事業紹介

【企業紹介】バクテリアの力を活かした自己治癒コンクリートの実用化に世界で初めて成功

2024年3月18日
浪江町
  • 先端産業
  • ふくしま12職場見学

會澤高圧コンクリート株式会社

従来のコンクリート製造技術と最先端のテクノロジーを掛け合わせ、コンクリートの新しい価値を創造する、會澤高圧コンクリート株式会社(以下、會澤高圧コンクリート)。2023年、新たな研究開発拠点として浪江町に「福島RDMセンター」を開設し、新しいコンクリート技術の開発に取り組んでいる。會澤高圧コンクリート デジタル経営本部 地域連携室の佐藤一彦次長に、福島での取組について話を聞いた。

研究・開発・生産のサイクルを加速化させる拠点

福島RDMセンターの「RDM」は、Research(研究)、Development(開発)、Manufacturing(生産)の頭文字を取ったもの。同じ敷地内に生産棟と研究・開発棟があり、試験製造などの成果や課題を研究開発にすぐにフィードバックできる特徴を持つ。

研究開発棟は、波模様に造形された外観が特徴的。同社が近年注力する、3Dプリンターによるコンクリート構造物の構築技術を活かしたもので、浪江町の風を計測し、布にあてた揺らぎのデータを3Dプリンターに読み込ませて造形している。

ひび割れを自己治癒するコンクリート

コンクリートは戦後日本の経済成長を支え、今もなお各種建造物に欠かせない存在であり続けている。一方、その安全性が保たれるのは長くても60年から70年といわれており、高度経済成長期に造られた高速道路や新幹線の高架橋などは、年数的にはすでに寿命を超えつつある。

そんななか、會澤高圧コンクリートでは、バクテリアの代謝機能を使った自己治癒コンクリート「バジリスク」の実用化・量産化に世界で初めて成功した。「バジリスク」には、細菌の一種であるバクテリアと、バクテリアの活動のエサとなるポリ乳酸が混ぜ込まれている。コンクリートに入ったひび割れから水や酸素が入ってくるとバクテリアが目覚め、分裂を繰り返し、エサとなるポリ乳酸を食べて炭酸カルシウムを排出しひび割れを埋めていく仕組みだ。これにより、60年、70年とされるコンクリートの寿命は100年以上にも延びるという。コンクリートの宿命でもあるひび割れが生じても自己治癒により修復され、耐久性を維持していくことから「長寿命化は脱炭素に貢献できる」を実現する物だ。

バクテリアの活性化によりひび割れを自己治癒するコンクリート

100を超えるパートナーと共に業界の脱炭素化を推進

コンクリート産業は環境負荷が非常に高い産業であり、世界中で排出される二酸化炭素の約8%がコンクリート業界によるものだという。この状況を打開すべく、會澤高圧コンクリートの會澤祥弘代表取締役社長は、国内のコンクリート関連事業者に声をかけ、業界全体で脱炭素を推進する組織「aNET ZERO株式会社」を2023年に設立し、コンクリートの脱炭素化のために結集したコンクリート産業の政策集団「aNET ZERO Initiative」を立ち上げた。

aNET ZERO Initiativeは、2015年に「パリ協定」によって定められた、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と除去量を2050年までに同等にする「ネットゼロ」の目標を先取りし、會澤高圧コンクリートは2035年までにネットゼロを宣言、同様に参加企業もそれぞれ2050年を前倒ししたネットゼロ実現を宣言している。

佐藤一彦デジタル経営本部 地域連携室長

「これからの時代は、建造物を一つ造るのにも、工程の上流から下流まで、すべての部分で環境への配慮が求められます。当社を含めた各企業が持つ新しい技術やノウハウを業界全体で共有し、脱炭素の効果を数値化しながら、ネットゼロの実現に向けた『素材』『記録』『取引』のすべてを包括したコンクリート版の脱炭素経営プラットフォームをaNET ZERO Initiativeは構築しました」

未来は開発できる!!

會澤高圧コンクリートではこのほかにも、ドローン開発会社「アラセ・アイザワ・アエロスパシアル合同会社」を設立し、防災・建設などさまざまなニーズに対応するために500cc・1,000ccのガソリンエンジンを搭載した、ペイロードを高め長時間飛行が可能なドローンの開発、浮体式洋上風力発電施設と新たなエネルギーとして注目されるアンモニア製造プラントを一体化したグリーンアンモニア製造艦「MIKASA」の開発など、従来のコンクリート事業の枠を超えた先端技術の創造に取り組んでいる。

福島RDMセンターの開設は『(えにし(

佐藤氏は、「先端産業を手がける多くの企業や組織が集積する浪江町は、福島イノベーション・コースト構想のもと、福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)や福島ロボットテストフィールド(RTF)が進出し、さらに2023年には福島国際研究教育機構(F-REI(エフレイも開設されました。この地域がいずれ世界に冠たる創造的な復興拠点になることは間違いないでしょう。今後、FH2RやRTF、F-REIとの連携はもちろん、この地に進出した他の先端企業との横の連携も積極的に図りながら、地域発展の一翼を担っていきたい」と語る。

また、「社長の會澤は、福島RDMセンターの開設を『(えにし』であると語っています。まさに福島RDMセンターは福島イノベーション構想や地域の構想を具現化する場所です。未来に向けて志を持ち12市町村に集ったみなさんが、それぞれの新しいインスピレーションを持ち寄り、出会って、形にする。特に若い世代が共創を通じて刺激を受け、知見を深めていただけたらと思います。ここ福島RDMセンターがそんなつながりの場として育ってくれればうれしい」と夢は広がる。

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■會澤高圧コンクリート株式会社
1935年創業。本社は北海道苫小牧市。生コンやプレキャストなど従来のコンクリート事業の傍ら、2000年代初頭からコンクリートマテリアルにさまざまなテクノロジーを取り入れた独自の技術創出を展開。現在、国内に21の事業所、14の工場を持つほか、海外にも6つの拠点を有している。2023年6月、「福島RDMセンター」での事業をスタート。
所在地(福島RDMセンター研究開発棟):〒979-1522 福島県双葉郡浪江町大字請戸字北迫1-3
URL:https://www.aizawa-group.co.jp/

※所属や内容は取材当時のものです。
取材・文:髙橋晃浩