ちょうどいい田舎暮らしが味わえる「かわまた暮らし体験住宅」
宿泊施設ではなく現地の住宅で過ごすことで、移住後の生活をイメージできる「お試し住宅」。福島12市町村でも多くの市町村が用意しており、移住を決める前に一度は利用していただきたい支援制度です。
今回は、川俣町が提供している「かわまた暮らし体験住宅」をご紹介します。川俣町は東京から新幹線で約1時間半の福島市から車で約30分のところに位置しており、スーパーマーケットや飲食店などもたくさんあり、里山の自然とまちの利便性を併せ持っています。町ではその特性を生かし、「ちょうどいい田舎暮らし」を合言葉に移住者を受け入れています。
里山の自然も暮らしやすさも感じられる体験移住
川俣町の体験住宅を管理するのは、町の政策推進課・まちづくり推進係。2016年に完成した明るい役場の2階が窓口です。移住定住を担当する柴木信人さんが出迎えてくれました。
柴木さんは隣町・福島市のご出身。原発事故で一部が避難区域になった川俣町の力になりたいと、震災の翌年に町役場に就職したといいます。
「体験住宅までご案内します」と言う柴木さんを追って、車で東に約10分。川俣町から南相馬市をつなぐ県道12号から「花塚山登山口」の立て看板を右へ曲がり、上り坂を進んで行くと到着です。見晴らしのよい高台にあり、聞こえるのは風の音と鳥の鳴き声だけ。それでも車を数分走らせればスーパーにも行ける、「これがちょうどいい田舎暮らしか!」と納得のいくロケーションです。
体験住宅は、2009年築で2022年にリフォームした2階建ての物件です。それでは中に入ってみましょう。
入口には3畳ほどの土間が。「部屋の中は不可ですが、このスペースはペット可にしています」と柴木さん。体験住宅は1回につき最大6泊7日利用できます。ペットを飼っている人でも預け先を気にせず一緒に過ごせるので、安心して町での暮らしを体験できそうです。
1階はリビング、キッチン、バス、トイレが備えられています。吹き抜けの天井が気持ちよい、広々とした空間です。テレビはありませんが、Wi-Fiと冷暖房完備で快適に過ごせます。
キッチンもきれいな3口コンロ。食器や調理器具もそろっています。車で約5分のスーパーマーケット「ファンズ川俣店」、車で約10分のスーパーマーケット「リオンドール川俣店」、JAの農産物直売所「ここら川俣店」などで地元の食材を購入し調理してみるのもおすすめ。一人当たり1,500円から地元食材で料理を提供してもらえる制度もあります。(詳細は予約時に要確認)
リフォームした浴室はピカピカです。
2階には和室が2部屋あり、布団も用意されています。体験住宅の周辺に大きな道路はなく、夜は日中以上に静かな環境。星空も満喫できます。
住宅の裏手には、公園などでよく見かける東屋が。ここから眺める吾妻連峰は絶景!天気のいい日はここで食事をしたり、お茶を飲んだりするのもよさそうです。
利用料金は1泊当たり2,350円で、6人まで利用することができます。
回数制限なく利用が可能
2022年11月から2023年4月までの利用者は6世帯8人。就職先や空き家探しに活用される人が多いそうです。
川俣町の体験住宅の特徴の一つは、移住を検討する目的であれば利用回数の制限がないこと。「地域の方と交流を深めたり、住まいや仕事を探したりと、町のことを知ってもらうためにどんどんご活用いただきたいです。利用中に会ってみたい町の人や先輩移住者がいれば、ご相談ください」と柴木さん。
川俣町では2022年度に、1泊2日の移住体験ツアーを開催。お試し住宅は、その宿泊場所としても活用されていました。行程が決められた団体ツアーではなく、個人の希望に合わせて世帯単位で行うオーダーメイドのツアーで、川俣町移住・定住相談支援センターの相談員が、生活環境や就職先の見学、まちの人との交流など、参加者の希望に合わせたルートで案内しました。7世帯が参加し、そのうち何人かは町内での就職や地域おこし協力隊の就任が決定。移住に結び付きました。
※移住体験ツアーは2023年度も開催予定
まちのことを知ること、つながりをつくることの手段として、柴木さんがおすすめしてくれたのが体験農園です。1区画50㎡の農地を月5,000円で借りて、定期的に農業を体験するというもの。管理するのは「復興の花」として震災後から生産される名産品であるアンスリウムなどの生産を手掛ける地元の農業法人smile farmで、スタッフから指導を受けながら、大根やレタスなどの作物を作ることができます。
「移住をお考えなのであれば、体験農園に通うために体験住宅をご利用いただくのもOKです。地域との交流を深めつつ移住をご検討いただくには、よい手段だと思います」
チャレンジする人を応援してくれる町
柴木さんに川俣町での暮らしのよさをたずねると、こんな答えが返ってきました。
「この町はさまざまな取り組みにチャレンジをする方が多く、新しいことを始めやすい場所です。やりたいことがあれば、町だけではなく住民の方からも応援やサポートがいただける町だと思います。」
この理由について、柴木さんはこう分析しています。
「NHKの朝ドラ『エール』のモデルになった作曲家の古関裕而さんは、川俣町にあった川俣銀行で働きながら作った曲が世界的なコンクールで認められて作曲家として名をはせていった方です。ここ川俣町でのチャレンジにみんなでエールを送ったことで、成功につながったものだと考えています。
僕自身も、市町村対抗ソフトボールで川俣町代表チームの一員で、大会の期間になると応援の声をたくさんかけてもらえます。毎年、相馬市の球場で試合があり、試合のたびに大勢の町民の方が応援に駆けつけてくれて、エールをいただけるのは大変うれしいですね。本当に温かい方が多い町だと感じます。」
2人の子どもを育てるお父さんでもある柴木さん。子育て環境はいかがでしょうか。
「阿武隈山系の豊かな里山と清流に囲まれながらも、まちの便利さもあわせ持っているのが、ここ川俣町です。本当に便利な暮らしを求めるのであれば、都会で暮らすほうがいいのかもしれません。でも、私としては、子どもには都会ではできないような体験をさせたいんです。近くの里山に登ってみたり、草木など自然に触れてみたりすることで、いろんなことに興味を持ち、考える力が養われる。そうすれば、自立した時にどこにいても自分で考え、解決できる人に育つのではないでしょうか。ちょうどいい田舎暮らしができるまちだからこそ、よりよい子育てができる環境が整っていると思います。」
まちの便利さと里山の自然が共存する川俣町。ここでの生活に興味があるという人は、ぜひ体験住宅を利用してみてはいかがでしょうか。
かわまた暮らし体験住宅の詳しい情報はこちらをご覧ください。
https://www.town.kawamata.lg.jp/site/kurashi-tetsuzuki/nichiikikyojutaikenshisetsu.html
■川俣町政策推進課まちづくり推進係
住所:〒960-1492 川俣町字五百田30
TEL:024-566-2111
E-Mail:seisaku@town.kawamata.lg.jp
受付時間:8:30~17:15(土、日、祝日を除く)
※所属や内容は取材当時のものです。
文・写真:五十嵐秋音