【移住フェアレポート】福島くらし&しごとフェア2022
「ふくしま12市町村移住支援センター」では、首都圏で開催される移住フェアに個別相談ブースを出展し、移住希望者からのご相談に直接お応えしています。
今回は、2022年11月27日(日)に、東京・有楽町で開催された「福島くらし&しごとフェア2022」の様子をレポートします!
福島くらし&しごとフェアとは?
県内の63の自治体・団体が参加した、福島県最大の移住フェアです。会場内には各市町村による移住相談ブースや、起業、農業、福祉等の支援団体による仕事相談ブース、移住経験者に直接質問できる交流スペースなどが設けられ、福島の移住に関する情報をまとめて得られる場になっていました。
各出展ブースの事前予約・相談状況を知らせるボードには「予約済み」を示すシールが次々と貼られ、それを見た来場者が急いで予約を入れる姿も。複数ブースを訪ねる方も多く、移住に向けた情報収集の場としてフェアを活用している様子がうかがえました。
福島12市町村で暮らし、働く魅力
フェアには、ふくしま12市町村移住支援センター(以下、「センター」)も個別相談ブースを出展。この日ブースを出展した、田村市、南相馬市、川俣町、広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、浪江町、葛尾村、飯舘村とともに、福島12市町村で暮らし、働く魅力をPRしながら、移住希望者からの相談に直接応えました。
相談対応にあたった、センターの移住支援部市町村支援課の小口喜久さんにお話を伺いました。
―センターブースは、福島12市町村の総合案内所としての役割を担っているそうですが、訪問するとどのような相談ができますか?
相談者一人一人の希望に合う市町村をご紹介できます。
一口に「被災12市町村」と言っても、例えば広野町は震災と原発事故による被害が少なく、福島12市町村の中でも比較的早く避難指示が解除されたため、生活インフラも整っていますし、就職先も豊富です。同じ市町村内でも、避難指示が出された地区とそうでないエリアが混在しているところもありますし、全町・全村避難を経験した地域では避難指示が段階的に解除されたため、地区によって復興状況が異なるケースも見られます。
ブースにお越しいただき、移住後にどんな仕事がしたいのか、どんな暮らしを叶えたいのかを伝えていただければ、それぞれの地域事情を踏まえ、おすすめの市町村ブースにご案内します。
―どのような方からどのような相談がありましたか?
30代前半から70代まで、さまざまな方が来られました。
ご年配の方で「この歳で移住しても何もできないですよね……」と話す相談者もいらっしゃったのですが、その方に対しては「希望をなくさないでほしい」という話をしました。これまで培って来られた知識や経験は、復興を進めていくために必要ですし、よいまちづくりにはバランスの取れた年齢層からの意見が必要になるからです。
「浜通りの暮らしに興味があるけど、海が怖い」という相談もいただきましたが、浜通りでは3.11の津波被害を教訓に大規模な護岸工事を進めてきましたし、高台の土地を選んで暮らすこともできるので、海の近くの地域が全て危険という訳ではありません。また、放射線量に関する質問もよく出るのですが、福島12市町村は何年もかけて除染作業を進めており、空間線量は大幅に低減されており安全であるということもお伝えしています。
若い方からは、仕事に関する相談もいただきました。センターが運営するWEBサイト「未来ワークふくしま」内の「ふくしま12で働く」では、幅広いさまざまな求人情報を掲載しています。業界・業種、地域別に検索することもできますので、ぜひご活用いただきたいです。
―これから福島12市町村に移住したい方へメッセージをお願いします!
私は長年、長野県で銀行員として働いていたのですが、震災後に多くの人が福島の復興に力を尽くす中で、「自分は何もできなかった」ということがずっと心に引っかかっていました。「一生成長できて、地域に役立つ仕事がしたい」と思っていたときに今の仕事と出会い、50代後半で転職を決意して移住支援を行っています。
福島12市町村には、私のようにチャレンジをしようという人を温かく迎え入れる風土がありますし、誰もがワクワクするようなまちをみんなで創ろうという熱量の高さもあります。今回のようなフェアで、地域の思いに共感し、一緒に新しいまちづくりに取り組んで下さる方と出会えると大変うれしく思います。
今後も首都圏で開催されるフェアに相談ブースを出展しますので、ぜひお越しください。
■ふくしま12市町村移住支援センター
住所:〒979-1111 富岡町小浜553-2(福島県富岡合同庁舎2階)
TEL:0240-23-4315
E-mail:ijyu-shien@fipo.or.jp
HP:https://www.fipo.or.jp/ijyu/
充実の支援制度で、夢の実現をサポート!
「福島くらし&しごとフェア2022」はそのタイトルのとおり、移住する上で重要な”仕事”探しをサポートする団体も出展しています。福島県全域の中でも、特に福島12市町村を含む浜通りの移住者就業支援に力を入れている団体にもお話を伺いました。
社会福祉法人 福島県社会福祉協議会
人材研修課 橋本恵李さん、川添富士子さん
―相双地域等※で働く福祉・介護職員を増やす取り組みを行っているそうですが、具体的にはどのような支援をされていますか?
※相馬市・南相馬市・広野町・楢葉町・富岡町・川内村・大熊町・双葉町・浪江町・葛尾村・新地町・飯舘村・いわき市・田村市
被災地域の福祉現場では介護職員不足が深刻な課題になっており、施設や設備が整っていても働き手がいないために利用人数を半数以下に制限せざるを得ず、介護が必要な人に十分なサービスを提供できていない状況があります。
そこで、主に「奨学金貸付事業」と「就職支援金交付事業」、「交通費助成制度」を設け、相双地域等で福祉・介護職員になりたい人を支援しています。
奨学金貸付事業は、福島県相双地域等の介護保険施設などに就労する方に最大50万円を貸与し、2年間勤務した場合に全額返還を免除するもので、就職支援金交付事業は、介護保険施設などに6ヶ月以上就労した方に、最大20万円を交付するものです。交通費助成制度では、県外にお住まいの方が、施設見学、職場体験、採用面接等で現地の施設・事業所を訪れる際の往復交通費を助成しています。
福島県内全域の福祉・介護職を紹介する「福島県福祉人材センター」と連携し、求人情報のご紹介や求人募集中の施設との面談のセッティングも行っていますので、ぜひご活用ください。
―これから福島12市町村で働きたい方へメッセージをお願いします!
高齢化が進む中で介護職員を求める声は高まり続けており、コロナ禍のように社会情勢が不安定な時も安定的に働くことができます。待遇は年々改善されてきていますし、何よりも、施設の利用者さんから直接「ありがとう」と言っていただける、とてもやりがいのある仕事です。人と接することが好きな方や人のためになる仕事がしたい方は、ぜひご連絡いただけるとうれしいです。
2023年1月16日(月)~2月19日(日)まで「福島県福祉人材センター」の特設サイト「ふくしまで、咲こう」で「福祉の職場WEB説明会」を開催し、求人募集中の施設様によるウェブ説明会の様子をご覧いただくことができますし、2023年2月12日(日)と18日(土)には、福島県内で就職説明会も開催しますので、ぜひご参加ください。
■社会福祉法人 福島県社会福祉協議会
住所:〒960-8141 福島市渡利字七社宮111 福島県総合社会福祉センター内
TEL:024-526-0045
E-mail:jinzai@fukushimakenshakyo.or.jp
問い合わせフォーム:https://www.f-kaigoshogaku.jp/contact/
HP:https://www.f-kaigoshogaku.jp/
公益財団法人 福島県農業振興公社
就農支援センター 所長 菅野雅敏さん
―新規就農を考えている方にその候補地として福島12市町村を勧める場合、どのような点を伝えていますか?
未利用農地が多いこと、支援制度が整っていること、研修先もあることの3つの理由から、他地域と比較して就農条件が良いということを伝えています。
他地域では農地がないから就農できないという話も聞きますが、特に全村・全町避難を経験した地域は、農家さんが避難したまま帰還しないケースも多く、残された農地を有効活用できる法人や個人を地域全体が求めています。
移住して就農するためには、まとまった資金が必要になりますが、県外から移住されるのであれば、最大200万円が支給される「福島県12市町村移住支援金制度」を活用できますし、農業用機械や施設の導入費を3/4補助する(上限3,000万円)「福島県原子力被災12市町村農業者支援事業」なども利用できるので、他地域より手厚い支援が受けられます。
また、特に南相馬市、浪江町、広野町では、地元農家さんが研修生の受け入れを積極的に行っているので、研修時に地域農業の実践的なノウハウを学び、研修地等で独立するという計画も立てやすいです。
全国的に見てもここまで条件が整っている地域は少ないので、移住して新規就農したいという方には、まず福島12市町村をおすすめしています。
―これから福島12市町村で働きたい方へのメッセージをお願いします!
福島12市町村は、先に申し上げた理由で、県内で一番「就農したい」という夢を叶えやすい地域です。
福島県では、福島で農業をしたい方向けのポータルサイト「ふくのう」やInstagram「@fukunou_official」で日々情報発信を行っています。
また12月17日(土)には、東京都新宿区と宮城県仙台市で開催される「マイナビ農業『農林水産FEST』」にブース出展しますし、2023年1月14日 (土)には、東京都千代田区で開催される「新・農業人フェア」にも参加しますので、ぜひお越しください。
■公益財団法人 福島県農業振興公社就農支援センター
住所:〒960-8681 福島市中町8-2 福島県自治会館8階
TEL:024-521-9848
E-mail:center@fnk-syunou.jp
問い合わせフォーム:http://www.fnk-syunou.jp/form.html
HP:http://www.fnk-syunou.jp/
誰もがイチから挑戦できる場所
今回のフェアの目玉のひとつでもある先輩移住者への相談コーナーに、ゲストとして参加された飯舘村と楢葉町への移住者にも、福島12市町村で暮らし、働く魅力について伺いました。
【飯舘村】合同会社MARBLiNG 共同代表 矢野 淳さん
プロフィール
東京都杉並区出身。2011年に飯舘村村民とともに「認定NPO法人 ふくしま再生の会」を立ち上げた父の影響で、高校生の頃から飯舘村に関わり続ける。2020年、東京藝術大学建築科を卒業。2021年に地域プロデュース会社「合同会社 MARBLiNG」を設立し、村内の空き施設利活用事業の一環で、震災後10年以上放置されていたホームセンターの空き倉庫を活用し、地域環境づくりの自由研究秘密基地「図図倉庫(ずっとそうこ)」プロジェクトを企画運営。現在は飯舘村と東京の二拠点で活動中。
-飯舘村の新しい拠点づくりに取り組んでいるそうですが、どのような背景とビジョンがあるのでしょうか?
誰もが新しい村づくりに参画できる「関わりしろ」を作りたいというのが一番大きな目的です。
震災後は「外から来た人が支援し、村民が支援される」という構図があり、立場で人が分断されるところがあったのですが、「図図倉庫」のプロジェクトは、村民も、村外から関わる人も、移住者である地域おこし協力隊のメンバーも、私も、全員フラットな関係でプロジェクトを進めています。旧・倉庫の床の傷んだタイルを剥がして、天井を剥がして、10年分のネズミのフンを片付けて……という作業を、村に関わるみんなで協力して行っているんです。
協力者が多い分、愛着を抱いている人も気にかけている人も多い場所なので、これから「図図倉庫」を拠点に、みんなで一緒に村の新しい未来を描いていきたいと思っています。
―矢野さんが思う、飯舘村の魅力を教えてください。
「震災で一度リセットされた」というところに、大きな可能性があると思っています。
大学時代に飯舘村でフィールドワークをしていた時に、農家のお嫁さんに話を聞いたことがあったのですが、震災前は地域行事の準備を押しつけられたり、婦人会の派閥や内輪揉めがあったりして、村で女性として生きていくことにしんどさを感じていたそうなんです。でも、震災と原発事故で全村避難を経験し、一度は人口ゼロになった村に戻ってきたら祭りも婦人会もなくなっていて「悲しいし悔しいけど、少しほっとした自分がいました」という話をされていました。その話を聞いた時に、「復興」や「地域再生」とは単に元に戻すことではなくて、村の在り方をアップデートするチャンスなのだと気付かされたんです。
地域のコミュニティや価値観が出来上がっているところに「よそ者」として入っていくのはとても大変なことですが、飯舘村は一度リセットされ、居住人口が少なくなったからこそ、外から来た人が入る余白があります。今まさに、多様性を認め合える新しい村をみんなで一緒に作ろうとしているところなので、未来への可能性を感じています。
-来場者とはどのような話をされましたか?
「移住するのにすごく勇気がいるんです」という方に、「そんなに固く考えすぎないでください」という話をしました。
実際に飯舘村に移住した人に話を聞いても「面白そうだから来ました」と、直観やタイミングで移住を決めているケースも多いですし、そういう気持ちで来てくれた方が地元の人たちも「受け入れないと」と気負わずに済むので、お互いに打ち解けやすかったりします。村にはお世話好きの人が多いので、馴染もうという気さえ持っていれば、なんだかんだ助けてくれるので、準備万端で移住しなくてもなんとかなるものです。馴染めなかったら一度東京に帰ってきて、また別の移住先を探すという選択肢もあっていいと思います。
私自身も、今、面白い場所だと思うのが飯舘村だからいるというだけなので、もう少し移住を気軽に考えてもいいと思っています。
-飯舘村への移住を考えている方にメッセージをお願いします!
何かを諦めなければ移住できないわけではないので、都会と飯舘村の暮らしの良さの、どっちも取ればいいと思います。
特に飯舘村から東京までは3時間くらいで来られるので、私も月に1~2日は東京に来て、移住前から通っている美容院に行って、ショッピングをして、友達と飲んで、という感じで東京でしかできないことを楽しんでいます。
移住を重く考えすぎず、どんな人が住んでいるのだろうとか、現地に友達を作りたいとか、最初はそれくらいの感覚でふらっとお越しいただきたいです。
■合同会社MARBLiNG
https://note.com/marbling_inc
【楢葉町】株式会社福島しろはとファーム 係長 長井 翔太朗さん
プロフィール
大阪府出身。大学院を卒業後、未経験ながら農業の道を志し、農業の6次化の取り組みを行う「白ハトグループ」に就職。2017年から茨城県行方市の農業体験型テーマパーク「なめがたファーマーズヴィレッジ」で農産部門を担当し、さつまいも農業をイチから学ぶ。2021年より、福島県楢葉町でのさつまいも産地化事業(楢葉町をさつまいもの一大産地にする事業)の拠点責任者になり、「日本の農業をステキにしよう!」をキーワードに、苗づくり土づくりからの農業をテーマに地域活性化に取り組む。
-どのようなところに楢葉町で暮らす魅力を感じていらっしゃいますか?
僕が生まれ育った大阪と比べると、人と人との距離がとても近いなと思います。
僕の娘が生まれた時は、町長さんまで一緒になって喜んでくださいましたし、僕と妻と娘の一家3人がコロナにかかって困っていた時は、楢葉町役場の課長さんが「玄関に食べ物を置いておいたよ」という連絡をくださいました。商店街のお母さんたちもすぐに顔を覚えてくれて、お店に行くたびに「あ、また来てくれたんだね」と話しかけてくれます。人の温かさを感じられる瞬間が日常の中にあるところは、大きな魅力だと思います。
あとは、とにかく食が豊かで、スーパーに何気なく売っているお刺身がめちゃくちゃおいしかったり、さまざまな種類の日本酒が揃ったりするので、食の楽しみも増えましたね。
学生時代は、電車で2時間くらいかけて大阪から京都まで通学していたのですが、家から目的地まで車で一直線の生活に慣れてしまった今は、「もう、あんなに不便な暮らしには戻れない……」と思います。
-来場者とはどのような話をされましたか?
新規就農したいという方が相談コーナーに来て下さったのですが、農家になる=独立と捉えていらっしゃるようだったので、「一度、農業法人に就職するのも一つの手ですよ」という話をしました。
未経験からいきなり独立すると分からないことも多いと思いますし、収益化させるまでの苦労もあると思います。福島12市町村では、農業法人の求人が増えてきているので、ぜひ選択肢のひとつに入れていただきたいです。
-楢葉町で農業をする魅力はどのようなところにありますか?
農業で地域全体を活性化させられる可能性があるところです。
楢葉町には海も山も川もありますし、「天神岬温泉」という温泉もあります。その周辺には宿泊施設も整っていますし、「ならはスカイアリーナ」や「Jヴィレッジ」などの大きなスポーツ施設もあります。
さつまいもの一大産地化を進めて「農」でまちに人を呼び、町全体でおもてなしをしてみんなで豊かになる。そんな未来が、もうすぐそこまで来ています。
いつか「震災後は大変だったけど、震災があったからこんなに良い町になったよね」と言えるようにしていきたいです。その新しいまちづくりに、農業だからできることがあると思っています。
-楢葉町への移住を考えている方にメッセージをお願いします!
いろいろな地域を周る中で、風景だったり人だったり、何か心に留まるものと出会ってまた来たいと思って通ううちに、滞在期間がだんだん長くなっていくのが一番だと思います。
最初は、移住というより旅の延長という感覚で、ぜひ一度こちらにお越しください。
■株式会社福島しろはとファーム
https://www.shirohato.com/FUKUSHIMA_NARAHA/
■株式会社福島しろはとファームの求人情報
https://shirohato-naraha.jbplt.jp/
■福島12市町村の求人情報(農業)
https://mirai-work.life/work/#industries=agriculture_forestry_fishery
福島12市町村の移住支援制度
福島12市町村では、移住検討段階から使える交通費補助や、移住後に受け取れる移住支援金など、生活や移住スタイルに合わせた多様な支援制度で新しいチャレンジを応援しています。
■福島県12市町村移住支援金制度
福島12市町村において、新しい地域を作り出すなどチャレンジを行う意欲のある県外からの移住者に対して、最大200万円の移住支援金を交付しています。
https://mirai-work.life/support/relocation/
■ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金
福島12市町村内を訪れ、移住する際に必要な現地調査・現地活動を行った場合に、その交通費および現地での宿泊費の一部を補助します。1年度につき交通費利用は5回まで、宿泊費利用は5泊まで可能!移住準備の現地調査や物件・仕事探しにぜひご活用ください!
https://mirai-work.life/support/transportation/
※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各機関のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。
取材・文:高田 裕美 撮影:渡辺 慎一郎