【イベントレポート】ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー in 葛尾村
福島12市町村では、毎月さまざまなテーマで移住体験ツアーを開催しています。
今回は、2022年12月17~18日に葛尾村で開催された「ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー『臼と杵で餅をつき、鏡餅をつくろう!』」の様子をご紹介します!
ふくしま12市町村移住サポーターとは?
福島12市町村で活動する、地域の団体やキーパーソンを「ふくしま12市町村移住サポーター(以下、移住サポーター)」として登録する制度で、移住促進に関連する活動を担う地域のプレイヤーを増やしていくことを目指しています。
移住サポーターは、日々の地域に根ざした活動の中で地域の魅力を最も良く知っています。その移住サポーターの活動に一緒に参加することで、地域に住む方々との交流や農業等の産業体験を通じて、新しい暮らしのイメージを掴むお手伝いをするのが「ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー」です。
移住サポーターにはツアー運営にかかる活動費用を、そしてツアー参加者には旅費の補助を福島県が行っています。
■ふくしま12市町村移住サポーターの皆さん
https://kibounochi.info/supporter_list/
\このツアーの案内人!/
今回、ツアーを案内してくだったのは「一般社団法人葛力創造舎」の代表理事を務める下枝浩徳さんです。下枝さんは、葛尾村の風土や文化を生かしたイベントの企画や商品開発、人材育成など、多岐にわたる地域活性化事業を展開されています。
■一般社団法人葛力創造舎
http://katsuryoku-s.com/
■葛力創造舎の紹介記事
https://mirai-work.life/magazine/3819/
■下枝さんのインタビュー記事
https://mirai-work.life/magazine/1607/
自然とともにある、のどかな山村
福島県浜通り(太平洋沿岸地域)の中ほどの中山間地に位置する葛尾村は、阿武隈高地の豊かな自然に抱かれた、緑豊かな山村です。標高約450mの高地にあるため、夏は涼しく、晩秋の11月中旬には最低気温が氷点下に達します。
東京駅から葛尾村までは、東北新幹線と在来線を乗り継ぎ、JR磐越東線「船引駅」からバスで50分ほど。なだらかな山道を抜けた先に、人口470人ほどの、のどかな山村が広がっています。
1日目
餅つき・鏡餅づくり
葛尾村に着いた一行は、村の中心部から車で2分程の場所にある、葛力創造舎が運営するゲストハウス「ZICCA」へ。今回のツアーのメインイベントである、お餅づくりに挑戦します!
下枝さん「葛尾村では、どの家庭も一年の締めくくりにお餅を作ります。みんなで一緒に作っていると年の瀬をしみじみと感じられるんです。
餅つきというと、杵を振り下ろす姿を思い浮かべる方も多いと思いますが、おいしいお餅作りには、炊き上がったお米をじっくりとこねる作業が欠かせません。杵の付け根をしっかりと持ち、グッと体重をかけてお米の芯をつぶしていきましょう!」
これが思いのほか重労働!2人1組で臼の縁を回りながら作業をしていくのですが、10周もすると、もうヘトヘトです。参加者は「見ていると簡単そうでしたが、体験してビックリ!腕がジンジンしびれました」と驚きの表情。
下枝さん「お米が熱いうちにこね終えたら、おいしいお餅はもうできたようなもの。あとはみんなでついていきましょう!」
ここからはみんなで代わる代わるお餅つき。下枝さんの奏でる音頭に合わせ、自然と手拍子が巻き起こります。
ふっくらやわらかいお餅ができあがったら、いよいよ鏡餅づくりへ!
「『来年も健やかに過ごせますように』という気持ちを包み込むように、外から内へと巻いて丸めていきましょう!」下枝さんのアドバイスを受け、参加者は一心に形を作っていき、きれいな鏡餅が次々にできあがりました。
ツアー参加者がみんなで輪になってお餅を丸める様子は、まるで葛尾村で暮らす家族の団らんを見ているようでした。
参加者からは「最初はできるか不安でしたが、下枝さんのアドバイスが的確で上手にできあがりました」「お餅がとてもやわらかく、きれいな鏡餅ができました!」と、次々と感激の言葉があがります。
ひと仕事終えた頃、地域の方が作ってくださったお雑煮もできあがりました。つきたてのお餅と一緒にいただきます。
地域交流会
お餅を堪能した後はちょっとひと息。
お部屋でくつろいだり、近隣にある宿泊交流館「せせらぎ荘」で入浴したりと、それぞれゆったりとしたひと時を過ごしました。
旅の疲れもすっかり取れた頃、交流会のスタートです!
当初は屋外でたき火を囲んでバーベキューを行う予定でしたが、この日は、この時期の葛尾村では珍しく雪模様。予定を変更し、室内で温かい鍋を囲むことになりました。
下枝さんからご提供いただいた日本酒は、その名も「でれすけ」。葛尾村で造られたお米を100%使い、隣町の浪江町で醸造されているという、地域愛にあふれた逸品です。
お酒の力も手伝って、一同は打ち解けた雰囲気に。話題は下枝さんの地域活動の話へと移ります。
下枝さん「縁のない土地でも、実家のようにくつろげるような場所があってもいいのではないか。そのような思いからゲストハウスを立ち上げ、『ZICCA』と名付けました。村に何のゆかりもない人がいきなり訪ねてきても、つながりをもつことは難しいかもしれませんが、私たちが間に入ることで、人と人との交流を通して村のあたたかい風土に触れていただきたい、村の魅力をもっと多くの方に知ってほしい。その一心で日々活動しています」
下枝さん「自分は進学と就職を機に一度この村を離れました。都会の生活はとても楽しいものでしたが、ふとこの楽しさをイチから自分で作りたいという思いに強く駆られて、いてもたってもいられず葛尾村に戻ってきました。少子高齢化が進む村の課題は多いのですが、人口約470人という小さなコミュニティがプラスに作用することもあります。住民同士手を取り合って、今後も村を盛り上げていきたいです!」
「命をかけて取り組んでいる」
そう語る下枝さんの熱いまなざしに、深い感銘を受けました。
星空観測
この後は星空観測といきたいところでしたが、あいにくこの日の天候は曇り。厚い雲に覆われていて、残念ながら満天の星空を見る事はかないませんでした。そこで下枝さんから葛尾村の星空についてのお話をうかがいました。
「葛尾村は、空気が澄んでいて周囲に高い建物がないので、星のきらめきを余す事なく堪能できます。丘の上に寝転ぶと、視界一面に星空が広がり、まるで空から星々が降り注いでくるような不思議な感覚に包まれるほどです。風が木々を揺らす音、流れる水の音などを聞いていると、だんだん感覚が研ぎ澄まされていくのがよく分かります」
下枝さんに見せていただいた写真の素晴らしさは、まさに言葉になりません。
「年間を通じてとてもよく見えます。なかでも私のおすすめは、冬の新月の日の未明から明け方に見られる満天の星空です」
ゲストハウス ZICCA
この日、ツアー参加者は「ZICCA」に宿泊。1泊2食つき(7,500円)、素泊まり(5,000円)の2つの宿泊プランがあり、個人でもグループでも利用することができます。地産食材をふんだんに使った食事を楽しむことができ、ここを訪れるだけで葛尾村の暮らしを存分に満喫できるゲストハウスです。
2日目
朝食(郷土料理)
緑豊かな山々に囲まれた葛尾村の朝は、とても静か。凛と澄んだ空気が心地よく感じられます。
起床後に周辺散策にでかけた参加者は「稜線から朝日が昇る、すばらしい景色を見ることができました!」と村の風景に感動した様子。また「夜中、不意に目が覚めてふと外に出てみたら、ものすごい星空でした!」と思わぬ幸運に恵まれた方も。
朝食は、おにぎりや焼き魚、地元で採れた野菜や煮物など“地のもの”を堪能しました。
じゃがいもを皮のまま味噌と砂糖で甘く炒め煮した「みそかんぷら」は、葛尾村を代表する郷土料理です。「出荷に向かない小さなじゃがいもを家庭で味わう、地域のアイデア料理です」という下枝さんのお話に一同感心。
食後は湧き水でいれたコーヒーでゆったりとしたひと時を過ごします。
朝の柔らかい光に包まれて、どこまでも話が弾みました。
仕事体験
おなかが膨れたら、ひと仕事。
まずは葛力創造舎が管理している畑で、ネギの収穫作業です。参加者は「スポッと抜けて驚きました。面白くて癖になります!」と、次々に収穫していきます。
「ZICCA」の大家さんである佐藤智恵子さんは「ネギを途中で反対に植え替える手法で『曲がりネギ』を作っています。こうすることで甘みが増して口当たりもやわらかくなるんですよ」と話していました。
ネギのほかに白菜と大根もいただき、両手に抱え切れないほどの大収穫です。下枝さんからは、純米吟醸酒「でれすけ」もいただき、箱いっぱいのお土産ができあがりました。
続いて「葛尾村復興交流館あぜりあ」で販売するお米のラベル貼りをお手伝い。ラベルにハンコを押し、パッケージに貼り付けて、箱に詰めていくのが一連の流れです。
手を動かしながら旅の思い出を語っていると「ZICCA」のコンセプトそのままに、まるで実家でくつろいでいるかのような、のどかなひと時が流れます。
力自慢の面々は、まき割りに挑戦!
チェーンソーで廃材を裁断し、さらに斧で細かくカットしていきます。作業工程を聞くと難しそうに感じましたが、実際に体験してみると餅つきの動作と似ていて、コツをつかみやすいと感じました。参加者は「力を入れるタイミングを教えていただいて、スーッと体重を乗せたらきれいに割れました」とうれしそう。
夢中でまきを割っているとチラチラと雪が舞ってきました。「せっかくなので焚き火をしましょう!」という下枝さんの提案に、全員、大賛成。早速準備に取り掛かります。
昼食会
ほどよく身体が温まったころでお昼を迎えました。
昼食は地元の山菜を使った炊き込みご飯です。炊きあがったご飯の甘く優しい香りは、今回のツアーで触れた葛尾村の空気そのもの。地元のお母さんたちと参加者が一緒に作った、唯一無二の味わいでした。
そろそろ別れの時がやってきました。参加者は一人一人、素直な気持ちを下枝さんに伝えます。
「葛尾村に来たのは初めてでしたが、実家でくつろいでいるかのような、とてもよい時間を過ごせました」「下枝さんの真摯な取り組みに心を打たれました。魂を込めて仕事をする大切さを学びました」と感謝の言葉が絶えません。
「今度は桜の季節に来たいです!」と話す参加者に、下枝さんからは「葛尾村にはまだまだいい所がたくさんあります。葛力創造舎では、馬と触れ合う『ホースセラピー』にも力を入れていますので、ぜひ馬にも乗りに来てください!」というお話も。
再訪を誓い、参加者は、うっすらと積もる雪に足跡を残し帰路へとつきました。
ツアーに参加して
今回のツアーで葛尾村の風土に触れ、下枝さんの目指す「楽しみながら地域とつながる取り組み」を全身で体感することができました。
新しい地域と出会う喜び、風土を知る楽しさを体験できる、ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー。2022年度の参加申込は2023年1月25日をもって終了しましたが、2023年度の実施予定については4月以降に発表予定です。
気になる地域のツアーに、ぜひご参加ください。
■ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー
https://kibounochi.info/
取材・文・撮影:渡辺 慎一郎