少人数担当制のユニットケアで働きやすい 南相馬市「特別養護老人ホーム梅の香」
高齢化率が35.5%と、全国平均より7ポイント近く高い南相馬市(2020年時点)。社会福祉法人南相馬福祉会は、その南相馬市の4つの拠点で高齢者福祉施設を運営し、高齢者福祉を支えています。
南相馬福祉会では、手厚い教育カリキュラムや福祉機器の導入で、未経験者でも働きやすい環境づくりに取り組んでいます。今回は、南相馬市小高区にある特別養護老人ホーム 梅の香(以下、梅の香)と、そこで働く職員の声をご紹介します。
南相馬市小高区で唯一の高齢者入所施設
南相馬市小高区は、東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所事故により避難指示が出され、全区民が避難しました。梅の香も休止を余儀なくされましたが、避難指示解除の2年後となる2018年にサービスを再開しました。
2022年時点の小高区は、住民約3,800人のうち約半数が65歳以上の高齢者です。梅の香は区内唯一の高齢者が入所できる施設であり、「住み慣れたまちで暮らしたい」という思いをかなえる場所でもあります。
施設の大きな特徴は、利用者10人程度のグループを一つの生活単位として介護サービスを提供する「ユニットケア」であること。ユニットケアでは1人ひとりに個室が用意されるため、利用者はプライベートの空間を持つことができ、より自宅に近い環境でサービスを受けることができます。職員もある程度ユニットごとの担当制になっているため、利用者と個々で向き合え、信頼関係を築きやすい環境です。
自宅に近い環境と感じられる工夫がもう一つ。施設内の6つのユニットには「梅の香一丁目」から「梅の香六丁目」まで名前がつけられており、まるで施設内が一つのまちのようになっています。
施設中央の交流スペースを囲むように配置された居室は、全室が外庭に面しています。中庭もあり、各居室から直接出られるため、安全面を担保しながら外の景色も楽しめる造りになっています。
梅の香で働く介護職員は約25名。そのうち約3分の1は市外・県外からの移住者です。介護分野の人手不足が叫ばれるなか、資格取得のサポートや福祉機器や福祉用具の積極的な導入など、職員の経験やスキル、筋力、体力に左右されずに長く活躍してもらうための環境づくりにも取り組んでいます。
さらに、新たな人材を獲得・育成していくために、ミャンマーから介護の仕事に興味のある特定技能の介護職員を受け入れる取り組みも始めました。日本語のハンディキャップもあるため、法人独自のフォローとして、外部の講師を招いて介護の基礎を学ぶための研修を実施しています。
ユニットケアは未経験でもスキルを身につけやすい
ミャンマー出身のチョウカインウィンアウンさんとソートウさんも、特定技能の介護職員として未経験で介護業界に飛び込んだ職員です。2人が故郷を離れ日本で働くことを選んだきっかけは、ミャンマーなど4ヵ国で特定技能に特化した語学・スキルの教育と日本への人材紹介事業を展開している登録支援機関との出会いでした。
子どもの頃から海外の文化に触れながら働きたいと考えていたというチョウさん。日本で活躍する介護人材が求められていることを新聞で知り、機関の支援を受けて日本語と介護を学んでから来日しました。「14歳の頃から祖父母と同居して、介護をしていた経験があります。日本の介護技術はアジアでもトップレベルと聞き、その高い技術を自分も身につけたいと思い、日本で仕事することを選びました」と語ります。
一方、アニメ『ONE PIECE』をきっかけに日本に興味をもち、日本語を学んでいたソーさん。家族からの後押しに加え、介護の仕事にも興味があったことから来日を決めたといいます。
高齢者施設が少ないミャンマーでは、介護は家族がするもの。2人とも家族の介護の経験はありましたが、仕事としては未経験でした。はじめは、おむつ交換など経験のない仕事に苦戦したり、入浴介助で利用者の体を支えるコツがわからず、自身の腰を痛めてしまったこともあるとチョウさんは言います。
一方で、入職から約1年半で先輩職員とほぼ同じ業務を担当できるほど介護の技術を身につけられたそうです。ご自身の努力はもちろんですが、「私たちに分かりやすいようにやさしい日本語で何度も指導してくれたので、経験を重ねることで少しずつ慣れていくことができました」と、先輩職員の丁寧な指導に感謝の気持ちを述べます。
ソーさんは、短期間で仕事が覚えられた要因について、ユニットケアという施設の特性を挙げます。「担当のユニットに入居する最大10人の利用者さんの介護に集中できることで、確実に技術を身につけられました」
利用者と信頼関係を築けることがやりがい
異国での生活に不安や苦労はつきもの。2人は、ミャンマーと日本の文化の違いに慣れるのが大変だったと口をそろえます。小高区内のアパートに住んでいて、基本的な交通手段は自転車と電車。車が必要な場合には苦労することもあります。しかし、入職当初に体調を崩して車で原町区の病院に行かなければならない時は連れて行ってもらったり、ごみの分別で相談すると家まで来て教えてくれたりなど、施設長・副施設長が日本での暮らしをフォローしてくれているそうです。
一方、小高区内にお店が少ないことは不便に感じているそう。区内にある唯一のスーパーは午後7時には閉まってしまい、夜遅くまで仕事をした後に食料の買い出しができないため、休日には原町区や鹿島区にある大きめのスーパーまで電車で行き、まとめ買いをしているといいます。
最後に、梅の香で働く中で感じる介護の仕事の魅力についてお聞きしました。
ソーさん「この仕事のやりがいは、利用者さんと信頼関係を築けるところですね。ご夫婦で梅の香に入居されている方が私をまるで孫のように思ってくれていて、退勤する時は『気をつけて帰ってね』『また明日も来てね』などといつも声をかけてくれるのがとても嬉しいです。私自身も利用者さんを家族のような大切な存在だと思って、責任を持ち仕事に取り組んでいます」
チョウさん「利用者さんとのやり取りのなかで人の温かみを感じられるところです。人手不足で大変な状況ではありますが、『ありがとう』と利用者さんから言われると自然に笑顔になり、頑張ろうという気持ちになります」
高齢化が進むにつれ、南相馬市も他の地域と同じく介護分野の人材需要はさらに高まっていくことが予想されます。避難により一度は離れた慣れ親しんだ土地で、ふたたび暮らしたいと願う方々の希望を叶える梅の香での仕事。福島12市町村への移住や介護の仕事に興味のある方は、南相馬福祉会や梅の香への就職を考えてみてはいかがでしょうか。
社会福祉法人 南相馬福祉会の求人はこちら。
https://arwrk.net/recruit/minamisomafukushikai
福島12市町村の医療・福祉・教育関連の求人はこちらをご覧ください。
https://mirai-work.life/work/joblist/#industries=medical
■社会福祉法人 南相馬福祉会 特別養護老人ホーム梅の香
所在地:〒979-2102 南相馬市小高区小高字金谷前81番地
TEL:0244-44-1600
FAX:0244-44-1601
URL:http://minamisomafukushikai.or.jp/
※所属や内容は取材当時のものです。最新の求人情報は公式ホームページの採用情報をご確認いただくか、南相馬福祉会に直接お問合せ下さい。
取材・写真:片倉菜々 文:永井章太