生活・その他

田村・川俣・飯舘・葛尾・川内の移住相談員が本音で語る!「山間部の暮らしってどう?」

2024年12月19日

福島12市町村の暮らしは、大きく海側と山側の二つの地域に分けることができます。福島12市町村のうち、山間部に位置するのは、田村市、川俣町、飯舘村、葛尾村、川内村の5市町村。今回は、山間部の暮らしをよく知る5市町村の移住相談員のみなさんが、山間部での暮らしの魅力やリアルな生活事情について語り合いました。

参加者のみなさん

左から齋藤さん(川俣町)、小宮さん(田村市)、郡司さん(葛尾村)、須永さん(飯舘村)、西山さん(川内村)。みんなで山のポーズ!

【川俣町】川俣町移住・定住相談支援センター 
齋藤悠(はるか)さん
生まれも育ちも川俣町。Uターンし、現在子育て中。

【田村市】一般社団法人Switch 
小宮優佳さん
郡山市出身。移住相談員でありながら田村市のプロモーションも担当。

【葛尾村】葛尾村移住・定住支援センター
郡司あゆみさん
福島県平田村出身。葛尾村の地域づくり団体で8年間活躍した経験も。

【飯舘村】いいたて移住サポートセンター3ど° 
須永奈都子さん
北海道出身。人生2度目の移住を機に、移住支援の道へ。

【川内村】一般社団法人かわうちラボ 川内村移住・定住支援センター 
西山舞さん
いわき市出身。前職の営業エリアだった川内村の人の魅力に惹かれ、移住相談員に。

やっぱり自然は魅力的!動物との共生も山間部ならでは

――みなさんが感じる、山間部の暮らしの魅力を教えてください。

川内村移住・定住支援センターの西山さん

西山さん 山の暮らしのよさって、やっぱり自然の美しさが大きいと思います。川内村でシェアサイクルに乗っていると、晴れの日の木漏れ日がすごくきれい。葛尾村もそうだと思いますが、川内村は地下水を生活用水として使っているので、蛇口から出てくる水がとってもおいしいんです。水がいいと、野菜もおいしい。川内村のように高地で栽培された野菜は甘みがとても強いんですよ。

郡司さん 山に囲まれた景色ってすごくいいですよね。葛尾村は夏場の緑がきれいな景色も良いし、紅葉もやっぱりきれい。あとは、とても静か。雨や風、自然の音がはっきりと楽しめます。自然の中でなんとなく過ごすのにはもってこいの場所で、キャンプをしに来る人も多いんですよ。

須永さん 飯舘村の方に村の魅力を聞いたとき、「朝がすがすがしい」と答えてくれた方がいました。夜も自分の呼吸が聞こえるくらいに静かで気に入っているんだと。天の川が肉眼で見えるのも、地域の誇りです。

葛尾村移住・定住支援センターの郡司さん

郡司さん 葛尾村に移住して畜産農家で働いている2人の女性がいるんですけど、二人ともすごく動物が好きで、仕事帰りにいろんな動物と遭遇するのを「自然のサファリパークみたい」と喜んでいます(笑)。リスやイノシシ、タヌキは当たり前に共生していますし、車道で遭遇しても、当たり前に動物優先ですね。

齋藤さん 水と土が良くておいしい野菜ができると、野生動物が食べてしまうってこともよくありますね。川俣町では、子どもたちが作った野菜が獣害にあってしまったことがありました。動物と共存することが当たり前になっていることを知ることができる、食育の機会だと捉えています。

それぞれの“家事情”はどう?

一般社団法人Switchの小宮さん

小宮さん 私は郡山市出身で、田村市から同じ高校に通っていた友人の家に遊びに行った時に、家がものすごく大きくてびっくりしました。所属する一般社団法人Switchで運営している空き家バンクを見ていると、12部屋もある家があったりして、土地柄なのかなぁと。土地に余裕があり、大きな家が多いのかもしれませんね。

齋藤さん 私は川俣町の中心部から車で10分ほど走ったところにある一軒家で暮らしていますが、隣近所が離れているので子どもがどれだけ騒いでも怒る必要がない!のびのびと子育てできています。私は子どもが生まれる前は都心に住んでいましたが、出産を機に地元に戻りました。都心だと泣き声など気にしながら生活しなければいけませんが、今は親にとっても子どもにとってもよい環境だと思います。

いいたて移住サポートセンター3ど°の須永さん

須永さん 飯舘村では田んぼや畑、山付きの物件が多いんです。管理が難しいかもしれませんが、何か事業を起こす人にとってはチャンスになりそう。
ただ、飯舘村では空き家バンクに登録されている物件は多くはありません。実際に住んではいなくても、愛着のある自宅を手放したくないという所有者は多いんです。最近は村の方に「空き家サポーター」として活動してもらうことで、少しずつではありますが移住者が住める物件も増えてきています。

西山さん 川内村も空き家は少ないですが、移住者向けの住まいでいうと村営住宅が8つあって、けっこうきれい。単身向けも世帯向けもあり、家賃が安いのでいろんなニーズに対応できると思います。民間のアパートは2軒あります。

郡司さん 葛尾も空き家バンクの登録は少なくて、民間のアパートもないんですよ。移住者の住まいでご紹介できるのは村営住宅です。家賃が安いのはいいですね。葛尾村の人たちはいい人たちばかりで、ごはんもおいしくて最高なんですが、住む場所の選択肢が限られている。なんとかできないか、いままさに頑張っているところです。

小宮さん みなさん家問題には悩まされていますね……。住まいの話でいうと、田村市は中心部の船引町に民間の賃貸住宅がたくさんあるので恵まれているほうかも。家賃はちょっと高いのですが、市には移住者向けの家賃補助制度があります。ただ、市内の不動産会社が管理している物件のみが対象。市内の物件の7~8割は隣の郡山市にある会社の管理なので対象外になってしまいます。今は、そこがちょっと残念なところです。

車は必須!自治会(行政区)ってどんな雰囲気なの?

――山間部の暮らしで苦労するところはどんなところですか?

川俣町移住・定住相談支援センターの齋藤さん

齋藤さん 山間部はどこもそうかもしれませんが、車がないと生活が不便なことでしょうか。車の運転に自信がない方は心配ですね。川俣町に移住してしばらくは自転車だけで生活していたものの、しばらく経ってから車を購入された方もいらっしゃいました。私たちの移住支援センターでは町内のスリップしやすい場所のマップを作成するなど、移住相談にいらっしゃる方には特に冬場の道路事情はリアルにお伝えするようにしています。

郡司さん 葛尾は村内で買い物できるところがほとんどなく、公共交通機関はバスだけ。だから車がないと生活は難しいと思います。

西山さん 川内村も一人一台はあったほうが良いですね。高齢者は免許返納後の生活が大変そうで、みんなで支え合って生活しているようですね。

齋藤さん 川俣町には電話をして停留所にタクシーを呼べる乗り合いタクシー「ふれあいタクシー」があって、ご高齢の方がよく使っています。

小宮さん 田村市にも乗り合いでタクシーを利用できる「たむららくらくタクシー」というサービスがあります。冬場の凍結で運転が怖い時にも使えるかも。

須永さん みなさん自治会(町内会)の制度って、相談者にはどのように説明していますか?地域によって自治会の雰囲気は異なりますが、以前の生活との違いに戸惑う移住者の方はいらっしゃるんじゃないかな。
飯舘村は原発事故による全村避難を経験していることもあり、もとの住民のみなさんは助け合って生活していて、絆が強いんです。飯舘村の自治会は「行政区」で分けられていて、必ず入らければいけないということはありませんが、移住相談窓口では入ることをおすすめしています。移住してきてくれる方の力になりたいと思っている地域住民の方は多いので、移住者からも歩み寄ればぐっと懐に入れてもらえて、地域になじみやすくなると思います。私の住まいがある南相馬市では自治会が「組」で分けられており、入ると婦人会や地域行事に駆り出されることもあります。

郡司さん 葛尾村にも自治会の制度はあります。葛尾では「行政区」と呼んでいて、移住相談の時に説明はしますが、入るか入らないかはその人におまかせしています。それに対して村の人が何か言ってくることも今のところありません。ただ、私たちに移住相談をして移住してくれた方には、一緒に区長さんのところにあいさつに行ってもらうようにしています。私たちと関わらず自分で住まいを探して移住した人の中には、行政区という制度を知らずに暮らしている方もいらっしゃるようです。知らないうちに近所に人が引っ越してきた、と近所の方がちょっと不安になるようなこともあるみたいです。
私が生まれた福島県平田村も山間部。山間部は自治会がきっちりしている傾向がありますね。

齋藤さん 川俣町には主に地域の行事などを行う15の自治会があるほか、回覧板を回すなど、町と住民の連携を担う110の区長分け(行政区)でというものもあります。自治会は強く結びついているところもあれば、関わりが薄いところもあったりで、雰囲気はいろいろ。須永さんがおっしゃっていたように、移住者本人が地域に関わりたいと思わないと、地域側も受け入れるのが難しいと思うのは正直なところです。

移住を検討している人へメッセージ

――福島12市町村の山間部へ移住を考えている方にメッセージをお願いします。

小宮さん 田村市は地域ごとにいろんな特色があるので、山に囲まれた田舎暮らしもできるし、まちでの暮らしも楽しむことができます。新幹線の停車駅である郡山市の隣なので、移動が便利なのも良いですね。田村市の皆さんは温かい方ばかりなので、ぜひ一度来てみていただきたいです。

郡司さん 葛尾村は決して便利な場所ではないんです。電車も通ってないし、車は必須だし、でっかいスーパーやドラッグストアもない。でも、不便を楽しみたい人や静かに暮らしたい人、自分の好きなことを突き詰めてやりたい人にはめっちゃおすすめです。村の人はすごく優しいし、移住者の方もすごく活発。やりたいことがあれば、村のみんなが応援してくれる地域なのでぜひ来ていただきたいです。

西山さん 川内村もやっぱり不便は不便。でも人が温かくて、優しくて、面白いんです。自然もいいけど、私の中ではやっぱり村民性が一番の魅力かな。移住をしたら、みんな温かく迎えてくれると思います。移住をすると、村長が移住者一人ひとりに移住支援金を手渡ししてくれるんですよ。村って聞くと閉鎖的なイメージがあるかもしれませんが、そのぐらい村長と住民との距離が近いんです。すごくいいところなので、来ていただけたら嬉しいです。

須永さん 飯舘村での暮らしは利便性や数多くの人との関わりからは離れることになりますが、自分の直感を信じて生活できる場所だと思っています。村の方は、一人ひとり大切に人間関係を築いている方ばかり。都会を離れて移住を考えている方はぜひ一度、飯舘村に来てみてもらいたいです。その時は私たち「いいたて移住サポートセンター3ど°」の相談員がお手伝いをさせていただきます!

齋藤さん 川俣町は新幹線の停車駅がある福島市から車で30分、東京からだと大体2時間ぐらいで来られる町です。町内にはスーパーもあるので生活には困りませんし、子育て支援にも力を入れています。ぜひ一度、川俣の人や暮らしに触れていただきたいです。

まとめ

今回ご登場いただいた移住相談員のみなさんは、いま担当している市町村とは違った場所での生活も知ったうえで移住のサポートをしています。ほかの地域の暮らしも知っているからこそ、相談では移住に役立つアドバイスをもらえるでしょう。自然と隣り合わせの暮らしや、各市町村の特色に興味を持った方はぜひ相談してみてください。お試し住宅で暮らしを体感するのもおすすめですよ。

各市町村の移住相談窓口はこちら。
https://mirai-work.life/concierge/

各市町村のおためし住宅はこちらでご紹介しています。
https://mirai-work.life/magazine/1360/

※所属や内容は公開当時のものです。
聞き手・文:五十嵐秋音 写真:及川裕喜