移住サポーター

チャレンジするまちの移住支援最前線②大熊町

2021年12月7日
大熊町

大熊町役場 生活支援課
課長 福原卓さん

  • 大熊町の現状は?
    2022年春にかつての町中心部の避難指示が解除され、復興が大きく前進し、住宅や仕事が増える見込み
  • 移住者をサポートする取り組みは?
    相談窓口となる移住定住支援センターが2022年春に開所予定
  • どんな人に移住してきてほしい?
    町内に職場があり職住近接を希望される方、これからのまちづくりに関心がある方、町内で新たな事業に挑戦したい方や、幼保小中一体の教育環境に関心のある子育て世代

春には町の中心部で避難指示解除

――大熊町の現状について教えてください。

東京電力福島第一原発が立地する大熊町は事故直後、町全域が「帰還困難区域」に指定されました。
2021年11月末時点で町の総面積の61.5パーセントが帰還困難区域ですが、2022年春には町の中心部だったJR大野駅周辺で避難指示が解除されます。

町では大野駅周辺を「町復興の核となる拠点」と位置付け、産業交流施設や商業施設、住宅地、産業拠点、工業団地の整備を進めています。貸しオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースを整備したインキュベーション施設も開所する予定で、新しい取り組みやビジネスを生み出す施策に取り組んでいます。

かつての町の中心部で生活ができるようになることで、居住物件が動き出し、企業誘致などにより働く場が増える見込みです。暮らす上で仕事と住む場所という重要な2つがようやく走り始め、移住者を受け入れる環境が整い始めています。

――現在どれぐらいの人が生活していますか?

震災前はおよそ1万1,500人が暮らしていましたが、2021年9月末時点の町内人口は、約900人です。町では帰還や移住者も含め、2027年までに人口4,000人の町に復興することを目指しています。

――町の復興の方針やコンセプトを教えてください。

前例のないゼロからのまちづくりになります。新たな大熊町の未来をつくっていくために、町外からの移住者や企業従事者などの「知恵と力」を活用し、若い移住者の獲得に重点を置きながら幅広く人を呼び込み、帰還住民と協働してまちづくりを進めていくことが必要です。また、居住はせずとも町と関わっていきたいと考える方々の知恵と力も借りたいと思っています。

また、原発事故によって全町避難を経験した町だからこそ、気候変動という世界共通の課題に取り組み、地域の再生可能エネルギーを活用したまちづくりに取り組もうと、2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロを目指す「2050ゼロカーボン宣言」を行いました。将来は原発事故の町ではなく、「ゼロカーボンタウンの先進地」として次の世代が誇りを持って語れるまちにできるよう、さまざまな施策を検討しています。

町でやりたいことを一緒に考え支えたい

大熊町役場 生活支援課 課長 福原卓さん

――移住定住を図る前段階として、現在は交流人口の拡大を図っているそうですね。

交流人口の拡大を図ることを目的に、2021年6月に、関東などの大学生向けに農業インターンシップを実施しました。日中はイチゴ生産会社「ネクサスファームおおくま」での作業や町内視察、夜は大熊町の住宅での生活を、1週間体験してもらいました。参加した学生たちに好評で、第2回以降も企画中です。

また、町を訪れて食を通じて生産者と交流するバスツアー・大熊フードキャンプを2021年11月に実施しました。野菜収穫体験や、大熊産食材のコース料理と町内栽培の酒米から作った日本酒を堪能していただき、こちらも大好評でした。次につなげていきたいと思っています。

ネクサスファームおおくまでのインターンシップには、関東などの大学生14人が参加しました。

――町中心部の避難指示解除以降はどのように移住促進を進めていくお考えでしょうか。

「移住定住支援センター」の設置を予定しています。「移住者に全力で寄り添いサポートする」を一つのコンセプトに、仕事や住宅、補助金制度を紹介し、安心して移住を検討してもらえる場にしていきたいと考えています。大熊町に移住を希望される方は、やりたいことがあっても暮らしに不安を抱えているはずです。そういった方の不安を払しょくし、希望を実現できるように一緒に考え、動いていく支援をしていきたいです。

――住宅の供給状況はいかがでしょうか。

住む場所は足りていないのが実状です。しかし、避難指示が解除される大野駅周辺には比較的新しい賃貸住宅が多いため、賃貸事業を再開する所有者に一戸当たり100万円の改修補助金を支給するなど整備を進めています。家賃の低廉化も期待しているところです。その他、町でも2023年度に再生賃貸住宅をいくつか設ける予定です。

戸建て住宅の整備では、町の「ゼロカーボン宣言」を踏まえ、ZAH住宅(省エネと創エネ(太陽光パネル等)によってエネルギー消費量を実質ゼロにする住宅)の購入、住宅の省エネリフォームに対する手厚い補助を検討しています。また、電気自動車を購入する際の補助も検討しています。

――産業の面ではいかがでしょうか。

かつては原発という巨大な産業があり、今は廃炉が一つの産業となっています。しかし、それもいつかは縮小していきます。そのような状況を踏まえて町では新たに主幹となる産業の創出に向けた調査を行っています。

また、中央産業拠点を整備し、そこに立地する企業の募集と選定にも取り組んでいます。ただ、雇用確保が課題の一つであり、人手に不安に感じている企業もあるようです。そういった意味でも働き手の力が必要であり、多くの人に働く場として大熊町を選んでもらえるような取り組みが必要だと考えています。

――お子さんがいらっしゃる世帯への支援はどのようなものがありますか。 医療費は18歳まで自己負担無料です。ひとり親の場合は、子どもが18歳になるまで親の医療費自己負担が1,000円となる助成を受けられます。出産や就学時の祝い金、貸与制奨学金や通学の補助もご用意しています。2023年春には0~15歳まで通うことができる幼保小中一体の施設「学び舎 ゆめの森」が開設されます。「極小規模校」の強みを活かし、一人ひとりに最適化した学びの場を提供できるよう準備を進めています。

移住者と帰還住民で一緒に復興とまちづくりを進めたい

――どのような方に移住してきてほしいと考えていますか。

町は一人でも多くの人から知恵と力を借り、移住してきた人と帰還住民で一緒に復興とまちづくりを進めていきたいと考えています。そのためには多種多様な方々のパワーが必要です。

今後は、町内に職場があり一時的に大熊町へ来ている方にさらに町への関わりを深めてもらい、移住や定住につなげていきたいと考えています。また、スキルや熱意を発揮しまちづくりの推進役となってくれる方、新たな事業に挑戦したい方も求めています。新設される幼保小中一体の教育環境に関心を持つ子育て世代にもぜひ来ていただきたいです。

――まさにこれから復興や移住支援がスタートするところですね。

そのとおりです。移住者と既住者のコミュニティづくりを続け、移住者も安心して住み続けられるようサポートしていきたいです。正直、手探りになってしまう点もあるかとは思いますが、適切なサポートができるよう不断の努力を続けていきます。

また、近隣市町村と連携した移住促進も進めていきたいと考えています。希望を聞き取った際に他の自治体のほうが移住する方の希望に合致する場合は紹介するなど、柔軟に対応していきたいです。自治体同士が連携して地域全体が活性化することが一番ですからね。

※情報は2021年12月現在のものです。


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