生活・その他

廃校を活用した福島県初の複合型テレワークセンター、テラス石森

2024年2月9日
田村市
  • フリーランス
  • テレワーク

田村市で一番の商業エリアである船引町の中心部から北西へ約2km。船引町石森は、阿武隈高地のなだらかな山並に囲まれたのどかな地区です。かつてここにあった石森小学校は今、コワーキングスペースや会議スペースを備えたテレワークセンター「テラス石森」として生まれ変わり、移住者にも多く利用されています。施設の魅力や実際に利用する方の声をご紹介します。

2010年に廃校になった小学校の校舎を活用

テラス石森は、福島県初の複合型テレワークセンターとして2018年にオープンしました。使用しているのは、2010年に廃校となった旧田村市立石森小学校の校舎。とんがり屋根の時計台がかわいらしい2階建ての建物です。

校舎は廃校の翌年に東日本大震災に見舞われましたが、大きな被害を受けることもなく、今も非常にきれいな状態で使われています。震災後は浜通りから避難してきた子どもたちの仮校舎として使われていた時期もありましたが、田村市のまちづくりや移住者支援に取り組む一般社団法人Switchの手により、地域創生の拠点として新たなスタートを切りました。

コワーキングスペースを利用する際は、まず玄関を入って右側にあるオフィスで手続きを済ませます。利用時間は10時から18時までで、料金は1時間あたり200円。5時間を超える場合は1day料金となり、1日1,000円で利用できます。月額契約のプランもあり、5,500円で2名まで利用可能です。もちろんスペース内はWi-Fi完備。プリンターやモニター等の設備も揃っています。

図書室を木目調のおしゃれな空間にリノベ

コワーキングスペースは建物の2階にあります。もともとは図書室だった空間が、木目調のやさしい内装にリノベーションされました。席数は約30席。窓際のカウンター席や4人掛けのテーブル席などを、その日の気分によって選ぶことができます。ゆとりを持ったレイアウトで、周囲を気にすることなく作業に集中できそうです。利用者の多くは田村市に住む人たちですが、このゆったりとした環境を求め、近隣の郡山市から1時間程度の移動時間をかけて利用しに来る人もいるそうです。

スペースの北側の壁にはさまざまな本が並べられています。休憩時間の気分転換になりそうなものから、仕事のヒントになりそうな本まで揃っています。

テーブル席だけでなく、デッキチェアやソファーに座ってくつろぎながら話せるスペースもあり、ちょっとした打ち合わせなどにも利用できます。

仕事に疲れたら、入り口のすぐ横にあるカウンターへ。喉の渇きや小腹を満たしたい時にうれしい飲み物やお菓子等の軽食販売コーナーがあります。スペース内は飲食自由。電子レンジもあるので、持ってきたお弁当をお昼に温めて食べることもできます。

Wi-Fi環境、窓の外の景色…。集う理由はそれぞれ

コワーキングスペースの窓からは、田村市のシンボル的存在である片曽根山が見渡せます。その稜線の美しさから、別名「田村富士」とも呼ばれる名山です。

この日コワーキングスペースで作業をしていた橋本剛さんは、片曽根山が見えるこのロケーションに魅せられた一人。埼玉県出身で、田村市の起業型地域おこし協力隊員として2023年の春にご家族と一緒に田村市に移住しました。3年の任期の間に市内でキャンプ場の立ち上げを目指しており、よくここでデスクワークをしています。

「家族で移住した自分にとって、田村市はすごく住みやすい土地です。買い物に不便を感じたことはないですし、子どもの遊び場も多くて助かっています。このスペースも、利用者同士が無理に声を掛け合うような感じではなく、何度か顔を合わせているうちに少しずつ仲良くなっていく感じ。それが居心地良いです」

そう話す橋本さんの様子を微笑みながら見ていたのは、ここを定期的に使っているという中村匠汰(しょうたさん。青森県の出身で、奥様の実家がある田村市に2年前に移住しました。現在、福島市でカフェのオープンを計画しており、ここで準備作業をしているそうです。

「今住んでいる家の周辺は通信環境が弱いので、Wi-Fiが使えるここを利用させてもらっています。いろんな人がいて面白い場所ですね。月に1回ランチ会があるんですが、普段はなかなか出会う機会がないような人と話す機会もあって、関係が広がっています」

ランチ会は、テラス石森を運営するSwitchのスタッフが立ち上げました。コワーキングスペースを利用するだけでは作りづらい利用者同士の関係を繋ぎ、仕事へ結び付く可能性も生み出す場となっています。

事業の成長フェーズに合わせ個室のレンタルも可能

テラス石森では、静かな環境で集中して作業をしたい方やオンライン会議をしたい方、機密性の高い打ち合わせをしたい方に向けて、個室の会議室も貸し出しています。こちらは1時間あたり500円、1dayの場合は2,500円で利用可能です。

また、事業が順調に拡大して「個室の執務スペースが欲しい」と感じたら、かつての教室を活用したレンタルオフィスを借りることもできます。広さが異なる4タイプのオフィスがあり、2024年1月現在では最も広いA-type(56㎡、利用人数目安8名)の1室のみ空室となっていますが、タイミングが合えば理想の広さのオフィスに入居できるかもしれません。

現在レンタルオフィスに入居している会社の業種は、建築、ドローン開発、植物工場、システム関連、映像制作など多種多様。コワーキングスペースの仲間だけでなく、レンタルオフィスに入居する企業のみなさんともランチ会などを通して交流を図れるため、人脈やビジネスチャンスが広がる可能性もあります。

また、「仲間と一緒にイベントやワークショップを開きたい」というときには1階のホールが利用できます。かつては小学校のランチルームだった場所で、50名程度まで収容可能です。

移住者が安心して集う「地域のインフラ」に

テラス石森を運営するSwitchの代表、久保田健一さんは、田村市では先駆的な存在であるテラス石森のコワーキングスペースについてこう語ります。

「地域に対して何らかの思いや愛着を持っている人達が、ここを拠点に何かを始め、育て、膨らませ、持続させられるような施設になればと思い立ち上げました。スタートから6年が経ち、人が寄ってくれば何かが生まれるという風潮が、少しずつですが生まれ始めていると思います。

移住者の方、Uターンで帰って来られた方に加え、出張で田村市に来られた方など、利用者の方も年々増えていますが、混み過ぎるというほどではなく、静かで集中できる環境です。この先、コワーキングスペースを利用される方をさらに増やし、そのなかから、地域の人たちに面白いと思ってもらえる活動を生み出していければと思っています」

今、福島12市町村では、移住した人を対象にした「福島県12市町村移住支援金」(2023年度は募集終了)や12市町村内に移住・起業した人を対象に起業経費の4分の3以内、最大400万円を補助する「福島県12市町村起業支援金」(2023年度は募集終了)など、新しいことへのチャレンジをサポートする制度が整っています。Switchでは移住を検討される方の支援事業も展開しており、テラス石森の1階にオフィスを構えているので、コワーキングスペースを利用しながらスムーズに相談に乗ってもらうことも可能です。また、テラス石森には移住者向けの求人情報を扱う会社も入居しています。

フリーランスとして働く移住者の方も安心して集えるテラス石森。単なるコワーキングスペースとしての役割を超え、いまや田村市の移住者にとって心強い「地域のインフラ」ともなりつつあります。


■テレワークセンター テラス石森
所在地:田村市船引町石森舘108 
TEL:0247-61-7575
HP:https://switch-terrace.com/

※所属や内容は取材当時のものです。
文・写真:髙橋晃浩 写真提供:一般社団法人Switch