「あなたのことを想っているよ」を伝えたい。葛尾村の移住相談窓口「こんにちは かつらお」

福島12市町村への移住を検討している方にぜひ活用してほしいのが、各市町村に設置された移住相談窓口です。地域のことも移住のこともよく知るスタッフが、移住を全力でサポートしてくれます。
葛尾村への移住の不安に寄り添い、あらゆる困りごとに対応してくれるのが、葛尾村移住・定住支援センター「こんにちは かつらお」(以下、「こんにちは かつらお」)です。今回は、移住支援員の原伸一朗さんに事業内容やこれからの展望について伺いました。
移住体験プログラムから生活のイメージづくりをサポート

「こんにちは かつらお」は、移住前の相談から移住後の生活サポートまでをワンストップで伴走する機関です。
主な業務は、移住希望者の相談対応、移住後の困りごとのサポート、お試し移住体験プログラムの実施、空き家バンクなどの住まいの相談です。窓口だけでなく、電話やメールでも相談を受け付けています。
近年、相談者のニーズは多岐にわたっていると原さんは感じています。
「定年後のセカンドライフを楽しむために移住先を探す方や、リモート勤務のため好きな環境で暮らしたい方など、相談者のニーズは幅広いです。移住相談件数も年々多くなっています。2025年4月から5月初旬にかけては12件の相談を受け、そのうち3件が移住に向けた具体的な相談段階に進みました」
移住への関心を持つ方が、移住への想いをより育てるにはどうしたらいいのか。その際にぜひ活用してほしいのが、移住体験プログラムだそうです。
「2025年度は移住体験プログラムを年3回予定しています。プログラムのメインターゲットは子育て世帯です。そのため内容は、季節の暮らしが感じられること、地元の方と交流できること、そして何よりも子どもが楽しめることを重視してつくっています」
2025年5月に開催された移住体験プログラムでは、1泊2日で村内の企業見学やそば打ち、柏餅づくりなどを行いました。できたての温かい柏餅を食べた参加者からは、「おいしい!」と感動の声が上がったそうです。移住体験プログラムに参加した子どもの喜ぶ顔が、大人の参加者たちの喜びになり、葛尾村の楽しさがじんわり広がる。そんなやさしい体験を、これからもプログラムを通して広めていきたいと話します。

「あなたのことを想っているよ」もらった善意を次の移住者へ

「こんにちは かつらお」のサポートが広がり、村への移住者は年々増えているそうです。実際にどのような方が移住し、村内で生活をしているのでしょうか。事例を伺いました。
「例えば、畑つきの住宅を購入し、のんびりセカンドライフを楽しんでいる方もいます。その方は定年後に田舎暮らしをすることが夢だったそうで、葛尾村で夢を叶えられたことに満足されています。他にも、テレワークでIT企業に勤めながら、村での生活を楽しんでいる若い方もいます。学生時代にボランティア活動で村と関わり、社会人になってから移住してくれた事例です」
長い期間にわたって関わり続けたくなる葛尾村の魅力とは。原さんの目から見たポイントを伺いました。
「一つは、豊かな自然です。都会で自然は『レジャー』ですが、葛尾村では『日常』であり、常にそばにあるものです。朝は日の光や鳥たちの鳴き声で目覚め、暗くなったら眠る。そのような自然のリズムで生活ができます。そして何といっても、村の方とのご縁がかけがえのない宝物になります。お互いの名前を知らなくても、温かい交流ができる村です」

センター名の「こんにちは かつらお」は、人々が気軽に挨拶を交わす葛尾村の日常の姿をモチーフとして名付けられました。道ですれ違うとき、車で通りかかるとき、村の方はとても気さくにコミュニケーションをとってくれるそうです。
このように教えてくれた原さん自身も、実は子育て世帯の移住者。自身の移住時に「こんにちは かつらお」から心強いサポートを受けた経験が、今の仕事の心持ちにつながっているそうです。
「『こんにちは かつらお』があること自体を村の魅力の一つにしていきたいですね。葛尾村の方とのコミュニケーションからは、『あなたのことを想っているよ』という気持ちが伝わります。この葛尾村からのメッセージを、移住者へ伝えるのが私たちの仕事です。移住の情報を正直に伝えることも、移住体験プログラムなどを提案することも、地域と移住者との間に入って関係性構築をサポートすることも、すべては『あなたのことを想っているから』こそやっていると伝えたいです」
私自身がもらえてうれしかった「地域からのおせっかい」を、次の移住者へ連鎖させていくことを目指しています、と原さんは話しました。相談者にとことん親身に寄り添う「こんにちは かつらお」のスタイルの背景には、スタッフが地域からもらった思いやりを地域に還元しようとする、やさしさのサイクルがあるのかもしれません。
「家族のように暮らせる」子育て世帯にとっての魅力を広めたい

「こんにちは かつらお」のこれからの目標は、子育て世帯の移住者を増やすことだと言います。子育て世帯にとっての、葛尾村の魅力を伺いました。
「葛尾村は、コンパクトな村だからこそ現代の核家族の子育て問題をケアできる可能性を秘めている場所です。村には、おじいちゃんおばあちゃんと孫のように、まるで家族や親戚のような距離感で過ごせる人々が多くいます。核家族として子育てをしている方には、村の人間関係は心強く感じるのではないでしょうか。また、村では年齢の違う子ども同士の関係性も濃くなります。放課後に、幼稚園・小学校・中学生に通う子どもたちが一堂に会して遊ぶ姿は、まるできょうだいのようです」
このような子育ての魅力を秘めた村であるからこそ、現在はより子育てしやすい環境づくりを進める必要があると感じているそうです。
「今後は村と連携して、子育て世代にさらに受け入れられやすい生活環境づくりにチャレンジしていきたいです。保育園など、3歳未満児の保育を一手に担ってくれる施設があれば、村はより子育てにやさしい村になるでしょう。移住者を受け入れる住宅の確保など、まだまだ取り組むべき点は多くあります。相談現場で気づいた移住者目線のニーズを拾い上げ、村へ提案することも、私たちの役目だと思います」
最後に、移住者へ伝えたいメッセージを伺いました。
「移住は決して簡単なことではありません。田舎の人付き合いは、濃い分、密なケアが必要です。消防団などの地域活動への参加を求められることもあるでしょう。買い物施設が少なく、自然条件が厳しいため、生活には工夫が必要です。これらの覚悟が必要な面も、村の魅力と同じくらい正直に伝えます。それでも移住したいと思ってもらえたのなら、暮らしを全力でサポートします」
移住は、人生を変える大きなチャレンジです。だからこそ、葛尾村を選んでくれた人に幸せになってもらいたい。それが、葛尾村と「こんにちは かつらお」の願いだと、原さんは話しました。葛尾村への移住に興味を感じたなら、あなたのことを想っている「こんにちは かつらお」へ、ぜひ相談してみてください。
■葛尾村移住・定住支援センター「こんにちは かつらお」
所在地:〒979-1602 福島県双葉郡葛尾村大字落合字落合20-1
TEL:0240-23-7727
E-mail:ijyu@konnichiwa-katsurao.jp
受付:9:00~17:00(年末年始は除く毎日対応)
相談方法:電話、メール、LINE公式アカウント、オンライン、対面でのご相談を受け付けています。
HP:https://konnichiwa-katsurao.jp/
※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各市町村のホームページをご確認いただくか、移住相談窓口にお問い合わせください。
文:橋本華加 撮影:古関マナミ