移住サポーター

移住相談員さんに聞く!ふくしま12市町村の移住相談窓口ってどんなところ?~田村市・葛尾村・川内村編~

2022年10月4日
  • Uターン
  • 単身

福島12市町村では、市町村ごとに「移住相談窓口」を設け、地域の基本情報から仕事や住まい、移住支援制度、地域コミュニティへの入り方など、相談者一人一人に合わせた情報を提供しています。

この記事では、前回の南相馬市・飯舘村・川俣町編に続き、田村市・葛尾村・川内村の「移住相談窓口」をご紹介します!

【田村市】たむら移住相談室 田村サポートセンター

\この相談員さんに聞きました!/

たむら移住相談室 田村サポートセンター
地域おこし協力隊(移住定住担当相談員、空き家担当相談員)
菅野千恵子さん、 佐久間朱妙(あけみ)さん

田村市の移住相談窓口は、2010年に廃校となった「旧石森小学校」を活用して造られたテレワーク施設「テラス石森」内にあります。

相談対応にあたるのは、地域おこし協力隊員としてまちづくりに取り組む、菅野千恵子さんと、佐久間朱妙さん。お二人とも田村市にUターンした移住者です。

――「たむら移住相談室」では、どのような支援をされていますか?

写真右、移住・定住担当相談員の菅野さん

移住希望者からの相談対応や、移住体験ツアーの企画・運営、現地視察時のアテンド、地域の情報発信、移住後のコミュニティ形成のサポートなど、幅広い支援を行っています。

 東京・渋谷にある移住相談窓口「田村市・東京リクルートセンター」とも日々連絡を取り合い、首都圏在住の相談者さんに現地の細やかな情報をお伝えしたり、こちらに来られる際に空き家をご案内したり、地域資源を活かして交流人口を生むプロジェクトなども実施中です。

写真左、空き家担当相談員の佐久間さん

これまでサポートセンター主催でさまざまな地域活性化プロジェクトを行い、地域の方々とのつながりも築いてきたので、例えば「移住後に新規就農したいけど、知り合いの農家さんがいない」という方に対しては先輩農家さんをご紹介できますし、「知り合いがいない土地で子育てしていくのが不安」という方に対しては、子育て世代向けの3つのコミュニティプロジェクト(あそび場作り「もりのび」コミュニティ農園ヨガコミュニティ)にご参加いただくことで、地域コミュニティに入るサポートをすることもできます。

せっかく田村市に移住してもコミュニティに馴染めないと新しい暮らしを心から楽しめないと思うので、「こんな人とつながりたい」、「こんなコミュニティに入りたい」というご希望がある方は、ぜひ私たちを頼ってほしいです。

――お二人はどのようなきっかけでUターンされたのでしょうか?また、田村市の魅力はどんなところにあると感じていますか?

佐久間さん 私は大学卒業後、就職を機に東京に出てそのまま看護師や保健師として働いていたのですが、両親が高齢になってきたこともあり、地元に戻ることを決めました。今はUターンして実家で暮らしているので、家族のすぐそばで同じ時間を過ごせることに、喜びと幸せを感じています。

菅野さん 私は高校卒業後に就職を機に上京し、同じ会社で長年勤めたのですが、転職して環境を変えようと思い立ったタイミングでふと地元の求人情報を調べてみたら、若い世代が田村市の活性化のためのプロジェクトを立ち上げていることを知ったんです。田村市出身でない方も地域を盛り上げようと懸命に活動されていて、自分も故郷のために何かできないかと思い、今の職と出会ってUターンすることを決めました。

田村市に帰ってきてから、四季の移り変わりを肌で感じられるようになり、東京で暮らしていた頃よりも『生きている実感』を強く持てるようになったと感じています。

――特に印象的だった相談者さんはいらっしゃいますか?

横浜市から田村市へ移住された白石さんご家族

菅野さん 横浜市から移住された白石さんご家族は、佐久間さんと二人三脚で相談対応にあたったこともあって印象に残っています。お子さんが3人いらっしゃるご家族で、『子どもたちがもっとのびのび暮らせるところに移住したい』と、いろいろな地域を比較検討されていましたが、実際に田村市に足を運び、空き家と出会ったことが移住のきっかけになったようでした。

今はその空き家を家族みんなで楽しみながらDIYをされたり、先に申し上げた、子育て世代向けの3つのコミュニティにも参加してくださったりと、すっかり地域に溶け込んでいらっしゃるようです。

佐久間さん ホームページで空き家情報を見てお問い合わせいただいた方をご案内するため、降雪後の山道を往復2時間かけて歩いて物件の下見に行ったことがあるのですが、目を輝かせながら『ここはこういう風にDIYをしたい』、『ここでこんなことがしたい』と次々にリノベーションのアイデアを話されていたのが印象的でした。

その方は実際に物件購入を決め、元の所有者様からの引き渡しにも立ち合ったのですが、『最後にみんなで写真を撮りましょう』と全員で記念写真を撮った思い出があります。家を通してそれぞれの人生が交わる瞬間に立ち会い、家の歴史をつなぐことができた喜びも込み上げてきて、心に残る出来事になりました。

――最後に、これから移住相談窓口を利用したい方へメッセージをお願いします!

「テラス石森」内にある交流スペース。共有コワーキングスペースは、1時間200円から利用できます

菅野さん 「都会暮らしに疲れたから」、「なんとなく田舎生活に憧れて」という理由で問い合わせをくださる方も多いのですが、私自身、Uターン後に次の目標を見つけるのに苦労した経験があるので、「なぜ移住したくて、どういう生活を望み、どんな風に働きたいか」を移住する前に具体化しておくとよいと思います。 

その手段としておすすめなのが、移住相談とあわせて先輩移住者のリアルな声を聞くことです。田村市には、仕事に誇りを持ち、自らの手で楽しみながら暮らしを創り、生き生きと暮らしている方が多くいらっしゃいます。「たむら移住相談室」ではそうした方々と気軽に交流できるイベントの運営も行っていますし、直接ご紹介することもできますので、計画性を持ちながらもフットワーク軽く、移住後の暮らしを具体化する手段としてご活用いただきたいと思います。

佐久間さん 移住は人生の大きな転機になる可能性があるので、ご自身の感覚を信じて、 “今”と感じたタイミングで連絡をくださるといいと思います。「こんな暮らしがしたい」、「こんな家に住みたい」などのご希望を具体的に伝えていただければ、そうした物件情報が出てきた時にいち早くお伝えすることもできます。継続的に連絡を取り合い、一人ひとりが「かなえたい!」と思う暮らしが見つかるまで、全力でサポートします!

■たむら移住相談室 田村サポートセンター
住所 :〒963-4313 福島県田村市船引町石森字舘108(テラス石森 内)
TEL:050-5526-4583 (受付時間:10:00〜20:00 年中無休 ※年末年始は除きます)
E-mail:contact@tamura-ijyu.jp
HP:https://tamura-ijyu.jp/
※相談対応は事前予約制となりますので、あらかじめメールがお電話にてご連絡いただきますようお願いします。

■田村市の住宅事情や支援制度についての特集記事はこちら
https://mirai-work.life/magazine/1671/

 【葛尾村】葛尾村移住・定住支援センター「こんにちは かつらお」

写真左から、成田さん、米谷さん、山口さん

\この相談員さんに聞きました!/

葛尾村移住・定住支援センター「こんにちは かつらお」
移住・定住相談員
山口和希さん、成田朱実さん

葛尾村の移住相談窓口「葛尾村移住・定住支援センター」は、復興のシンボルとして、地域内外をつなぐ交流拠点として建てられた「復興交流館あぜりあ」の敷地内にあります。

相談対応にあたるのは、移住・定住相談員の山口和希さんと、成田朱実さん。ともに、関東から葛尾村にIターンされた移住者です。

――葛尾村では、どのような移住・定住支援を行っていますか?

村役場と「一般社団法人 葛尾むらづくり公社」が連携して、村づくりから、移住・定住支援、空き家や仕事の紹介、交流・関係人口の拡大に至るまで地域活性化に関わる取り組みを協力して行っています。

移住希望者に対する支援は、福島県やふくしま12市町村移住支援センターでも行っていますが、葛尾村では独自の支援策として、アーティストやセカンドライフ世代の方が利用できる「かつらおむら復興移住支援金」(補助額最大170万円)や、村在住の子どもに(15歳になる年度末まで)1人につき月2万円を交付する「みらい子ども助成金」などの制度を設け、移住後の暮らしもサポートできるようにしています。

――相談者さんからよく寄せられる問い合わせや質問にはどのようなものがありますか?

葛尾村移住生活体験住宅(お試し住宅)

住まいと仕事に関するご相談をよくいただきます。

ご相談者さんの中には古民家暮らしを希望される方もいらっしゃるのですが、東日本大震災および原発事故後の全村避難期間に劣化が進んだり取り壊してしまった家も多く、すぐに人が住めるような空き家が少ないのが現状です。

その代わり、葛尾村では、移住希望者がお試し滞在できる「葛尾村移住生活体験住宅」をご用意しているほか、約65人が暮らせる村営住宅や「地域活性化住宅」を整備し、移住希望者の最初の住居としてご紹介しています。

仕事に関しては、「復興に貢献できる仕事がしたい」という方からのお問い合わせもいただき、本当にありがたく感じています。一方で、葛尾村は、全村避難後に故郷を離れる選択をされた住民やさまざまな事情で避難を継続されている方もいらっしゃり、人口減少がこれまでにないスピードで進んでいます。そのため、「今後、どのように村を持続させていくか」が目下の課題になっています。

これから村全体でビジョンを描いていこうとしているところなので、この地域に長く暮らしている方々と共に、“村のこれから”を一緒に考えてくださる方に来ていただけたらうれしく思います。

――お2人とも関東から葛尾村に移住されたそうですが、どんなところに葛尾村で暮らす魅力を感じていますか?

成田さん 村内のどこを歩いていても清らかな川が流れていて、澄んだ“気”が循環しているのを感じられるところです。山あいにあるので、村全体に霧がかかることも多いのですが、朝霧にやわらかな光が差し込む様子は、特に幻想的で美しいです。そうした心洗われるような風景が日常の中にあるところに、村で暮らす豊かさを感じています。

山口さん 葛尾村は居住人口約470人の小規模な村です。だからこそ地域プレーヤーも少なく、若い移住者が活躍できるところがあります。自分自身も移住・定住支援、関係人口創出のためのプロジェクト、地域コミュニティ形成など、移住前から希望していた活動に一から携わることができて、日々やりがいを感じながら暮らし、働いています。

――最後に、これから相談窓口を利用したい方に向けて、メッセージをお願いします!

成田さん 相談者さんとお話しする中で、他の市町村のほうが合っていると感じたら、素直に周囲の市町村をおすすめするようにしています。人生相談も含めて丁寧に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

山口さん 電話やメールでの移住相談も承っていますが、ぜひ実際にこちらまでお越しいただいて、葛尾村の雰囲気を体感いただきたいと考えております。『ふくしま12市町村移住支援交通費等補助金』など、移住希望者に対する交通・宿泊費の助成制度もありますし、2022年9月から10月にかけて移住体験ツアーを開催しています。こうした制度や機会をご活用いただき、まずは一度、葛尾村に足をお運びください。

■葛尾村移住・定住支援センター(一般社団法人 葛尾むらづくり公社)
住所:〒979-1602 福島県双葉郡葛尾村大字落合字落合20-1
TEL:0240-23-7727 (受付時間:9:00~17:00 年中無休 ※年末年始は除きます)
E-mail:k.muradukuri@katsurao-kosya.or.jp
HP:https://konnichiwa-katsurao.jp/

【川内村】川内村移住・定住支援センター

移住相談員の新田さん 

\この相談員さんに聞きました!/

川内村移住・定住支援センター
移住相談員
新田美千夫さん

川内村では、地域資源を活かした新しい村づくり活動を行う「一般社団法人 かわうちラボ」との連携の下、移住・定住、空き家・求人情報などの総合的な情報提供を行っています。

そのうち、移住・定住に関わる実務を一手に担うのが、相談員の新田美千夫さんです。

――相談員1名体制でワンストップ対応をされていると伺いましたが、どのような思いで日々相談対応されているのでしょうか。

「川内村移住・定住支援センター」が入る、「一般社団法人 かわうちラボ」の外観

「移住希望者からの相談に全力で応える」という相談窓口の本質を満たすことを最優先に、2021年10月に既存施設の一部を借りて、相談対応をスタートさせました。

就農希望者からのご相談があれば、私から農政係に依頼して就農サポートを受けられるように手配しますし、空き家や村営住宅の下見に行きたいという方に対しては、当センターが直接ご案内しています。遠方からの移住希望者に対しては、準備のために何度も村に来なくて済むように担当部署に掛け合い、本来は別々に行う保育園と小学校の説明を一緒にできるよう手配したこともあります。

役場の各担当課の職員と常にコミュニケーションを取っているので直接交渉もできますし、最初から最後まで責任を持って対応しますので、移住に関して何か困ったことや分からないことがあれば、まずは私を頼ってほしいです。

――どのような方から、どのようなご相談が寄せられていますか?

「かわうちラボ」のホームページをご覧になった方から、空き家や求人情報についてのお問い合わせをいただくことが多いです。

プロランナーの川内優輝さんも参加する、「かえるマラソン」の様子

基本的には福島県内在住の相談者さんが多いのですが、県外在住の方も例えば川内村に祖父母の家があって幼い頃に来たことがあるとか、「かえるマラソン」などの地域交流イベントで川内村を訪れたことがあるなど、何かしら川内村と関わりを持っていらっしゃいますね。

地域外の方との接点を広げるべく、首都圏で開催される移住フェアに移住相談ブースを出展したり、2022年9月25日に開催された「かえるマラソン」にもブースを設け、その場で相談対応できるようにしたりするなど、新しいチャレンジも行っています。

――川内村独自の移住支援制度はありますか?

豊富な湧水に恵まれていて、水道代はほとんど掛かりません

川内村では、対象要件を満たした移住者に対し、「川内村若者定住応援交付金」を交付しています。その中の「移住促進応援交付金」では、単身移住の場合は現金15万円および商品券5万円分を、世帯移住の場合は現金25万円および商品券5万円分を交付していて、「定住住宅費支援交付金」では、共益費等を除く家賃月額の1/2(上限2万円)を最大36カ月分支援しています。

川内村の大きな特徴として、村営の賃貸住宅の家賃は一番高くても3万円、民間住宅でも6万円程と、周辺市町村と比較して家賃が安いことが挙げられます。「定住住宅費支援交付金」を利用することで、新生活の家賃負担をさらに軽減させられると思います。

また、村内で住宅を購入される方に対しては、「『来て かわうち』住宅取得等支援事業補助金」の施策により、新築住宅は上限200万円、中古住宅は上限70万円の補助が受けられますので、こちらもぜひご活用いただきたいです。

――震災の影響から、川内村に対して“被災地”というイメージをお持ちの方もいらっしゃると思いますが、そのイメージと村の現状との間にギャップを感じることはありますか?

川内村は、一時は全村避難を経験しましたが、周辺市町村よりいち早く2014年10月に一部地域を除いて避難指示が解除されました。帰還時期が早かったため、その分早くから復興への取り組みが進み、現在は村内全域が避難指示解除となり、普通に生活できています。

自然の中に暮らしがあるような村なので、都会のような利便性はありませんが、少なくとも震災の影響で不便さを感じることはないので、安心してお越しいただきたいです。

――新田さんが思う、川内村の魅力について教えてください。

山々に囲まれた村なので、緑が豊かで静かな住環境があること、そして何よりも村に住む人たちの人柄が温かいことですね。川内村の人たちは、情に厚く、世話好きの人が多いです。例えば、分からないことを聞いたりすると、決して邪険にせず納得するまで丁寧に説明してくれると思いますよ。

その人柄の良さは、実際に村に来て何人かと話をすれば、すぐに感じていただけると思います。

――最後に、これから窓口を利用したい方に向けてメッセージをお願いします!

川内村は高齢化率が高く、人口が減っていく一方なので、地域の未来を担う若い世代に移住していただけたらとてもうれしく思います。

2022年10月以降には、関係・交流人口拡大をテーマにしたツアーを3回開催し、来年度以降には、移住定住ポータルサイトも立ち上げ、移住希望者への情報発信を強化していく予定です。

「川内村移住・定住支援センター」は、どなたからのどのようなご相談に対しても、丁寧に対応しますので、ぜひ一度お問い合わせください。

■川内村移住・定住支援センター(一般社団法人かわうちラボ)
住所:〒979-1201 福島県双葉郡川内村大字上川内字町分282-6
TEL: 0240-23-7040 (受付時間:9:00~17:00 年中無休 ※年末年始は除きます)
メールフォーム:https://www.k-labo.or.jp/publics/index/67/

■川内村の空き家活用や支援制度についての特集記事はこちら
https://mirai-work.life/magazine/1749/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。
写真提供:たむら移住相談室 田村サポートセンター、葛尾村移住・定住支援センター、川内村移住・定住支援センター

取材・文:高田裕美