移住者インタビュー

浪江町で友だちつくろう!から始まった「なみとも」

2022年11月23日
浪江町
  • まちづくり
  • 移住

「『なみとも』は、浪江町でやりたいことをやれる場所。私たちにとっての居場所ですね」と笑顔を見せる、任意団体「なみとも」代表の小林奈保子さん。

小林さんが浪江町で暮らし始めたのは2017年3月末。東京電力福島第一原発事故による避難指示の一部解除に合わせて、家族とともに住み始めました。そして同じ時期に浪江町に移住した和泉亘さんと2人で、浪江町で若者が集まれる場所をつくるため、そしてなによりも自身が町の人とつながっていくために翌2018年に結成したのが「なみとも」です。

今や「浪江町の若者のことは、なみともに聞け」と言われるほどに市民権を得ているそう。その活動にかける思いを伺いました。

小林さん

浪江町の今を知る「なみえ会議」

結成時から現在まで、なみともが定期的に続けている活動が「なみえ会議」です。浪江町に暮らす人、浪江町で仕事や地域活動をしている人たちが集まり、隔月1回、浪江町の権現堂区集会所で行われています。

誰でも参加できるオープンな場として開いているなみえ会議には、行政区長やNPO、社会福祉協議会、まちづくり会社、民間企業などの浪江町で活動する団体が参加し、時には学生たちが見学に来ることも。毎回20人ほどが集まり、それぞれが行っている事業やイベント情報などを共有しています。

なみえ会議の様子(なみともFacebookページより)

なみえ会議は、なみとも結成直後の2018年4月から始まりました。避難指示解除から1年、浪江町に戻っている住民は1,000人ほど。年配の方がほとんどのため、人を集めるためには強い意志を持って行動しなければなりませんでした。

「回覧板もないので、情報を伝える手段がなかったんです。始めた当初は、福祉関連のテーマが多かったですね。各支援団体の活動やイベントがかぶってしまうことも起きていたので、情報を共有することで重複を防いだり、協働を促したり。今でもなみえ会議は、そこから何かを生み出すというよりも、『今、浪江で起こっていること』を知る情報交換の場として活用していただいています」と小林さん。

なみえ会議でのなみともの役割は、進行と議事録の作成。更に、会議参加者や過去に名刺交換した人たちにメーリングリストを通じて議事録と次回の予定を送付しています。また、SNSやホームページを通して会議の報告も行っています。

最近では、浪江町で開催された移住体験ツアーの参加者にも、なみえ会議に参加してもらったそう。「なみともの活動のなかで一番浪江町のことがよくわかるのが、なみえ会議かなと思っています。最初の一年間は毎月開いていましたが、町の状況が変わってきて参加者のみなさんも忙しくなってきたので、翌2019年からは隔月開催にしました。年度替わりで参加者の顔ぶれも代わりますし、町のフェーズも変わっていくなかで、定期的な情報交換の場は必要だと感じているので、4年たった今でも続けています」

イベントでつながる人の輪

なみえ会議をはじめ、なみともの活動は地域の人と顔を合わせて一緒に活動することを大切にしてきました。移住してきた若者と地域の人がバーベキューをしたり、子どもたちや学生が農業体験をしたり、まち歩きをしたり。ですが、2020年から新型コロナウイルス感染症が全国的にはやりだし、対面活動が難しい状況となりました。
「お年寄りが多い町なので、とにかく感染させるわけにはいかないと、直接会ってなにかすることができなくなってしまったんです」

なみえ会議もやり方を変え、オンラインでの開催を行いました。しかし参加者は少なく、つながりが見えなくなることの方が不安だと感じ、なみえ会議だけは感染予防対策を行いながら、対面開催を再開しました。

コロナ禍で対面イベントができない日々が続きましたが、感染状況も落ち着いてきた2021年9月に久しぶりに開催したイベントが「つながる防災DAY」。浪江町には、仕事や移住で転入し地縁がないなかで暮らしている人もたくさんいます。コロナ禍で人に会う機会も減り、災害が起きたらどこに避難すればいいのか、そもそも自分はどの地区に住んでいるのかも分からない人が多くいるのではと、小林さんは感じていました。町民同士がいざというときに助け合えるつながりができればと考え、浪江町で事業を行っている「良品計画」の協力を得て、防災を楽しく学ぶイベントを開催したのです。

つながる防災DAYの様子(なみともFacebookページより)

コロナ禍で生まれた浪江町のオンラインコミュニティー

「実は2019年10月に発生した台風による水害の時に、防災無線が聞こえなかったり、避難場所が分からなかったり、ということがすでに起こっていたんです。そのときどきで、浪江町で必要だと思うことを実行できるのが、なみとものよさだと思います」
久しぶりのイベントということもあって、多くの人が楽しみながら防災を体験しただけでなく、この日のイベントはその後の災害対応にもつながっていきました。

そんななか、なみともが始めたのがLINEでのオープンチャットです。「浪江町を楽しもう!誰でも参加OK!」と名付け、いざというときに助け合えるつながりづくりをオンラインでできたら、という想いから、オンライン上で浪江町の情報を発信できる場をつくったのです。

2021年から始めて現在メンバーは50人以上。匿名で参加できるので、半分以上は知らない人だといいます。
「いろいろな人が入って来て、浪江町のことを話せる場所として機能しています。町内で活動している人も多いので、イベント情報や、『来週フットサルやるよー』というような趣味のことなど、いろいろな話題が出ますよ」と画面を見せてくれた小林さんは、本当に楽しそうです。
「私自身がオープンチャットの仕組みを知っていたので、浪江町でもやろう!って始められたんですよね。トラブルは今のところありませんし、管理さえできればいいツールですよ。あ、管理は全部和泉くんがやってくれています」と笑います。

和泉さん(左)と小林さん

「防災イベントを行った翌年の2022年3月に、震度6弱の大きな地震がありました。その時、オープンチャットに避難所の情報や防災無線から流れてきた情報などを、みんなが次々と書き込みました。とてもありがたかったですし、非常時でもつながりを感じました」

この指とまれ形式の「なみえバーガー会議」

今、なみともが積極的にコーディネートしているのが「なみえバーガー会議」です。
「ハンバーガーを片手に、ぐらいの気持ちで、肩肘張らず参加できるというのがコンセプトです」と小林さん。なみえ会議とは違い、この会議は「この指とまれ」方式で運営されており、「こんなことをやりたい!」と手を挙げた人を中心に、イベントや活動が始まっていくそう。なみともは事務局として、なみえバーガー会議を開催して人を集めたり、活動を進める上で必要な人や団体につないだりしています。

なみえバーガー会議から生まれたイベントが、2022年3月に開催した「新町にぎわいマーケット」や、同年9月に開催した「シーサイドシネマin請戸漁港」です。どちらも、なみえバーガー会議を通じて集まった町内外の人たちで実行委員会をつくり、イベント運営を行いました。なみともは「新町にぎわいマーケット」では主催として、「シーサイドシネマin請戸漁港」では実行委員会の一員としてイベントをサポートしました。

「新町にぎわいマーケット」の前夜に同会場で開催した「3.11キャンドルナイトinなみえ」

小林さんは「なにかやりたいことを持ち込んでもいいし、イベントにスタッフとして参加してもいい。とにかくゆるく運営しているので、気軽に参加してほしいですね」と呼びかけます。

人とのつながりを生かして地域の活動をサポート

昨今は、なみともとしてイベントを主催するだけでなく、サポートに入ることも増えてきたそうです。
「私たちだけでなく、地域おこし協力隊などの新たなプレイヤーが増えて、浪江町でイベントを企画する方が増えたのは本当にうれしいことです。そこにサポートとして参加したり、コーディネートを担当したり、役割が変わってきているのを感じます」

県外からの移住イベントの受け入れなども積極的に行っており、今年に入ってからは、福島県の制度である「ふくしま12市町村移住サポーター」としてすでに2回、移住体験ツアーのコーディネートを行っています。
「なみともの活動を通して多くのイベントに携わり、町内にはさまざまなコンテンツもありますし、任せていただけるのはうれしいですね」と話します。

外から人を受け入れるメリットについては「私たちはずっと浪江町にいるので、浪江町が今、世間でどう見られているのかわからないんですよね。外から来た人たちと関わることで、自分たちを客観的に見られたり、この情報は全然外に届いていないんだと実感したりできるのは、ありがたいです」と教えてくれました。

なみともは暮らしそのもの

小林さんが暮らし始めた頃はまだ町内に住んでいる人も少なく、農業も再開されていなかったので、カエルの声すら聞こえない、人の営みが感じられない状況だったそう。

「自分から動いて人に会わないと心が腐ってしまうなと思って、なみともを始めたところもあります。とにかく、浪江で友だちをつくろう、人が集まる場所をつくろうという気持ちでした」

ですが、小林さんが移住して5年たった今では、地域おこし協力隊、UターンやIターンで移住してくる人など、なみとも結成当時には想像もできなかったほど、浪江町に暮らす若い人たちが増えています。

今の小林さんにとって、なみともは暮らしそのものだと言います。
「その時々で浪江町に必要だなと思うことをやってきました。今も自分たちに負荷をかけることなく、やりたいことをやれています。活動というより、暮らし。自分たちが浪江町で楽しく生きていくための『なみとも』です」と話します。

これから浪江町にやって来るかもしれない人たちには、「何か知りたいと思ったら『なみえ会議』に参加したり、何か一緒にやりたいというときには『なみえバーガー会議』に出ていただいたり、ぜひ声をかけてください。町に必要なものは、みんなでつくっていければと思っています」とメッセージを送ってくれました。

■任意団体 なみとも
HP:https://www.namitomo.org/
Facebook:https://www.facebook.com/namitomo.namie
なみえバーガー会議 Twitter:https://twitter.com/burgermeeting

■ふくしま12市町村移住サポーターガイドツアー
「なみとも」他、移住サポーターと一緒に体験・交流する、現地ツアーの参加者を募集しています!
https://kibounochi.info/

取材・文:山根麻衣子 撮影:及川裕喜