移住者インタビュー

就職を機に浪江町へ移住。仕事でも、商工会メンバーとしても、町を盛り上げていきたい

2022年9月14日
浪江町
  • 転職
  • 移住

「縁あって今の会社に就職するまでは、福島に来たことはありませんでした」

そう語る園田大生さんは、現在、福島県浪江町に営業所を置く土建系企業、「株式会社大元」に勤務しています。会社の主な事業は建築現場の足場工事。園田さんは現在そこで、営業および業務管理の仕事を担っています。

「ここで働くようになって、足場設営の現場仕事以外に、営業なども担当するようになりました。新しい仕事を覚えることが、今はとても楽しいですね。商工会を通して地域の皆さんとの関わりもどんどん広がってきましたので、毎日が充実しています」

出身地は遠く大分県。浪江町に移住する前は東京で働いていたという園田さんが、この町で就職、移住することになったきっかけは何だったのでしょうか。現在の仕事や暮らしぶりについて話をうかがいました。

これまで培った足場工事のスキルを活かしつつ、新たな挑戦を

大分県で生まれ育った園田さんは、地元の高校を卒業したあと、単身上京。東京で親戚が経営していた土建系企業に就職し、19歳から25歳までの約6年間、工事現場での仕事経験を積みました。

仕事の内容は、鉄塔など通信設備の設営や、アンテナの設置、ケーブルの配線が多かったそうです。園田さんは次第に足場設営の仕事にも関わるようになり、現場でのスキルを一つずつ身に付けていきました。そして25歳のとき、独立して個人で仕事を請け負っていくことを決心したのです。

「東京で働いていた6年間で、工事現場で必要な資格をいくつか取得していました。それもあって1人でやってみたいなと思うようになり、一人親方のような感じで、個人で足場設営の仕事を引き受けるようになりました。現場作業は1人では難しいので、2、3人のスタッフを雇って一緒に仕事をしていたのですが、経営状態は順調でしたね」

しかし、個人での仕事を続けていくうちに、「1人でやっていくには十分に稼ぐことはできる。でも仕事の幅を広げるのは難しい…」と感じるようになったそうです。そんな時、「うちに来ないか」と誘ってくださったのが、当時雇っていたスタッフの父親で、現在、園田さんが勤務している企業の社長でした。

園田さんが入社した「大元」は、福井県に本社を持つ企業です。2011年の東日本大震災以降は福島県内での除染作業や解体作業なども請け負うようになり、2020年から浪江町にも営業所を設置しています。

業務管理では、足場の資材管理も大切な仕事のひとつ

「社長からは『今後、本格的に福島県でも足場工事の事業を展開していきたい、そのために浪江町の営業所にぜひ来てほしい』と、言っていただきました。ちょうど、1人で仕事をするよりも、企業の中で営業や事務作業なども学びながら、仕事の幅を広げてみたいと思い始めていた時期でしたので、ありがたいお話でしたね」

こうして、園田さんは2021年冬に東京から福島県へ移住。浪江町での仕事をスタートしました。

商工会を通じて町とつながる。仕事以外でも何かできる。

初めて訪れる福島県で就職し、暮らしていくことに迷いはなかったのでしょうか。園田さんは、「特にありませんでしたね」と言います。

「これまでの自分のスキルを活かす仕事ができると感じましたし、さらに新しい仕事を覚えることもできると感じましたので、不安はなかったです」

現場にでることもあれば、浪江町の営業所でデスクワークをすることも

その言葉どおり、今ではすっかりスーツも似合うようになり、新しく始めた営業や事務、足場管理の仕事も楽しんでいる園田さん。「人見知りしない自分の性格は、営業に向いているのかもしれません」と、初めての営業活動にも意欲的に取り組み、やりがいを感じています。

「自ら提案をして、それが仕事につながったときはやはりうれしいですね。それから、地域の企業に営業にいきますので、そこで地元の方と顔見知りになれたり、新たな人脈ができたり、といったコミュニティの広がりも楽しいです。社長も『地域に貢献をしていきたい』と語っていたのですが、今は、私自身もそう思うようなりました」

園田さんが浪江町に対する思いを強く持つようになったのは、町の商工会の活動に参加するようになってから。浪江町で働き始めてすぐの頃、会社から参加をするように言われて行ったという商工会の集まり。そこで、園田さんは地元住民の方々と深い関わりを持つようになりました。

「現在は、浪江町商工会青年部の一員として活動していますが、部長さんを中心に、皆さん『浪江町をもっと盛り上げていこう!』という思いがとても強いです。そんなメンバーと一緒に話し合いに参加し、町おこしイベントや町内清掃イベントなどにも携わるようになって、自分自身ももっと何か町のためにできたらと、自然に思うようになりました」

商工会のゴルフコンペに参加(園田さん提供)

現在は、東北の焼きそばを集めたイベント、「東北五大やきそばサミット in なみえ」の開催(2022年9月17日、18日実施)に向けて準備を進めている最中だという園田さん。イベントのスポンサー探しなどにも奮闘したことを笑顔で語ってくださいました。

ただ、このイベントに並々ならぬ思いを持っているものの「実は当日は出張で参加できないんですよ…」とのこと。本当に残念そうなその様子に、園田さんが浪江町で仲間を得て、やりがいを感じながら町おこしの活動に参加していることがうかがえました。

道の駅なみえで実施された「玉ねぎの皮の早むき大会」で、2位になった園田さん(右・園田さん提供)

また園田さんは、商工会青年部で実施している事業「浪江の虎」にも思い入れを持っています。この事業は、浪江町で起業した人、起業したい人、イベントを開催したい人がプレゼンテーションを通して浪江町商工会青年部や地元企業、一般参加者から協力や寄付を募るというもの。定期的に挑戦者を募ってプレゼンテーションの場を設け、商工会としてどのようなサポートができるか、などを話し合います。

「これまでには、浪江町のきれいな風景のもとでダンスの撮影をしたい、町のみんなが利用できるコミュニティーオフィスを作りたい、というアイデアもありました。そのようなアイデアを実現するためのサポート体制があることが、純粋にすごいことですし面白いですよね」

こういった場に参加するたびに、園田さんは、地元の人たちが本気で「町をもっと良くしよう」と思っていることを実感しています。そして、その仲間として一緒に活動できることに喜びを感じているそうです。

自然豊かな風景が地元に似ている浪江町で、さらに成長していきたい

東京から移住し、園田さんの住環境は大きく変化しました。そのなかで、今の暮らしをどう思っているのかと聞くと、「確かにお店が閉まるのが早いですし、夜に出歩くことは少なくなりましたが、特に困ったことはないですね」と答えてくださいました。

移住して始めたゴルフも上達中!(園田さん提供)

聞けば、緑がたくさんあって海も近い浪江町の風景は、園田さんの地元、大分に少し似ているのだとか。単身で見知らぬ町に移住してきた寂しさは、その風景と会社の同僚や商工会メンバーとのつながりによって解消されていました。

さらに、仕事でも自ら望んだ道を進めていることが、園田さんを前向きにしています。

「今はまだ覚えることがたくさんあって大変なこともありますが、営業から現場の仕事までしっかりと自分でできるようになりたいですね。そして、大規模な現場にも対応できるようなスキルを身に付けていきたいです」

緑に囲まれた営業所の前にて

移住後に、まだまだ震災からの復興作業は終わったわけではないのだ、と改めて感じたという園田さん。東京にいた時は気づかなかった震災の傷跡に気づき、自分にできることは何だろうと考えるようになったのだと言います。そして、町の人たちと触れ合う中で、「もっとこの町に人が増えるように、にぎやかになるようにしたい」という思いを強くしています。

「今後は、仕事でも地域に貢献しつつ、商工会のメンバーとも一緒に町を盛り上げる活動をたくさん行いたいですね。熱い思いを持つメンバーと一緒に活動ができることに、今、とてもやりがいを感じています」

園田 大生(そのだ たいせい) さん

大分県出身。高校卒業後、上京し土建系企業に勤務。東京・埼玉を中心に通信設備の工事や足場工事などの経験を積み、25歳で独立。当時、一緒に仕事をしていたスタッフの父から誘いを受けて、2021年冬に福島県浪江町にて株式会社大元に就職、移住。現在は足場工事の事業拡大に向けて、営業、足場工事の業務管理などを担当。浪江町商工会青年部メンバーとしても活躍中で、町おこし事業などに積極的に参加している。プライベートではペットのヘビに癒やされる日々。

取材・文:笠井 美春 撮影:及川 裕喜