【徹底解説】首都圏からふくしま12市町村へ行くには?

2022年11月18日
  • 交通
  • まちづくり

移住や二拠点居住の支援に力を入れている福島12市町村。お試し住宅や移住体験ツアーなど、現地の暮らしを体感できる取り組みが始まっていますが、自ら足を運んでまちを回ってみることも大事です。

首都圏から福島12市町村を訪れるには、どのようなアクセスが便利なのでしょうか。ひとことで福島12市町村と言っても、非常に広範囲で、交通インフラも大きく異なります。ここでは、エリアごとにご案内します。

田んぼの中をのどかに走る常磐線列車と福島第2原発の排気塔。竜田駅~富岡駅間の国道6号から撮影

双葉郡沿岸部の広野町、楢葉町、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町へは、特急ひたち

双葉郡内で特急ひたちが停まるのは、広野駅、富岡駅、大野駅(大熊町)、双葉駅、浪江駅の5つ。東京都内から行く場合は、品川駅、東京駅、上野駅から乗車し、1日に3本運行している仙台行きの特急ひたちであれば乗り換えなし。東京からは約3時間~3時間半で到着します。

楢葉町にある駅(Jヴィレッジ駅、木戸駅、竜田駅)を目指す場合はいわき駅で特急ひたちから常磐線各駅停車に乗り換えが必要です。下りは時刻表を確認しておく必要がありますが、上りの特急ひたちはいわき駅から東京方面へ1時間に1本の頻度で走っていますので、乗り継ぎの待ち時間はほとんどありません。

特急ひたち

広野駅~浪江駅までの駅は、竜田駅(8:00~17:00のみ有人)を除くすべてが無人駅です。Suica専用自動改札機と精算機はありますが、特急ひたちは全席指定席でもあるので、基本的に切符は事前のオンライン予約や乗車駅で目的地まで購入しておくことをおすすめします。

上りの切符は、広野駅、富岡駅、大野駅、双葉駅、浪江駅では指定席券売機(営業時間8:00~20:00)で発券できるだけでなく、電話口でオペレーターと会話しながら購入することもできますので、無人駅でも安心です。

みどりの窓口との通話ができる「話せる指定席券売機

ただし、上記以外の駅には、切符の券売機がありません。券売機がない駅で乗車する際には、Suicaで入場するか、駅舎内に設置された機械で乗車駅証明書を発行し、降車した駅で運賃を支払います。

乗車駅証明書発行機

駅前には、意外と何もないのが双葉郡のフツー

駅到着後は、タクシーでの移動が通例です。多くの場合、電車の到着時間に合わせてタクシーが待っていてくれますが、台数が少ないので、急ぎの用事などがある場合は予約を入れておくと確実です。タクシーの運転手さんは地元の人が多いので、目的地までスムーズに送迎してもらえることが多いです。

現在は浪江駅のみですが、「なみえスマモビ」というオンデマンド交通もあります。駅に着いてからスマートフォンで配車手配をすると数分で到着。浪江町内ならほぼどこへでも運行しています。

また、駅前でお土産や軽食などを購入できるのは富岡駅前の「富岡町観光案内所」や「富岡ホテル」フロント、広野駅東側のコンビニ「ニューヤマザキデイリーストア 広野みらいオフィス店」のみで、場所も品数も限られます。特急ひたちの車内販売で飲み物やスナック菓子等は購入できますが、お土産や車中の食事などは、町内のお店や、楢葉町と浪江町にある「道の駅」(それぞれ最寄り駅から徒歩15分程)などで事前にご購入ください。もし、いわき駅で特急に乗り換えで時間に余裕がある場合は、いわき駅構内のコンビニ「NewDays」で駅弁を買うこともできます。

浪江町にある道の駅なみえ

電車が通っていない川内村、葛尾村へのアクセス

川内村は富岡町から車で30分ほど。平日は富岡駅から1日3本バスが走っていますが、電車の時刻とリンクしていないため、タクシーかレンタカーをおすすめします。

特急ひたち以外で行く場合は、東北新幹線で郡山駅へ。そこから磐越東線に乗り換え、船引駅(田村市)で下車。船引駅からは、川内村と葛尾村に向かうバスが運行しており、それぞれ1時間ほどです。

車の運転ができるなら、川内村へはいわき駅か富岡駅で、葛尾村へは郡山駅でレンタカーを借りて向かうのがよいでしょう。車があれば、蛙の詩人・草野心平ゆかりの天山文庫(川内村)や、季節の花や紅葉の美しい葛尾大尽屋敷跡公園など、自然豊かなスポットに足を運ぶことができます。

川内村にある天山文庫

田村市へは東北新幹線+磐越東線で

田村市へは、東北新幹線で郡山駅へ出て、磐越東線に乗り換えて市役所のある船引駅まで約25分と便利です。船引駅周辺は、徒歩圏内に飲食店や旅館も多く、着いてすぐに食事や温泉が楽しめます。バスに乗り継げば、川内村や葛尾村へも1時間以内で行くことができます。

田村市内には船引駅を含めて6つの駅がありますが、田村市は広いので、鍾乳洞で有名なあぶくま洞や星の村天文台へ向かうなど、その後の移動を考えると、船引駅か郡山駅でレンタカーを借りる方が便利です。

田村市滝根町にある星の村天文台(田村市ホームページより)

飯舘村、川俣町へは、福島駅からバス利用

飯舘村、川俣町に向かう場合は、東北新幹線の福島駅で降車しバスで40分~50分で中心地に到着します。注意してほしいのは、冬の寒さです。温暖な気候の福島12市町村の中で、飯舘村、川俣町は最低気温がマイナス10度以下になることもあり、もちろん雪も降ります。レンタカーを借りる場合は雪道運転に慣れていないと大変です。

なお、飯舘村には現在レンタカーサービスがありませんので、レンタカーを使う場合は福島駅か南相馬市の原ノ町駅で借りることになります。冬が寒いということは、星もきれいに見えるということ。防寒をしっかりして、降り注ぐような星空を堪能してください。

飯舘村の夜空(福島県ホームページより)

仙台からも来られる南相馬市

南相馬市へのアクセスは双葉郡沿岸部と同じく、特急ひたちと常磐線各駅停車を利用するのが便利です。仙台行きの特急ひたちであれば、市の中心部である原ノ町駅に東京から乗り換えなしで行くことができます。小高駅へは浪江駅で、鹿島駅に向かう場合は原ノ町駅で特急から常磐線各停に乗り換えます。

なお、東京方面から原ノ町駅で降りる場合、小高駅以北はJR東日本の管轄エリアが異なるためSuicaをタッチして改札を出ることはできません。特急ひたち車内か降車駅での乗車運賃の清算、またはあらかじめ紙の切符の購入が必要となります。

また南相馬市の場合、仙台駅まで東北新幹線を利用して、仙台から約1時間~1.5時間ほど常磐線で南下するルートもあります。特急ひたちを利用するよりも交通費が高くなりますが、本数が多い東北新幹線で仙台に出たほうが効率よく移動できることもあるでしょう。

南相馬市の小高駅

東京駅から高速バス直通のエリアも

最後に、東京駅から高速バスを利用する場合のポイントをご紹介します。

2023年4月に東京駅から南相馬市をつなぐ高速バスの運行が再開され、首都圏からのアクセスが向上しました。乗降所は「常磐富岡インター入口」「大熊町役場」「伝承館・双葉町産業交流センター(双葉町)」「道の駅なみえ」「原ノ町駅前(南相馬市)」「南相馬市役所前」「南相馬バスターミナル」と5市町7ヵ所で乗降が可能で、目的地まで高速バス1本で向かうことができます。

運賃は乗車日によって異なり、「常磐富岡IC入口」「大熊町役場」「伝承館・双葉産業交流センター」「道の駅なみえ」~「東京駅」は片道3,000円から、南相馬市の3つの乗降所から東京駅は片道3,500円からとなっています。上下線ともに1日1便ですので日帰りの往復で高速バスを利用することはできませんが、移動の費用をなるべく節約したい方におすすめです。

目的地が常磐線の停車駅に近いのであれば、東京駅発いわき駅着の高速バスが便利です。ほぼ1時間に1本運行しているので、いわき駅発の常磐線の時刻表に合わせて利用すると良いでしょう。東京駅発いわき駅着の高速バスは、東京駅13:00発の1本のみが富岡町中心部まで延びており、道の駅ならは、Jヴィレッジにも停車します。ただし、そこからの二次交通がないため少し使いづらいことが難点ですので注意しましょう。

最後に

いかがでしたでしょうか。ご自身の体力やお財布と相談しつつ、快適に福島12市町村までいらしてください。

なお、移住を検討されている方が福島12市町村へ訪問する際には、往復交通費や宿泊費の一部補助が受けられる制度が準備されていますので、ぜひご活用下さい。

■ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金
福島12市町村への移住を検討されている方に向けて、往復交通費や宿泊費の補助が受けられる「ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金」について詳しくご紹介しています。
https://mirai-work.life/support/transportation/

■浪江町のデマンド交通「なみえスマモビ」の利用方法
文末には、福島12市町村の最寄り駅からの二次交通手段となるカーシェアやレンタカー情報も掲載しています。
https://mirai-work.life/magazine/2630/

※内容は2023年8月に更新。
文:山根 麻衣子