【移住セミナーレポート】vol.19「ふくしま12チャレンジストーリー 私がこの場所を選んだワケ」(東京開催)

2025年10月6日

セミナー概要

ふくしま12市町村移住支援センターが主催する「未来ワークふくしま移住セミナー」は、福島12市町村で暮らすことの魅力や、チャレンジの場としての可能性をお伝えするセミナーです。令和7年度初回のセミナーは、2025年7月12日(土)、東京にてvol.19「ふくしま12チャレンジストーリー私がこの場所を選んだワケ」を開催しました。

当日の様子を動画でもご覧いただけます

アーカイブ版(全編動画はこちらからご覧ください

ゲストによる活動紹介

子安 結愛華さん
双葉町/浅野撚糸株式会社 総務グループ長/アテンドグループ長 企画広報担当)

はじめまして。双葉町から来ました、浅野撚糸の子安結愛華と申します。
岐阜県出身で、高校卒業後に浅野撚糸へ入社し、現在は福島県双葉町に勤務しています。

浅野撚糸は岐阜県安八町の糸の製造会社で、5年かけて開発した特許糸「スーパーゼロ」で作られた『エアーかおる』というタオルを販売しています。2023年、当社は福島に「スーパーゼロミル」という複合施設をオープン。私はその工場で事務や広報、見学案内などを担当しています。

福島進出の背景には、社長の福島への強い想いがあります。学生時代を福島で過ごした社長は、東日本大震災後「福島に恩返しがしたい」と感じていたそうです。経済産業省から復興支援の要請を受け、双葉町での施設開設にいたりました。

入社当初、社長から「福島で働いてもらう」と言われ、驚きました。
「双葉町ってどこ?」という状態でしたが、未知の体験に挑戦しようと決意。
実際に来てみると、スーパーもコンビニもなく、生活の不便さに戸惑いました。
震災当時、私は小学1年生で、福島の現状をあまり知りませんでしたが、避難指示がようやく解除されたばかりという状況に驚きました。
最初は孤独でしたが、少しずつ町にも人が戻り、生活環境も整ってきました。釣りやカフェ巡りを楽しんだり、今では後輩と出かけることも増え、福島での暮らしが充実してきました。
後輩の中には「地元のために働きたい」と強い思いを持つ子もいます。そんな姿に刺激を受け、「自分も福島の復興に関わりたい」と思うようになりました。1年で戻るつもりでしたが契約を延長し、現在は町づくりや地域活動にも参加しています。

福島の方々は本当に温かく、「岐阜から来たんだね、ありがとう」と声をかけてくださいます。硬くて甘い桃との出会いも含め、福島での暮らしが私の世界を広げてくれました。
「移住」と聞くと不安に思う方もいるかもしれませんが、私のように小さなきっかけから人生が豊かになることもあります。このお話が誰かの一歩につながれば嬉しいです。私は福島で、これからも自分らしく輝ける場所を探し続けたいと思います。

中島 悠二さん
(楢葉町/写真家・NPO法人ふくしま浜街道トレイルアソシエーション代表理事)

浜通りの海のそばの町、楢葉町に住んでいます中島です。川崎出身で、長く東京で写真のフリーランスとして活動していました。
現在は「NPO法人ふくしま浜街道トレイルアソシエーション」の代表として、福島県の南端から北端まで220kmの道を歩いて楽しむ「ふくしま浜街道トレイル」の運営を行っています。

移住のきっかけは「歩く道=トレイル」との出会いです。
アメリカ・ジョン・ミューア・トレイルなどの長距離歩道を歩くなかで、撮影の仕事も得てきました。その流れで、環境省が整備した全長1,000kmの「みちのく潮風トレイル」の撮影に関わり、福島の沿岸部へ頻繁に訪れるようになりました。
2020年ごろから福島南部へのトレイル整備の動きが始まり、私も初めて福島に足を運びました。ちょうどその頃、コロナ禍で仕事が激減し、自分の人生を見直すなかで「これから」の可能性がある福島に魅力を感じ、2021年に楢葉町へ移住しました。

楢葉町は全員が避難経験者で「誰もが移住者」。外から来た私にもとても温かく、支援制度も手厚く、移住初心者に優しい町だと感じました。
移住後は畑作業やサーフィン、若い仲間とイベントを企画するなど、地域との関わりも増えました。石材工場跡地でのライトアップや「ならは百年祭」、鮭の復活を願う赤ふんどし祭りなど、ユニークな活動にも関わっています。

私の活動の中心であるトレイルは、車や電車では体験できない、地域を深く知る手段です。出会いと交流が生まれ、100年、1,000年と続く「巡礼路」のような存在になればと願っています。タレントのなすびさんも仲間として応援してくれています。

そして、移住して一番よかったのは「彼女ができたこと」です(笑)。
東京では出会えなかった温かい関係性を、福島では築けています。
一方で、意外とにぎやかで、人との距離が近い分、静けさを得るには工夫も必要だと感じます。

菊池 未央さん
(葛尾村/一般社団法人葛尾 むらづくり公社 復興支援員・任意団体 moco 副代表)

葛尾村に移住して3年目の菊池未央です。出身は東京都足立区、以前は世田谷で暮らし、27年間公立保育士として働いていました。
現在は葛尾村で復興支援員として働く傍ら、夫と共に任意団体「moco」を立ち上げ、子育て支援や読み聞かせ活動を行っています。

移住のきっかけは、次男の「福島で漁師になりたい!」という一言でした。
彼の強い意志を尊重し、家族で福島への移住を決断。空き家バンクを活用し、理想的な住まいに出会えたことも後押しになりました。実はそれまで「葛尾村」の名前も知らず、初めて訪れたときは、信号も少なく、まさに“田舎”という印象でした。
暮らしてみると、静かで空が広く、星が美しく、自然とともに過ごす時間が心地よく感じられるように。車の運転も快適で、東京での生活とは大きく変わりました。

反面、公共交通や医療機関の少なさ、地域の噂の広がりやすさには驚きましたが、それ以上に温かく迎えてくれた村の人々の存在が支えになっています。
現在は、復興支援員として子ども食堂やイベントの企画運営に携わり、地域に少しずつ溶け込んできた実感があります。また、「moco」の活動では出前保育や畑作りにも挑戦中。自然の中で子どもと関われる時間を大切にしています。

私たち夫婦は「あと十数年、何かやってみよう」との思いで移住しました。予想外の転機が人生を変えることもあります。気になる場所があれば、思い切って訪れてみてください。きっと、自分らしい暮らしが見つかるはずです。

ゲスト✕ぺんぎんナッツ トークセッション

「どうしてここだったの?それぞれの挑戦」

福島県浜通り地域での移住をテーマにしたトークセッションでは、3人のゲストがそれぞれの移住のきっかけや現在の暮らしについて、率直に語ってくださいました。

子安さんは、もともとは自身の意思というより、会社の方針で一時的に滞在する予定だったそうです。しかし、日々の仕事を通じて町の変化を肌で感じ、復興の真っただ中で働く後輩たちの姿勢に心を動かされたと語ります。「最初は“職場が変わっただけ”という感覚だったのに、後輩たちは“自分の存在が復興につながっている”と信じて動いていた。

それが本当に恥ずかしくて、そして誇らしくなった」と笑顔で話されました。
双葉での暮らしについても、「空が大きく見える」「流れ星が見える」「人がとてもやさしい」と話し、都会では見過ごしていた“美しさ”に気づいたとも語ります。

中島さんは、写真家としての活動を続けながら、NPO法人「ふくしま浜街道トレイルアソシエーション」の代表理事としてトレイル(長距離歩道)の運営に関わっています。元々は都会派で、移住など考えたこともなかったそうですが、福島との縁ができたことや、コロナ禍での生活の見直しをきっかけに、移住を決意したといいます。
「住んでみてから、価値観がガラッと変わった」と話し、「写真の風景も変わった」「自然が近くにある暮らしは、感性を豊かにしてくれる」と実感を込めて語られました。さらに、楢葉町での出会いをきっかけに彼女もできたとのことで、「移住して本当によかったことの一つです」と照れながら明かしてくださいました。

菊池さんは、次男が「漁師になりたい!」と言ったことがきっかけでした。
世田谷で保育士として安定した生活を送っていた菊池さんにとって、まさに人生の転機だったといいます。
「まさか自分が田んぼに囲まれた場所に住むなんて思っていなかった。でも、不思議と心地いいんです」と話す表情は穏やかで、自分らしい暮らしを手に入れた様子が伺えました。

また、移住後は畑仕事や犬との暮らし、村全体で行う運動会など、東京では得られなかった経験が日常となっているといいます。「人の温かさや、自然の音、地域全体でつくるイベントなど、ここにしかない魅力がある」と、都会とは違う心の豊かさを語ってくださいました。

「海側と山側の魅力の戦い!」

後半のトークテーマは、「チャレンジするなら海?それとも山?」という視点で、各地域の暮らしの魅力について深掘りしました。

中島さんは海沿いの暮らしについて、「移住してからサーフィンを始めた」と話します。周囲の人に触発されてチャレンジしたそうですが、今ではすっかり夢中に。「やりたいと思ったらできてしまう環境が、福島にはある」と語ります。

一方で、菊池さんは山間部ならではの静けさや自然との距離感が、心の余裕を生み出してくれたといいます。「父の故郷は佐渡で、昔は“田舎なんて嫌だ”と思っていた。でも今は、自分に合っていたのだと感じる」と、内面の変化にも触れていました。

子安さんは、海と山の中間にある環境を「ちょうどいい」と話し、移住後に釣りを始めたことを楽しげに語ります。「岐阜では考えられなかったけど、福島では“やってみよう”と思えた。環境が人を変える」との言葉が印象的でした。

「これから移住される方へのメッセージ」

最後に、それぞれがこれから移住を考えている人に向けてメッセージを送りました。
子安さんは「まだまだ復興途中のまちだからこそ、自分たちの手でまちづくりに関われる特別な地域」と語り、
中島さんは「移住は“ノリ”でもOK。予想外を楽しめる人ならきっと合う」と背中を押します。
そして菊池さんは「不便と思っていた場所が、今では心地よくて離れたくない。まずは足を運んで、“ぐっ”とくる何かを見つけてほしい」と話し、締めくくりました。

移住の理由は人それぞれ。でも、自然や人のあたたかさに触れ、自分らしい暮らしに出会えるのが福島12の魅力。ここでの出会いや体験が、人生の新しい一歩のきっかけになっているように思えました。

会場限定コンテンツ

①移住のホンネ ゆるっと先輩座談会

「どうして移住したの?」「暮らしてみて実際どう?」といった疑問に対し、福島12市町村に移住した先輩移住者が、本音で答える座談会を実施しました。現地の魅力やリアルな暮らしの様子を直接聞くことができ、移住のヒントが詰まった貴重な機会となりました。

②移住相談ブース

また、移住に関する個別の疑問には、移住相談員が一人ひとり丁寧に対応し、活用できる支援制度についてもご案内しました。「12市町村の気候を知りたい」という質問から、「ここに移住したい」と具体的に移住検討されている方まで、幅広い質問がありました。

③お仕事紹介ブース

さらに、移住における課題のひとつである「仕事」に関しては、専用の相談ブースを設け、現地の最新の求人や企業について情報提供しました。参加者が真剣に相談している姿が印象的でした。

④福島12市町村 暮らし発見ギャラリー

福島県浜通りの12市町村の暮らしを紹介するパネル展示では、夏の風景や冬の暮らしなど、四季折々の年間の写真や地域情報を通して、実際の生活をイメージしやすいようにと準備しました。山あいの地域から海沿いのまちまで、それぞれの魅力を感じていただける構成となっており、多くの方に立ち止まってご覧いただきました。

⑤福島12市町村 あみだくじマッチ

また、移住に関する質問に答えると、12市町村のなかで自分に合ったまちが見つかる「あみだくじマッチ」も実施し、マッチした市町村のオリジナルステッカーを配布しました。
一緒に参加された方同士でも、当たったステッカーがそれぞれ違っていて、「どこだった?」と見せ合いながら楽しむ様子が見られました。自然と地域への関心も高まるきっかけになったようです。

お帰りの際には、会場限定の抽選会を実施し、参加者には創業89年の老舗、楢葉町の玉屋菓子店さまの伝統の銘菓「茶まんじゅう」をプレゼントしました。

楢葉町のおいしい銘菓に笑顔あふれる会場となり、vol.19みらいワークふくしま移住セミナー「ふくしま12チャレンジストーリー私がこの場所を選んだワケ」は幕を閉じました。

令和7年度は9/6仙台、11/22東京、1/17大阪、2/21東京でも開催します。

すべて会場とオンライン配信のハイブリッド開催です。
どうぞお気軽にお申込みください!

最新のイベント情報は下記の特設サイトよりご確認ください。
https://mirai-work.life/lp/seminar2025/

素敵なゲストの方々とともに、皆さまのご参加をお待ちしております。