移住サポーター

ここは、暮らしをデザインできる場所。『とみおかくらし情報館』が支える自分らしい移住のかたち

2025年6月25日
富岡町

移住を検討するとき、あなたは何を一番に重視しますか?「自然豊かな環境でゆったり過ごしたい」「生活の利便性」「自分らしい生き方を実現したい」など、大切にしたいことは人それぞれだと思います。

富岡町は、そんな一人ひとりの想いに応えてくれる町。そして、不安や迷いに寄り添いながら、その実現を支えてくれるのが「とみおかくらし情報館」です。今回は、移住相談員として日々さまざまな人と向き合っている竹原愛梨(たけはら・あいり)さんに、移住支援の具体的な取り組みや富岡町ならではの暮らし、富岡町の魅力について伺いました。

あなたの暮らしを一緒に考える場所

とみおかくらし情報館は、2022年3月にオープンした富岡町の移住相談窓口です。移住相談やお試し住宅の提供、さまざまな支援制度の案内から移住後の地域とのつながりづくりまで、一貫してサポートする体制が整っています。

移住相談は、対面はもちろん、LINEやオンラインでも対応しており、遠方に住んでいる方でも気軽に相談できるのが特徴です。また、お試し住宅の利用を通じて、富岡町での暮らしを実際に体験しながら住むイメージを具体的に描くこともできます。

「UターンやIターン、関東圏からリモートワークをきっかけに移住を考える方、町の起業支援制度を活用して新たな挑戦を始める方など、さまざまな背景の方が相談にいらっしゃいます」と話す移住相談員の竹原さん。実は、彼女自身も島根県松江市出身で移住者のひとり。移住を検討する方の不安や迷いに同じ目線で寄り添いながら、リアルなアドバイスを届けています。

一人ひとりにあったサポートをしてくれる竹原さん

「富岡町のある浜通り地方は、私の地元にすごく似ているんですよ。海も山もあって。でも日本海側より湿気が少なくて風が気持ちいい。雪もほとんど積もらないので、一年を通してとても過ごしやすいですね」

竹原さんにとって富岡町は、暮らしに自然となじめる心地よい場所でした。その実感があるからこそ「迷っているなら、一度来て、肌で感じてみてほしい」と話します。

お試し住宅でリアルな暮らしを体感

とはいえ、一度訪れただけでは「暮らし」はなかなか想像しにくいもの。そんな不安に応えるため、とみおかくらし情報館では暮らしの体験ができる場所としてお試し住宅を提供しています。

とみおかくらし情報館と暮らし体験ができるお試し住宅。とみおかくらし情報館の右側がお試し住宅になっている

お試し住宅では、最大4泊5日ほど町内に滞在し、町の空気や暮らしのリズム、人との距離感をリアルに体感できます。宿泊費は無料。寝具や調味料など、生活に必要な道具もひと通りそろっているので、到着したその日から暮らすように過ごすことができます。(最大6名まで利用可)

また、滞在中には、利用者の希望に応じた移住体験プログラムも実施しています。中でも希望者が多いのが町内の案内です。実際にこの町で暮らす移住専門員が、日常的によく利用している場所などを紹介してくれるため、リアルな暮らしを具体的にイメージしやすく、安心感にもつながります。

「スコーンがおいしいカフェや地元野菜の販売所、町民が手がけるアート作品のスポットなど、観光ガイドには載っていない町の魅力をご紹介しています」と竹原さん。

2階の寝室は広々としてくつろげる空間

お試し住宅はとみおかくらし情報館に併設されて独立している住居スペースなので、気になることや心配ごとがあってもすぐにスタッフに相談できる安心の環境が整っています。近くにはスーパー・ドラッグストア・ホームセンターが揃う商業施設「さくらモールとみおか」、子どもがのびのびと遊べる「富岡わんぱくパーク」もあり、町での暮らしのイメージをより具体的にふくらませることができます。

実際に体験した人からは、「町の空気やリズムが自分に合うかをじっくり確かめられた」「知らなかった制度や支援についても丁寧に教えてもらえて安心した」「本当にリアルな暮らしぶりを知るきっかけになって良かった」といった声が寄せられているそうです。日常の風景や人とのふれあいが、移住の後押しになるかもしれません。

お試し住宅はこちらの記事でも紹介しています。
体験から繋がる富岡町の「お試し住宅」

「どうありたいか」を大切にできる町

では、実際に富岡町へ移住した人たちは、どんな暮らしを送っているのでしょうか?

例えば、東京都から富岡町に移住してきた鈴木燦玉(すずき・ちやの)さんは、この春、移動販売のパン店「GOCHIPAN(ゴチパン)」をスタートさせました。大阪府出身の鈴木さんは、パン職人として東京の4店舗で修業を重ねたのち、ご主人の地元である福島県への移住を決意。町内にパン屋がないことを知り、「焼きたてのパンを届けたい」と、移動販売のスタイルでパン屋をスタートさせたそうです。週に1回、とみおかくらし情報館の駐車場でも販売。焼きたてのパンの香りとともに、新たな交流の輪も広がっています。

移動販売のパン店「GOCHIPAN」オーナーの鈴木さん

「ある日、鈴木さんが近況報告のためにふらっと窓口に立ち寄ってくれた際、『ご近所さんがパンをたくさん買いに来てくれて、嬉しくて涙が出そうだったんです』とおっしゃっていて、その言葉がとても印象に残りました。すでに“商売”としてのパン屋さんじゃなく、“町の風景”のひとつとして受け入れられているんだなと感じましたね。富岡町は、幼稚園や小・中学校、スーパーなど、日々の暮らしに必要なものが一通りそろっています。そのうえ、移住支援やチャレンジを後押しする制度もあるので、『次の一歩』を描いていける余白があるのだと思います」

一方で、「何かに挑戦しなければ」と肩ひじを張る必要はありませんと竹原さんは言います。

「『ただここに暮らす』という選択も、自分らしい暮らしをデザインするひとつのかたちだと思います。私自身、何者かにならないといけないと思い込んでいた時期がありました。でも、この町でたくさんの価値観に触れるうちに、ありのままの自分でいいんだと気づくことができたんです。誰かと比べるのではなく、自分がどうありたいかに目を向けられるって、すごく豊かなことなのではと感じています」

竹原さんの言葉からは、この町が持つおおらかさと、人をまるごと受け入れてくれる優しさが伝わってきました。「とみおかくらし情報館」は、一人ひとりが大切にしたい暮らしのかたちに向き合い、新しい暮らしへの一歩を後押ししてくれます。

自然体でいられる心地の良さ

移住後に気になるのは、人とのつながりや、ちょっとした困りごとを相談できる相手がいるかどうか。とみおかくらし情報館では、そうした不安に寄り添うため、暮らし始めた時期を問わず、町で共に暮らす人々の交流の場として町民交流会を2年前から年に2回開催しています。

「昨年度はキャンプファイヤーをしたのですが、20名ほどの参加者が集まって、とてもにぎやかな時間になりました。会社員の方や家族連れなど、普段なかなか顔を合わせない人たちがつながる、貴重な交流の場になったと思います」

キャンプファイヤーを囲みながら、世代や立場を越えて交流する参加者たち(富岡町移住相談窓口提供)

富岡町での暮らしについて、移住者でもある竹原さんは「ちょうどいい」と表現します。

「いわゆる田舎ほど距離が近すぎず、都会ほど人との関係が希薄でもない。そのバランスが、私はとても心地いいんですよね。先日もスーパーで買い物をしていたら、『今から家でテントサウナするけど来る?』と近所の人から声をかけてもらって、めっちゃ楽しそうだったので『行きます!』って(笑)。でも、無理なら『今日はやめとくね』と言える関係性もある。そういう自然体でいられる距離感が、居心地のよさにつながっていると思います」

また町内では、夜の森でのピクニックイベントやアート活動、音楽ライブイベント、盆踊り大会などが町で暮らす人々の手で大切に続けられており、そこから新しい形のイベントも生まれています。「自分たちでやってみよう!」と動き出せる空気があることも、富岡町らしい魅力のひとつです。

「移住って、新しい人生をはじめるための大きな決断のように見られがちですが、実は、ちょっと住む場所が変わったくらいの感覚でもいいと思うんです。特別な理想がなくても、自分らしくいられること。それだけで十分だと思います。少しでも気になったら、まずは気軽に相談してみてください」(竹原さん)

「『こうあるべき』ではなく『こうありたい』を大切にしたい人にとって、富岡町は安心して心をほどける居場所になってくれるはず」と竹原さんは話します。富岡町での暮らしのイメージを少しでも描いてみたくなったら、ぜひとみおかくらし情報館に足を運んでみてください。

移住専門員の班目佳小里(まだらめ・かおり)さん(写真左)と。和やかな雰囲気のふたり

■富岡町移住相談窓口「とみおかくらし情報館」
所在地:〒979-1111 福島県双葉郡富岡町小浜中央338(旧竹村写真館)
営業時間:10:00~17:00(土日含む)※休館日はサイト等をご確認ください。
TEL: 0240-23-6983
E-mail:tomiokaplus@gmail.com
HP:https://www.tomioka-iju.jp/
Instagramhttps://www.instagram.com/tomioka_iju/
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■(運営)一般社団法人とみおかプラス
TEL:0240-23-6919
HP:https://tomioka-plus.or.jp/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各市町村のホームページをご確認いただくか、移住相談窓口にお問い合わせください。
文・写真:奥村サヤ