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【移住セミナーセポート】vol.14「ワクワクが生まれる地。ふくしま12市町村」編(札幌開催)

2024年10月31日

ふくしま12市町村移住支援センターが主催する「未来ワークふくしま移住セミナー」は、福島12市町村で活躍するゲストとの交流を通じ、現地での暮らしやその魅力を知ることができるセミナーです。

2024年9月7日(土)、北海道札幌市にて「ワクワクが生まれる地。ふくしま12市町村」編を開催しました。

当日の様子を動画でもご覧いただけます

ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)

第1部 ゲストによる活動紹介 / パネルディスカッション

佐別当 隆志さん/株式会社アドレス 代表取締役社長

〈佐別当さん〉
私は福島12市町村の移住者ではありませんが、事業で関わりを持っています。大阪出身で、2000年に新卒でIT企業に入り、東京で20年ほど働いていました。株式会社アドレスを2018年に創業し、今年6年目です。プライベートでは、昨年札幌に移住し、今年の春からは静岡の三島にも部屋を借りて二拠点居住をしています。会社は東京にあるので、東京も含めた多拠点で生活を送っています。

私たちのサービス「ADDress」の紹介をしますと、毎月定額料金を支払うことで全国に約300カ所ある物件の中から、好きな場所に好きな時に住めるというものです。1カ所に定住するのではなく多拠点で生活をする、そういったプラットフォームで、物件が福島県にもいくつかあります。現在12市町村では、南相馬市、広野町、富岡町にありますが、増やしている途中です。

暮らし方の多様性という観点では、福島に完全移住するだけでなく、第二第三の選択肢として、いろいろな住まい方、働き方があるということも知っていただけるとうれしいです。

実際に移住や多拠点生活を考えた時、住まいというハードがあるだけではなく、地域の人との交流がとても大事だと思っています。その意味で私たちのサービスには、物件を管理する家守という人たちがいて、まるで地元のおじさんやおばさんのように、バーベキューや温泉に誘ってくれたり、地域活動に参加する機会をくれたりと、地域の人とのつながりが増えるようにサポートしてくれます。このようにADDressは、ハードとしての住まいと、ソフトとしての交流をセットで用意しているサービスです。

福島に行くとどんな体験ができて、どんな人と出会えるかは、行かないと分からないところもあるので、「みにきて!ふくしま」というプロジェクトで、実際に福島を訪れた会員さんのインタビューを紹介したり、現地を知るためのイベントを実施したりしています。例えば昨年、「ふくしまチャットウォーク」として、会員さんと地元の方々に参加してもらい、会話をしながら浜通りを歩いて地域を知る機会を設けました。それがきっかけで、あるエリアが好きになり定期的に通う人が現れ、中には12市町村に移住を決めた人もいます。このような企画に参加することで、自分だけでは出会えない人に会って仲良くなれる。これは移住の決め手の一つになると思います。

私は、住む場所を変えることは、人生を変えるきっかけ、可能性を広げる機会になると考えています。皆さんも大学入学や就職で住む場所が変わった経験があると思いますが、生活も友達も変わりましたよね。その意味でも多拠点生活サービスは重要だと考えています。福島12市町村での暮らしも人生を変える1つの機会と捉えてもいいのではないでしょうか。いろいろな地域で暮らし、複数の仕事を持ち、さまざまな場で友達を作る。それができたら、地域にとっても自分の人生にとってもプラスになると思います。

東 大智さん/會澤高圧コンクリート株式会社 上席執行役員

〈東さん〉
私は北海道出身で、會澤高圧コンクリート株式会社に勤めています。入社後も北海道で働いていましたが、2023年6月、浪江町に福島RDMセンターがオープンし、浪江町に移住することになりました。これが初めての北海道外に住む経験です。

私たちの会社は、コンクリートの総合メーカーで、生コンクリートを建設現場に入れたり、住宅の基礎を支えるプレキャスト製品などを扱っていますが、既存事業のほかに、コンクリートと別のテクノロジーを組み合わせて未来を開発する取り組みをしています。例えば、コンクリートとバイオテクノロジーをかけわせた自己治癒コンクリートです。コンクリートはひび割れしますが、そのひび割れをバクテリアが自分で修復してくれるというものです。

コンクリートとテクノロジーを組み合わせて研究開発を行っていましたが、実は研究開発の拠点がなく、私がいた鵡川工場や札幌の事務所で実験をしていました。でも、いよいよコンクリート×新しいテクノロジーをどんどん推し進めたいとなって場所を探していたところ、浪江町とご縁があり、福島RDMセンターのオープンとなりました。

福島RDMセンターは、研究・開発して出来上がったプロトタイプを世の中に普及すべく生産し、マーケティングも含めてそのサイクルを回すことでイノベーションを起こし、浜通り地区の復興にもつなげる施設です。そこで私は、コンクリート×ロボティクスでコンクリートの3Dプリンターの研究開発をしています。従来コンクリートは、鉄の枠や木枠などの型枠を使って生コンクリートを流し込みますが、3Dプリンターは型枠を使わずに自由なデザインができるのが特徴です。

また、福島RDMセンターを使って、浪江町に人を呼び込みたいという想いもあり、テックイベントを実施しています。ほかにも、高校生や中学生、企業さんなどの見学依頼もあり、これからも関係人口を増やしていけると思っています。

浪江町に住んでみて、若い人たちが多く活躍している地域という印象を持っています。私は36歳ですが、それよりも若い人たちが起業したり、目標を持って生活している様子をたくさん目にしてきました。2024年2月発行の「田舎暮らしの本」(宝島社)の「住みたい田舎ベストランキング(人口1万人未満の町の部)」で、総合部門、若者世代・単身者部門ともに1位になっているのもうなずけます。今後もRDMセンターを拠点に、もっと浪江町を盛り上げていきたいです。

吉田 睦美さん/株式会社むー 代表取締役

〈吉田さん〉
私は、職業で羊飼いをしています。現在は、福島県と北海道旭川市を往来しながら羊を育て、羊肉を販売しています。東日本大震災までは生まれ育った浪江町で暮らしていました。

震災の前、川内村にあった夫の実家で羊を飼っていて、品評会に出すために義父が一生懸命育てており、私も世話を手伝うことがありました。その羊が震災で取り残されてしまい、(警戒区域に指定された)川内村から連れ出せなくなってしまったんです。

なんとか助けたいと思いましたが叶わず、通って世話をしました。そんな経験があってもう一度羊を育てたいという思いに駆られ、羊牧場をつくることを目指していたところ、2016年に田村市に土地が見つかって現在の牧場を始めることができました。さらに、昨年9月からは、夫が旭川に常駐して羊を育てています。

牧場を始める時に、旭川の牧場から羊を譲ってもらったのですが、ある時その牧場主から「後継者がいないから誰か紹介してほしい」と言われました。私たちに継いでほしいと言われたわけではありませんでしたが、夫と話して私たちが旭川の牧場を買うことにしました。私は月に一度、出荷する時期になった羊をトラックで旭川まで引き取りに行っています。

生産が旭川なら、北海道に移住しないの?と思われる方もいると思います。その理由は、流通面で福島が優れているからです。東京に近いので、お客様の送料負担を考えると、北海道の約半分くらいで済みます。そうした事情で、福島と旭川で生産拠点と流通加工拠点を分けることにしました。

結果として、羊の生産能力は大幅にアップしました。牧草がおいしいんでしょうね。肉の品質も良くなり、コストもかなり削減できました。今では、旭川で親羊91頭、子羊は今年どんどん出荷しているので30頭くらいしかいないという状態です。

これからの展望としては、羊肉のおいしさを知ってもらうために、商品開発や情報発信に力を入れたいと思っています。数年前から、羊肉と福島県の産品をセットにした販売にも取り組んでいて、福島県唯一のマッシュルームや県内で採れたアスパラとのセットもあります。

福島12市町村は、一度は人が少なくなった地域ですが、だからこそ今はしがらみも少なく、やる気のある人がとても多い地域です。特に浪江町は私たちのお肉を出しているお店もあります。ぜひ一度、遊びに来てください!

パネルディスカッション

〈佐別当さん〉
パネルディスカッションでは、私がファシリテーターを務めさせていただきます。まず東さんにお聞きします。移住されて1年くらいですが、ご自身の中での変化はありましたか?

〈東さん〉
2つあります。1つ目は通勤時間です。北海道に住んでいた時は、札幌から鵡川まで1時間半かけて通っていましたが、今は会社と同じ浪江町に住んでいるので、通勤時間は5分になりました。自分の時間をゆっくり持てるようになってうれしいです。2つ目は、太ったことです(笑)。浪江町にはおいしい日本酒も食べ物もあって、飲み過ぎ食べ過ぎで少し太ってしまいました。

〈佐別当さん〉
日本酒を飲まれるということですが、お酒に関して浪江町の魅力を教えてください。

〈東さん〉
浪江町には、鈴木酒造店haccobaという二つの酒蔵があります。全然違うタイプですが、どちらもおいしくて飲み過ぎてしまいます。

〈佐別当さん〉
haccobaは、“クラフトサケ”という新しいジャンルの日本酒をつくる若者たちが起業した酒蔵で、ハーブを使ったものなど、女性にも親しみやすいお酒をつくっていますよね。

吉田さんにもお聞きします。ずっと浪江町で育って、震災後さまざまな地域に行ったり、旭川との二拠点居住をしたりするようになって、どのような変化がありましたか?

〈吉田さん〉
私の場合、あちこち行きすぎて、最近は遊牧民なんて言われたりもするんですけど(笑)。いろいろな地域と関わって一番変わったのは、一つの価値観に縛られなくなったことです。価値観が固まり過ぎないというか。それは夫も同じで、旭川に常駐して近隣の方と話すうちに、変わってきたと感じます。

〈佐別当さん〉
東さんは浪江町に移住されてから、仕事やプライベートにおいて心がけていることはありますか?

〈東さん〉
仕事では、福島RDMセンターを多くの人が訪れる場所にしたい、関係人口を10万人にしたいという想いがあります。今はオンラインで打ち合わせをすることもできますが、なるべくお客さんや仕事のパートナーを浪江町に呼んで、来てもらうようにしています。

〈佐別当さん〉
吉田さんは浪江町のビストロに羊肉を卸しているということでしたが、これから移住される方にこんなお店をやってほしいなどありますか?

〈吉田さん〉
実は浪江町は、お店はけっこうあるんです。住民に対して少し多いかなという印象があります。ですので、もっと進化していくためには、特別なことをしなくてもいいから、「なんとなく浪江町が好き」というくらいで住んでほしいです。とにかく住む人がもっと増えると、また街が違った形で進化していくと思うんです。

〈佐別当さん〉
福島12市町村といっても、それぞれで町の特徴が全然違いますよね。先ほどのhaccobaがあるような浪江町や南相馬市は若い起業家が多くて、私も行くと刺激を受けるのですが、吉田さんがいる田村市はどんな街ですか?良さを教えてください。

〈吉田さん〉
まず、人がとても穏やかです。海沿いの街と違って話し方もゆっくりで、皆さん優しく迎えてくれます。圧倒的に暮らしやすいと思います。また、お子さんがいて移住される方が増えていて、そういう方が入りやすいコミュニティも多くあります。例えば、お下がり交換会が年に何回か開かれていたり。お母さん同士も仲良くなりやすい地域だと思います。

〈佐別当さん〉
南相馬市や浪江町は新しい起業家が多くてワクワクする象徴的なエリアですが、静かに暮らすのであれば、田村市がいいかもしれないですね。
それぞれ特徴が違う12市町村のどこが自分に合っているかを見分けるのは、難しいと思うのですが、相性の良いエリアの見つけ方はありますか?

〈吉田さん〉
頭で考えて「この街がいい」と思っても、実際に行ったら隣の街の方が良かったということはあると思うので、とにかく来ていただいて、風に当たってみてください。肌が合うと感じたら、そこが一番いいと思います。条件で選ぶのではなくて、行ってみて「呼ばれている」と感じた場所を選ぶのがいいと思いますね。

〈東さん〉
私は転勤で浪江町に移住しましたが、いきなり行くのはけっこう難しいと思うんですよ。私の場合は福島RDMセンターを建設していたので、その間に何度か出張で行って、雰囲気をなんとなく分かって移住できたのは良かったと思います。検討するための体験ツアーなどもあるので、皆さんも12市町村の複数の場所に行ってみて、体験して、どこが合ってるかを決めるのがいいと思います。

〈佐別当さん〉
最後に、移住を検討されている方に一言アドバイスや注意点などがあればお願いします。

〈吉田さん〉
例えば山あいのエリアなどは、地域によっては少しコツが必要な部分もあります。もしその地域が好きだと思ったら、まず地元のお友達を見つけてください。私が田村市で牧場をできたのも、近くの工務店の社長さんが懇意にしてくれて、よく面倒を見てくれたとのいうのが大きいです。どこの地域にもそういう方はいるので、ぜひ友達をみつけてください。

〈東さん〉
いろいろな制度やツアーもあるので、ぜひ活用して実際に現地を見てください。そこでいいと感じたら本格的に移住のための行動を起こしていただいて、もし合わないと思ったらやめればいいと思います。ぜひ、まずは現地に足を運んでください。

〈佐別当さん〉
福島12市町村には、優しい人、純粋な人、挑戦している人が多いと感じます。人口が少ないので人ともつながりやすいし、支え合いも多い。いい人がいる場所で暮らすと、生活の幸福度は上がりやすいのは間違いないと思うので、興味のある方はまず現地に行ってみていただけたらと思います。

これでパネルディスカッションは終了となります。ありがとうございました!

第2部 座談会・個別相談会・もっと話そう延長戦!

座談会では、参加者たちが福島での暮らしにまつわる気になることをゲストに質問。「雪の量は?」「夏の暑さは?」といった気候のことから、「美術館はありますか?」「おすすめの日本酒は?」といった、移住後に豊かに暮らすための趣味の話題まで、福島12市町村のリアルなところをざっくばらんに話しが盛り上がり、有意義な時間となりました。

セミナー後の特別企画「もっと話そう延長戦!」では、すでに本格的に移住を考えている参加者が、移住相談員に、現地の求人情報や支援制度の細かい部分まで踏み込んで相談する姿も見られました。

加えて、福島12市町村におけるゲストの方々の暮らしぶりや環境をさらに詳しく聞く参加者も。「実際に住んでいる人の口から話が聞けて、とても参考になりました」と話されていました。

今年度、全6回の開催を予定している「未来ワークふくしま移住セミナー」。

2回目となる今回は、北海道と福島12市町村につながりのあるゲストから、それぞれの活動やこれまでのストーリー、福島12市町村の魅力、そして移住に向けた具体的なアドバイスを聞くことができました。

これから開催予定の未来ワークふくしま移住セミナーに関する最新情報は、特設サイトよりご覧ください。皆さまのご参加を心よりお待ちしております!

■2024年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら
https://mirai-work.life/lp/seminar2024/