支援制度

計画的なまちづくりが進む大熊町の住宅整備状況を解説!

2023年7月28日
大熊町

大熊町では、かつての町の中心地であり2022年6月に避難指示が解除されたJR大野駅周辺を「復興の核となる拠点」と位置づけており、住宅や産業団地の整備など、計画的なまちづくりが行われています。

2023年には、保育施設や義務教育学校を集積した教育施設「大熊町立学び舎 ゆめの森」の校舎を新設。町内で再び子育てや仕事ができる環境が整えられていく中、帰還や移住で人口が増えていくことを前提とした住まいの整備が進められています。その現状について取材しました。

町が新たに集合住宅30戸、戸建て住宅20戸を整備

左側に見えるのが再生賃貸住宅、右側が子育て支援住宅

今回お話を伺ったのは、大熊町生活支援課移住定住支援係長の高橋亮さん(写真右)と、主査の二階堂雄二さん(同左)です。

まずは町営住宅の整備状況をみていきましょう。

大熊町役場前の道を東へ進むと、新しい住宅地が視界に広がります。ここは、大熊町が帰還町民向けに整備した「災害公営住宅」、移住希望者も利用できる「再生賃貸住宅」、2023年4月に子育て世帯向けに整備された「子育て支援住宅」が集合した町営住宅街です。

手前にあるのが「大熊町立学び舎 ゆめの森」で、中央に広がるのが災害公営住宅。道を挟んで右側奥に立ち並ぶのが再生賃貸住宅と子育て支援住宅です。(UR都市機構提供)
移住者も入居できる大熊町の再生賃貸住宅

災害公営住宅は92戸、再生賃貸住宅は共同住宅で40戸、子育て支援住宅は8戸。2023年6月現在どこも満室で、空室が出ても高倍率の抽選になるほど需要が高まっています。

こうした流れを受け、町が2024年4月の入居開始に向け整備を進めているのが、2022年6月に避難解除されたJR大野駅周辺、下野上地区での再生賃貸住宅です。この地区の「大野駅南住宅エリア」には集合住宅30戸、「原住宅エリア」には戸建て住宅20戸が整備される予定で、2024年1月の入居者募集開始を目指しています。

大野駅周辺・下野上地区の整備に関する計画図(大熊町提供)

このうち、原住宅エリアは新たに整備された産業団地「大熊中央産業拠点」に隣接。社宅用地も確保するなど、産業団地で働く人向けに住まいの受け皿も用意されています。

民間の集合住宅も増加中。戸建て住宅も補助金の効果に期待

「大熊町は今、とにかく住める場所が少ないことが課題です。震災前からある住宅は長いこと人が住まなかったことで補修しないと使えません」と高橋さん。町は2021年に集合住宅を修繕する補助金を創設し、200部屋近くが整備されました。現在は帰還者や原発関連企業で働く人、復興関係の事業者が借り上げているケースが多く、7割ほどが埋まっている状況です。

「民間事業者が需要を見ながら住宅の再開を進めており、車を走らせていると新築同様に改修された賃貸物件をよく見かけます」と二階堂さん。今後も町内でさまざまな施設の整備・復旧が進むことで、住宅の需要がさらに高まることが予想されます。町では、JR大野駅東の「大野駅東住宅エリア」にも、民間不動産会社が進出しやすいように情報発信していくことを検討しているそうです。

一方、戸建ての賃貸住宅は数がかなり少ない状況です。

町内はさまざまな事情で帰還を決断できていない町民が所有する、比較的新しい住宅が数多くあります。そうした住宅の活用方法の一つとして、町は2023年4月に既存の戸建て住宅を賃貸物件として貸し出す際に修繕費用を補助する制度を新設。「避難している町民の皆さんは持ち家を解体し再建するか、空き家として登録するしかなかった中で、住宅をリノベーションして貸し出すという新たな選択肢ができます」と二階堂さんは話します。

町営住宅は民間とのバランスを見ながら整備

中央の整地した場所が、集合住宅ができる予定の「大野南住宅エリア」、右奥手前側が戸建て住宅が整備される予定の「原住宅エリア」(UR都市機構提供)

最後に高橋さんに、今後の町営住宅の整備方針についてお聞きしました。

「町営住宅は、民間企業の賃貸住宅と比べて家賃が低く設定されます。そのため、住宅の需要があったからといって整備をしすぎると、民間企業の進出を妨げることにつながります。2024年に募集開始予定の再生賃貸住宅への応募数も踏まえ、バランスを見極めながら計画を立てていきたいと考えています」

町では2027年末にJR大野駅西側に産業交流施設、商業施設や社会教育複合施設が整備される予定です。産業拠点には2023年6月時点で数社の進出が決まっており、2024年にも操業が始まります。

JR大野駅西側に整備される産業交流施設や商業施設、社会教育複合施設のイメージ図(大熊町提供)

復興とともに住まいの整備が進められている大熊町。移住を考えている人は、ぜひ移住者向けの住宅補助制度も参考にしながら住まいを検討してみてください。

大熊町で移住者も活用できる住宅に関する補助制度は以下の通りです。

●家賃支援事業
5年以上の定住が誓約でき、条件を満たす人に対し、家賃(管理費、共益費、駐車場使用料、自治会費を除く)の50%を補助。※上限は月4万円で最大36ヵ月分

●住宅取得等支援事業
5年以上継続して取得した住宅に居住する等の条件を満たす人に対し、新築なら取得額の50%(上限500万円)、中古住宅は取得額の50%(上限200万円)、住宅を修繕する場合は修繕額の50%(上限300万円、移住者は250万円)を補助。

●大熊町ふるさと帰還・移住支援事業補助金交付
県内外から大熊町に転入した世帯に対し、転入から1年後に引っ越し費用を最大20万円補助。

上記3件の住宅支援制度について、詳しくは大熊町ホームページをご覧ください。
https://www.town.okuma.fukushima.jp/soshiki/seikatushien/23931.html

大熊町内の民間賃貸住宅や中古物件は以下のサイトでもご紹介しています。
https://www.okuma-machizukuri.or.jp/20211203113227

大熊町の移住に関する相談は「大熊町移住定住支援センター」をご活用ください。
https://www.town.okuma.fukushima.jp/site/iju/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については大熊町のホームページをご確認いただくか、大熊町移住定住支援センターにお問い合わせください。

文:五十嵐秋音 写真:山田康平(一部大熊町提供)