【移住セミナーレポート】vol.13「地域に根ざし、地域の魅力を伝える生き方」編(東京開催)
当日の様子を動画でもご覧いただけます
ダイジェスト版 (全編動画はこちらからご覧ください)
ふくしま12市町村移住支援センターが主催する「未来ワークふくしま移住セミナー」は、福島12市町村で活躍するゲストとの交流を通し、福島12市町村への移住の魅力を知ることができるセミナーです。2024年7月27日(土)に、東京にて令和6年度初回セミナー「地域に根ざし、地域の魅力を伝える生き方」編を開催しました。
第1部 ゲストによる活動紹介
■沖野 昇平さん(in the Rye株式会社 代表取締役)
「福島県の大谷翔平」と呼ばれている、沖野昇平です(笑)。2023年の10月に東京から大熊町に移住しました。
今日はですね、「おもしろい地域にはおもしろい人が生まれる」ということをお話したいなと思っています。
私の出身は神奈川県相模原市で、東京大学大学院在学中に「イン・ザ・ライ」という教育関連会社を設立しました。公認心理師でもあります。他に日本と海外の子どもたちがオンラインで友だちになり交流する教育プログラム「ミーツ・ザ・ワールド」を開発・提供しており、2023年に大熊町立「学び舎 ゆめの森(以下、ゆめの森)」での事業採択をきっかけに東京から、大熊町に会社を移転し自分も移住しました。
趣味で「福島県大熊町のオールナイトローカル」というラジオ番組の企画運営をしておりまして、半年足らずで出演ゲストが100名を突破しました!「Spotify」のポッドキャストサービスで配信しているので、ぜひ聞いてください。
移住のきっかけは、「ゆめの森」でミーツ・ザ・ワールドを導入していただいたことでした。ミーツ・ザ・ワールドは「世界中の人と1ヵ月に1ヵ国ずつ出会って友だちになる」をコンセプトにしており、現在ゆめの森では、毎月3つの国と地域から子どもたちが好きなゲストを自分で選び、交流することができます。習い事や塾など学校外での学習の場がたくさんある首都圏の子どもたちだけでなく、地方でも世界とつながるきっかけをつくり、子どもたちの挑戦を後押ししたいという考えも、移住を決断した理由の一つです。
移住して始めたことは、「福島県大熊町のオールナイトローカル」というラジオ番組です。移住はしてきたものの、街のことは知らないし友人と呼べる方もいません。だからといって独りで生活するのも寂しい。じゃあ、街のことを教えてもらいながら友だちになってもらおうと思い、思いきってはじめました。最近ではイベントやキッチンカーの案内など、いろいろな方に出ていただいています。
「ローカル」という言葉は「特有」という意味があって、地域にはそれぞれ特性があると思います。かっこよくなりたい人は、かっこいい町に、 美しくなりたい人は美しい町に行くのがいい。大熊町は面白い人になりたい、面白いことをしたいという人には、ぴったりのまちです。興味を持った方がいらっしゃいましたら、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
お越しの際は、ラジオのゲストにお呼びしますので、お声をかけてください!
■磯辺 友美さん (合同会社オートラベス代表社員)
私は埼玉県のさいたま市出身で、趣味はプロレスと音楽とポケモンです。
大学卒業後は児童福祉関連の仕事をしようかと考えつつも、芸能人に会ってみたいという気持ちが勝り、エンタメ関連の会社に就職しました。そこでさまざまなことを経験させていただきながら、その中で現在につながる大きい出会いが2つありました。
まず1つ目が、各自治体で抱える社会課題。もう1つが、まだ世間に知られていない才能に溢れたタレントたちです。そこで私は、面白いのに日の目を見ないたくさんのタレントが社会課題を楽しく解決できるような、そんな事業をやってみたら面白いだろうなと思い、2022年に「合同会社オートラベス」を起業しました。将来的には、教育とエンタメが融合したような新しい学校や子どもたちの居場所を作れるように、今がんばって活動しているところです。
楢葉町に移住したきっかけですが、知人から「試験的に実施できるところがある」と紹介されたのが楢葉町でした。ただ移住となると、埼玉と東京でしか生活したことがない自分にとってすごくハードルが高いことでもあったので、すぐに決断することはできませんでした。でも、いろいろな経験が人間を大きくするのであれば、失敗でも成功でもどちらでもいい、やってみることに意味があるはずだという思いが、背中を後押ししてくれました。
移住する前に心配だったことは、県外から来た人に対して町民から警戒心を持たれるのではないか、特に移住先で起業する人は一線を引かれるのではないかということでした。でも楢葉町の皆さんは、快く迎えてくれて、とても嬉しかったですね。
何か試験的に「こういうことしてみたい」と声を挙げれば、「面白そうだからやってみようよ」と、若輩者の意見でも耳を傾けて協力してくれます。
1度しかない人生。やりたいことをするのか、それともその気持ちを閉じ込めてしまうのかは自分自身。楢葉町は、自分の人生を刺激的なものにできる町。何かにチャレンジしたいと思っている人にはぴったりだと思います。
■遠藤 祥貴さん(Wisteria株式会社 取締役)
千葉県で造園業をしています。経歴は、料理人から造園会社を立ち上げました。保護観察官でもあるので、ちょっと問題を抱えた青少年を雇用しながら、就労支援をしています。他にも福島12市町村の葛尾村にあるヤギの牧場「かつらおファーム」の運営を受託しています。
なぜ造園会社がヤギ牧場の運営を委託されているかと不思議に思うかもしれません。造園をしていると必ず出る造園ゴミ(草刈り後の廃棄する草)ですが、これがかなりの量があり、毎回お金を払って、これらを焼却処分しているんです。
本来、造園業は人と自然の共存なのに、どうしてお金を払ってこんなことをしなきゃいけないのか、何かいい方法はないだろうかと。そこで注目したのがヤギでした。
以前から「都市部で出た造園ごみを飼料に転換できないか」と考えており、葛尾村のヤギ牧場「かつらおファーム」からヤギを購入し、放牧して造園ゴミである雑草を与え飼育し、食肉に加工するまで3年間の実証実験を行い、一定の成果を出すことができました。
皆さん、ヤギは日常的に触れることはないかと思いますが、実は第2次世界大戦が終わる前くらいまで、 各ご家庭に一頭ずついたぐらい、日本人の生活にとても馴染み深い動物で、そのミルクは母乳の代わりにするほど栄養価が高く、牛乳だとお腹の調子が悪くなる人でもヤギのミルクなら大丈夫という方もいます。
チーズは、日本国内でも数社しか製造していない「ブラウンチーズ」の製造を2023年の12月に始めました。
このチーズはノルウェーのブルノストというヤギのミルクで作りますが、チーズを作る過程で出る廃棄されてきた副産物「ホエイ」を煮詰めて作リます。味わいがキャラメルに似ています。納得した味になるまで試行錯誤の連続で、商品化するまで半年のはずが1年かかってしまいました。でもその甲斐あって発売から半年で、日本ギフト大賞の福島賞を受賞し、大手航空会社のオンラインショップや大手百貨店とも契約することができました。一歩ずつですが成果が出てきていることを実感しているところです。
この会場に来ている皆さんは、福島や移住への興味がある方々だと思います。僕の場合、福島と千葉の2拠点生活ですが、福島に行ってからやるべきことが見つかり、取り組みはじめました。移住先には助けてくれる方もたくさんいる反面、少し距離を置かれる方々もいらっしゃいます。人の目を気にせず、移住した時の最初の志や気持ちを忘れなければ、とても素晴らしい生活が待っていると思います。
まずは葛尾村といわず、他の福島12市町村も含めて、一度遊びに来ていただければと思います。
■八巻 久美さん(公益財団法人福島県観光物産交流協会 観光部 ホープツーリズムサポートセンター)
私は、福島県福島市にある福島県観光物産交流協会の観光部に席をおいています。2023年に富岡町にホープツーリズムサポートセンターが開設と同時に転勤となり、現在はホープツーリズムの専用ガイド(フィールドパートナー)の育成事業や、企業研修プログラムの造成事業など、ホープツーリズムの受け入れ体制の充実化や現地情報の収集・案内に従事しています。
勤務地は富岡町ですが、そこより少し南にある広野町に住んでおりまして、「日本一美しい日の出の町」という宣言を出すほど、美しい日の出を見ることができる町です。私は海のないところで生まれ育ったこともあり、太平洋から昇る朝日を見た時は、本当に感激しました。
「ホープツーリズム」とは何かというと、福島県が打ち出している、新しいスタディツアーのことです。福島県は世界で唯一、地震、津波、原子力の災害を経験した、複合災害の土地です。ホープツーリズムは複合災害の学びや教訓などを伝えて、学びからこれからの持続可能な社会や地域づくりを創造するプログラムを推進しています。
われわれの役割の一つとして、観光という産業で地域活性も挙げられます。そのためには、より多くの観光客の方を地域に呼び込むことが必要です。それは、経済的に地域にお金を落とすという一方的なものではなくて、それを受け入れる地域人材の育成や、マイナスからの街づくりに寄与することだと思っています。
私は移住や定住の入口が「観光」や「旅」であってもいいと思っています。震災前、福島12市町村は観光地ではありませんでしたが、未曾有の出来事をきっかけに現在では、近隣地域と連携して「観光」というツールを使って地域再生にチャレンジしています。
私なりに移住に必要なこととはなんだろうと考えた時、4つのことが頭に浮かびました。
それは「他者への敬意と感謝を忘れないこと」、「便利と豊かさの違いを理解しておくこと」、「自分探しに地域を消費しない」、「地域づくりに自分を犠牲にしないこと」です。
皆さんへのアドバイスではありませんが、 何か参考になれば嬉しいです。
パネルディスカッション
ゲスト4名の活動紹介の後に、パネルディスカッションを行いました。
5つのトークテーマについて、ゲストの方々からお話を伺います。
トークテーマ①:「叫びたいほどの地域の魅力」
<沖野さん>
まず、皆さんの思う「叫びたいほどの地域の魅力」について教えてください。
<八巻さん>
広野町の魅力は「日の出」です!
太平洋から昇る朝日は最高です!福島県の沿岸部は入り江や崖が入り込むことなく遮るものがありません。山育ちの私からするととても新鮮な経験です。毎朝カーテンを開けて、日の出をチェックするのが日課になっています。
<沖野さん>
ありがとうございます。
日の出をチェックした後、二度寝なんてしていませんよね?
<八巻さん>
たまにあるかもしれません(笑)
<一同>
笑
<磯辺さん>
楢葉町は「まちがきれい」なことですね。
震災によって大変なことが起きた場所とは思えないほど、いろいろな建物ができたり整備されたり、どんどんきれいになっています。
<沖野さん>
ありがとうございます。
私も移住先がきれいであることは重要なポイントだと思います!
<遠藤さん>
葛尾村の魅力は「養殖や畜産」が盛んなことですね。山の上では国内最大級のバナメイエビの陸上養殖がされていますし、黒毛和牛を育てるやり方で羊を飼育している畜産農家もいます。それを加工した特産品も自慢の一つです。
<沖野さん>
陸上でエビが養殖できるなんて驚きですね!ありがとうございます。
私の住む大熊町の魅力は、「蛾」です!「オナガミズアオ」水色がかったすごくきれいな蛾がいるんです。大熊町は蛾がとても多くて、見つけた蛾をカードゲームにするという趣味を持っているのですが(笑)、毎朝ちがう種類の蛾が飛んできてくれるという、虫が非常に豊かな環境です。虫好きの方には、大熊町はほんとにおススメです。
トークテーマ②:「このなかで誰にも負けていないと思うこと」「自分以外の人の良いなと思ったところ」
<沖野さん>
「このなかで誰にも負けていないと思うこと」「自分以外の人の良いなと思ったところ」はありますか?
<八巻さん>
趣味と仕事の境目がないことは誰にも負けてないと思っています。 私は震災や原子力災害で人生が変わりましたし、それを受け止めてくれた地域が双葉郡や福島12市町村なので、この地域のためにまだまだ動いていきたいという気持ちは誰にも負けていないかなと思います。
<磯辺さん>
負けてないところは「真面目にふざけているところ」です。私も八巻さんに通ずるところがあって、仕事を趣味にしているタイプで、誰にも負けてないと胸を張って言えるかなと。
<沖野さん>
パネリストの皆さん、お話を聞いていて、他の町の「あ、ここいいな」「面白そう」と感じるところはありましたか?
<磯辺さん>
かつらおファームのブラウンチーズを食べてみたいですね。何を作ろうというアイデア出しのところから始まって、商品化されて、知られるようになることは大変なことだと思いますし、すごいなと思います。
<八巻さん>
楢葉町は寛容な町だなと感じますね。私も楢葉町の方々と一緒に仕事させていただいて、本当に明るくて移住してきた人たちも快く迎えてくれるなという印象があります。
トークテーマ③:「こんな人が来てくれたら嬉しいという人物像は?」
<沖野さん>
こんな人が来てくれたら嬉しいという人物像はありますか?
<磯辺さん>
楢葉町だけではないと思いますが、若い女性に来てほしいですね。女性がムーブメントを起こすというか、女性目線で商品開発やイベントが行われていることも、結構あると思います。
<八巻さん>
遠藤さんが先ほどおっしゃっていましたが、初心に立ち帰って物事を考えられる人が必要だと思います。
<沖野さん>
ありがとうございます。
大熊町は研究者タイプの人、「他では評価されないけどこんなことできます」というマニアックな人であればあるほどいいです。マニアックさの活かしどころが見つかる町だと思うので、そういう方々と一緒に盛り上げていきたいです。
トークテーマ④:「移住を検討している人に向けた最初の一歩のアドバイス」
<沖野さん>
移住を検討している人に向けて最初の一歩のアドバイスをお願いします。
<磯辺さん>
「躊躇しないこと」だと思います。躊躇したら心変わりしてしまうかもしれませんし、不安がたくさんあるかと思います。でも結果を考えずに踏み出してほしいです。
<八巻さん>
「朝活」でしょうか。広野町は「日本一美しい日の出の町」と宣言していることもあり、老舗の定食屋が取り組んでいる「朝ごはんプロジェクト」や「朝カフェ」といった、朝に行われるイベントが多くあります。
<遠藤さん>
移住となると、それまでの暮らしと環境が変わるので、ゆっくりと体や心を慣らしていくといいんじゃないかなと思います。例えばまずは週に2日は葛尾村で過ごそうとか、自分を馴染ませていくことがいいのではないでしょうか。
トークテーマ⑤:「自分たちの町のPR」
<沖野さん>
これが最後の質問になりますが、ご自分の町のPRをお願いします。
<八巻さん>
転勤で広野町にきた人間ですが、生活してみてゴミ出しに行く途中とか、商店街のお肉屋さんでコロッケを揚げてもらっている時とか、たくさん話しかけていただいて、受け入れていただいているように感じます。こういう日常的なことは旅ではわかりません。遠藤さんからお話があったように週に何日か通ってみたり、われわれホープツーリズムサポートセンターのツアーなど、ぜひご活用いただければなと思います。
<磯辺さん>
私は埼玉と東京と福島しか知らない人間ですが、楢葉町は移住者にいろいろ挑戦させてくれる、とてもいい環境です。 私が「こんなことやりたい」といえば、「面白そうだね」とか「やってみようよ!」と協力してくれます。実際に移住するまで考えてもいませんでした。
まずは一度、楢葉町に来て、どんなところか見ていただければと思います。皆さんのお越しをお待ちしております。
<遠藤さん>
まずは葛尾村に足を運んで五感で感じてもらうのが一番かと思います。皆さんも子どもの頃に五感で感じた体験を覚えていると思います。葛尾村だけでなく、福島12市町村や他の地域に足を運んで、自分に合ったところを見つけてほしいです。
<沖野さん>
大熊町は日本だけでなく、世界的に見ても一番特殊な町の一つだと思うので、ここでの体験はこの先ほかでも通用する体験になると思います。
ここはよくある田舎ののどかな雰囲気はなく、新しい建設物がどんどん増え、多くのベンチャー企業が引っ越して来るなど「ギラギラ」しているとよく感じます。これが今しか味わえないかもしれない思うと、「移住しようかな、どうしようかな」と迷っている方は、見に来るだけでも面白い町なので、ぜひお越しください!
座談会
座談会では参加者が興味を持ったゲストに、活動紹介では聞けなかったことや移住後の暮らし、仕事など、さまざまな話題で盛り上がり、参加者同士での交流も見受けられ、多くの出会い・つながりが生まれていました。
個別相談会
個別相談会では、各自治体の担当者やふくしま12市町村移住支援センターの職員に移住の際の各種補助制度に関する質問や、自分に合う町がどこかなど相談が寄せられ、一人ひとりに向き合いお答えしました。
令和6年度の最初の未来ワークふくしま移住セミナー、vol.13「地域に根ざし、地域の魅力を伝える生き方」編。
実際に福島12市町村へ移住されたゲストの皆さまから、地域に根ざす暮らしを楽しそうに語られる姿に、福島へのイメージが変わった参加者の方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
未来ワークふくしま移住セミナーの最新情は特設サイトよりご覧ください!
■2024年度未来ワークふくしま移住セミナーの特設サイトはこちら
https://mirai-work.life/lp/seminar2024/