしていました。椅子張り・組み立てを担当し、福島工場全体の工場長も務める佐久間伸(さくま しん)さんは設備会社からの転職組。いずれも入社してから技術を身につけ、いまや第一線で活躍する30代です。

一方、塗装作業場には最年長となる76歳の職人、山本博(やまもと ひろし)さんが働いていました。佐藤さんが技術指導を受ける“師匠”です。「入社前は『見て盗め』タイプの寡黙な人だったらどうしよう、と不安だったんです。けど、実際にはギャグを挟みながらたくさん話してくれるのでよかった」と佐藤さん。「私も若い人たちが入ってくれて安心。彼らにはもう全部任せられますよ」と山本さん。笑顔の会話にこの職場の雰囲気が表れているようでした。

椅子張り・組み立ての作業場入口に積まれたさまざまな布地

「福島産」にこだわったオリジナルブランドも

さて、ショールームに戻って、展示されているカラフルなスツールや和モダンのベンチなどについても聞いてみました。これらは宏昇製作所のオリジナルブランドだそうです。

「こちらのキャリースツール(下にキャスターがついていて動かしやすい)は全11色あって、どれも福島県の自然や産品がテーマになっているんですよ」(亀田さん)

猪苗代湖のブルー、鶴ヶ城の瓦のワインレッド、楢葉町特産のゆずをイメージした黄色、など。楢葉町のふるさと納税の返礼品にも選ばれている

「『ubusuna(うぶすな)』のシリーズは福島県産材を使用しているのが特徴です。シリーズの一つである『Wabi』は、和室に合う家具を作りたいと考えて、いわき産の常磐杉の木目を活かすとともに一級技能士の畳職人の手による畳と合わせました」(亀田さん)

宏昇製作所がこうしたオリジナル家具の開発を本格化させたのは、ここ数年のことだといいます。主力のOEMは、基本的にお客様の注文に従ってつくる受注生産。でも、待っているだけでは時代の変化に取り残されてしまう――。そう考えた斎藤社長は、自分たちのつくりたいもの、そして“自分たちだからこそつくれるもの”に注力し始めました。

ビスやボルトをひとつも使っていないubusuna

そのような発想のもうひとつのきっかけは、2011年の東日本大震災と原子力発電所事故でした。当時、楢葉町は全町避難となり、宏昇製作所の工場も操業停止に。1990年の工場開設時に東京から楢葉町に移り住んでいた斎藤社長自身も、従業員とともに避難を余儀なくされます。しかし、納品を待っているお客様がいる限り、一刻も早く生産を再開しなければなりません。震災から2ヶ月後には埼玉県内に施設を見つけ、なんとか仮工場の稼働を開始しました。

それでも「いつか福島へ戻りたい」という気持ちを抱き続けてきた斎藤社長は、2015年9月に楢葉町の避難指示が解除されたのを機に帰還準備を開始。地震で被災した工場を修復し2019年3月に再開させると同時に、地域の林業復興に貢献する意味も込め、「福島産」にこだわったオリジナルブランドの開発を始めたのでした。

座面が畳のWabiはいわき産の杉材を使用

協力し合ってゼロからのものづくりを楽しむ

最後に、この仕事の魅力について皆さんに伺いました。

「職人には一人ひとりスタイルがあるんです。塗料の吹き方にしても師匠と自分では違う。教わったことをベースにしつつ、試行錯誤しながら自分のスタイルを確立していく、その過程がおもしろいですね。また、作業の段取りなどにかなり頭を使うので、自ら考えて行動する姿勢が大事だと思っています」(佐藤さん)

「椅子張りという工程のなかにも、布の裁断・縫製・張り・組み立てといくつも段階があって、そのうちひとつがよくてもほかがダメだと完成品になりません。1から10まできちんとできたら最高に楽しいですよ。そのレベルに到達するまでは大変ですけど(笑)。家具は人に使っていただくものだから、きちんとつくらないと転倒などケガにつながる可能性もある。緊張感を常に忘れず仕事に臨んでいます」(工場長・佐久間さん)

「ここでは材料から完成品になるまで、すべてを見届けることができます。工程ごとに部門が分かれていますが、もちろん部門間の協力は必須ですし、部門をまたぐ仕事も少なくありません。少人数なので、いろいろなことを兼務していただく必要もあります。最初はしっかり教えますので、ゼロからモノをつくりあげる過程を楽しめる人にぜひ来ていただきたいですね」(斎藤社長)

斎藤社長を挟んで佐藤さん(右)、亀田さん(左)

心の底からものづくりが好きな人たちが集まっている宏昇製作所。チームの一員となって職人の技術を身につけることに興味のある方は、ぜひ応募してみてはいかがでしょうか。


■株式会社宏昇製作所
1961年創業。会社設立は1968年。本社は東京渋谷区に所在。1990年に福島県楢葉町に工場を新設し、木製家具の設計から製造・在庫管理まで一貫して手掛ける。東日本大震災・原発事故後、一時的に埼玉県に工場を移転するも、2019年に帰還。国内外の協力工場と連携し、少人数で安定生産を可能にする生産体制を構築。従来のOEM生産に加えて、福島県産材や伝統技術を活用したオリジナルブランドを立ち上げ、地域に根差したものづくりにも力を入れる。

■株式会社宏昇製作所(福島工場)
所在地:〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町山田岡仲丸1-25(楢葉町南工業団地B3)
TEL:0240-25-4100
HP:https://www.hirosho-ss.com/
営業時間:8:30~17:30
定休日:土・日曜日

(東京本社/ショールーム)
所在地:〒150-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷1-29-9 1F
TEL:03-3404-5856

※所属や内容は取材当時のものです。最新の求人情報は公式ホームページの採用情報をご確認いただくか、直接お問い合わせください。
取材・文:中川雅美(良文工房) 撮影:塩沼麻衣