生活・その他

【コラム】フランスから日本に移住。福島でキイチゴ農家になる夢をかなえたい!

2023年1月30日
大熊町
  • 農林漁業

これまで 「未来ワークふくしま」では、福島12市町村で活躍する移住者のインタビュー記事を中心に掲載し、福島12市町村で暮らし、働く魅力をお伝えしてまいりました。

今回は、移住者が自らの言葉で綴ったコラム記事を通し、それぞれの視点から見た福島12市町村の新たな魅力と可能性をお届けします。


エミリー
フランス出身のイラストレーター。東京などで語学講師として活動し、2022年2月に福島県いわき市に移住。赤べこや起き上がり小法師、双葉だるまなど、福島をモチーフにしたイラストやオリジナルグッズ制作などを通して、福島の魅力を発信中!
▶オンラインショップ「メリエマリス

こんにちは!
エミリーと申します。

パリの近くで生まれ、フランス北西部にあるブルターニュで育ったフランス人です!
SNSを通して日本人の友達ができたことがきっかけで2008年から毎年来日するようになり、2011年4月に日本に移住しました。

日本に来てからは東京や横浜でフランス語と英語を教えていたのですが、当時の生徒さんの一人が福島市出身だったことから福島県に興味を持ち、2018年に初めて現地を訪ねました。

その時は会津地方を中心に巡り、観光名所の渓谷「塔のへつり」や茅葺屋根の古民家が並ぶ「大内宿」、会津若松市内、そして、磐梯山の北側の裏磐梯にある「五色沼」などに行ったのですが、その旅を通して私は会津に完全に心を奪われてしまいました。

日本各地を旅しましたが、会津の風景は特に美しく、今でも訪れるたびにワクワクしますし幸せな気持ちになります。地元の人もとても優しく、外国人の私にも気軽に話しかけてくれました。私はベジタリアンなので、新鮮でおいしい野菜料理をたくさん食べられたことも、会津を好きになった理由のひとつです。

横浜に帰ってからも「福島のことをもっと知りたい!福島に住みたい!」という思いが頭から離れず、フランス人にもっと福島の素晴らしさを知ってもらうために、SNSなどを通し、フランス語で福島に関する情報発信をし始めました。でも、言葉だけでは伝えきれないこともたくさんあるので、福島への想いを込めて「赤べこ」のオリジナルイラストを描き始めたのです。

この時は、まさかそこから私の人生が大きく変わるとは思いもしませんでした!

心を奪われた、会津の雪景色

2020年に「福島民友新聞」が、私が描いた赤べこのイラストに関する記事を掲載してくださり、その記事を読んだ会津出身の方の紹介で、会津にある老舗商店「竹藤(たけとう)」と赤べこのコラボレーションイラストを描くことになったのです!「竹藤」が古くから竹細工を扱ってきたことから、竹を運んでいる赤べこのイラストを描いたのですが、そこから少しずつ赤べこのイラスト制作依頼が増えていきました。

地域の方々との交流を深める中で、福島に中長期間滞在しながら現地の暮らしを体験する「来てふくしま体験住宅提供事業」というプログラムがあることを知り、2021年に会津若松市に1カ月間、お試し滞在をしてみることにしました。

実際に暮らしてみて、毎日、絵本の中から出てきたかのような美しい景色を見ることができる、会津の四季折々の素晴らしさを実感しました。また、野生のカモシカを見たのも、雪かたし(雪かき)をしたのも初めてでしたし、さまざまな新しい経験ができました。現地に新しい友達ができ、会津に住んでいる外国人と地元の人をつなぐNPO法人の仕事も見つかったので、会津を離れたくなくなり、滞在期間が2カ月、3カ月と延びていき、結局、1年間会津に住んでいました!

浪江町の「請戸川リバーライン」

浜通りを初めて訪ねたのは、2021年の春のことです。

会津に滞在する前に、福島県の観光名所や特産品などをイラストでまとめた「福島マップ」を制作したのですが、その時に双葉町の特産品の「双葉だるま」と「前田の大スギ」のことを知り、どうしても自分の目で見たいと思い、現地に行ってみることにしたのです。

浪江町、双葉町、富岡町を巡り、双葉町の「前田の大スギ」も、桜の名所として有名な浪江町の「請戸川(うけどがわ)リバーライン」や、富岡町の夜の森地区でのお花見も楽しみました。その旅でインスピレーションを得て、会津に帰ったあとに、立派な大杉の近くの風景を描いたり、双葉だるまに足と手を付けた「双葉だるまちゃん」というキャラクターが生まれたりもしました。

双葉だるまちゃん

そして自然豊かな双葉町を巡ったことがきっかけで、幼い頃に種から野菜や花、サボテンなどを育てていた記憶がよみがえり、私の心の中に「いつか農業をしてみたい!」という新しい夢が芽生えたのです!

「双葉町で、私が一番好きなくだものの『キイチゴ』を育てたい!」と思い立ち、新規就農するためのプランを練り、2022年に、双葉町から車で1時間ほどの距離にあるいわき市に引っ越しました。農業を始めるため、双葉町役場でプレゼンテーションを行うなどさまざまな努力をしたのですが、その時はタイミングが合わずなかなか農地が見つかりませんでした。

そんな時に、知り合いから「双葉町ではなく、周辺の他の町で挑戦してみたら?」と言われ、私はためらうことなく「大熊町がいい!」と返事をしました。大熊町の山の景色が大好きだからです。雨の日は山々に霧雲が何層にも重なって見えますし、季節や時間によって山の色が少しずつ移り変わるので、大熊町の景色は何度見ても飽きることはありません。特に印象的だったのは、日本海側で大雪が降った次の日に大熊町に行った時に見た風景です。楢葉町の国道6号沿い西側にある山々はまだ秋の色をしているのに、大熊町に入ると、遠くに見える山は雪がかっていて白く、ため息がでるほど美しかったです。

大熊町でお世話になった方との記念写真

何度も現地を訪ね、地域の方々と交流するなかで、一人一人の心の温かさを感じました。大熊町では、いきなりフランス人が訪ねて来て「ここで農業をやりたい!」と言っても、変な目で見られたことは一度もありません。「あぁ、変わり者だなぁ〜」と思った人がいるかもしれませんが(笑)、みんな快く協力してくださったことがとてもうれしかったです。

一緒にご飯を食べたり、草刈りをしたり、あちこち巡ったり、いわき市で開催される「いわきおどり」にチーム大熊として参加したり……楽しい思い出がいっぱい、いっぱいできました。

そして、2023年の2月に大熊町に移住することを決めました。福島県に来てから、会津若松市、いわき市……と毎年引っ越しをしてきましたが、今回はもう大熊町から動きません!大熊町でイチから頑張って最高のキイチゴを作って、毎日美しい山々を見て、感謝の気持ちを忘れずに暮らしていきたいと思っています。

私は、震災前の福島県についても福島12市町村についても詳しくは知りません。でも、大きな希望を持って未来を創っている福島のみなさんから多くの学びと刺激をいただき、新しい夢をかなえるためのパワーをいただいています。

これから学ばなければならないことも多いと思いますが、今、目の前にある物事をしっかりと見つめ、頑張っている人の背中を見て、大熊町で一歩ずつ歩んでいきたいです。

エミリー