足を運び地元の人や文化に触れれば、いいところがたくさん見えてくるはず
- 移住してよかったこと
- 地元の方や他の移住者があたたかく声をかけてくれる
- 移住先で実現したいこと
- 移住者目線で浪江町の魅力を発見し、映像で発信していきたい
- 移住を考える方へメッセージ
- まずは足を運び地元の人やモノに触れてほしい
2020年4月、岩手県から奥様の地元、福島県浪江町に移住した及川裕喜さん。You Tubeなどを参考に独学で身につけた映像制作の技術を活かし、移住を機に個人事務所「Link Films」を立ち上げました。
今回はそんな及川さんに、移住の経緯から浪江町での日々の生活のお話までお聞きしました。
慣れ親しんだ町の風景が浪江にもあった
――岩手県から移住されたそうですね。具体的にどのあたりにお住まいだったのでしょうか?
陸前高田市という三陸海岸に面した場所です。当時は地元の施設でリハビリの仕事をしていました。
――浪江町への移住を考えたきっかけを教えていただけますか?
浪江町出身の妻から「故郷で働きたい」と相談を受けたのがきっかけです。陸前高田で妻と暮らしていた当時、妻は宿泊施設で広報の仕事をし、地元の方と多く関わっていました。陸前高田も震災では甚大な被害を受けましたが、そんな地元を盛り上げようと頑張る方々の姿を見て、妻も浪江に関わる人生を送りたいと思ったようで、たびたび浪江に足を運ぶようになっていました。
1年間限定という約束で妻だけが浪江で生活していたこともあったのですが、その期間を経てもやはり「地元で働きたい」という妻の意志は固く、一緒に移住したいと相談を受けました。半年ほど悩みましたが、リハビリの仕事を一通り経験し新しいことを始めたいとも思っていたので、私も共に移住することを決意しました。
――移住前と移住後でイメージが違った点はありましたか?
ありませんでしたね。というのも、浪江も陸前高田も海に近いので気候や雰囲気が似ているんです。夏は暑くなり過ぎませんし、冬も雪はあまり降りません。同じ東北人ということもあってか、地元のみなさんの言葉のなまりがわからないということもありませんでした。
――海沿いの町出身の及川さんですから新鮮な海の幸が食べられるのも魅力ですね。
そうですね。幼い頃から海のものはたくさん食べてきましたが、地元のものに負けないぐらいとても美味しいです。
自分が発信することで浪江の魅力がより伝われば
――現在フリーで動画制作のお仕事をされていると聞きました。具体的にはどういった動画を制作されていますか?
主に観光に関する動画や企業のPR動画を作っています。浪江町では妻が地元ということもあり知り合いが多く、自然と私も顔見知りになることが多いので、そういった方々からお仕事をいただくこともあります。
――浪江では移住者と地元の方の交流などはありますか?
若い人たちが声を掛け合って防災ワークショップを開催するなど、積極的に交流する場をつくっています。移住者と地元の人がフラットな関係を築けているのが浪江の大きな魅力ですね。私はどちらかといえば自分から人とのつながりを作るのが苦手なのですが、そんな自分にもみなさん声をかけてくれるのでとてもうれしいです。
――人とのつながりができる場があると、移住者にとっては安心ですよね。
そうですね。人とのつながりの中から仕事の話をいただくこともあるので、交流の場にはこれからも積極的に参加していきたいと思います。
――お仕事で町内の様々な場所を訪ねていると思いますが、及川さんのおすすめオススメの場所はありますか?
桜並木が綺麗な請戸川リバーラインはが特におすすめオススメです。ヒマワリ畑やそば畑もあるので季節ごとに移り変わる景色を楽しめます。私のYou Tubeチャンネルで浪江の景色の動画をアップしているのでぜひ見ていただきたいです!
――地元の人では気づかない魅力もきっとあると思いますので、及川さんの活動は地元の方々にとっても新しい発見につながるかもしれないですね。
そうだといいですね。魅力を発信することで地元の方がより誇れる町になればうれしいです。
足を運んで見てほしい、ネットじゃ見つからない町の魅力
――震災から10年が経ち、町にはだんだんとお店も増え、賑わいが戻ってきているように感じますが、普段の買い物で不便に感じることはありますか?
大型スーパーが町内にあるので日用品を買うことに困ることはないですね。町内で買えないものがあれば車で20分ほど走り隣の南相馬へ行きます。
――映像クリエイターとしての今後の目標を教えていただけますか?
浪江町を含むこの周辺の地域のことをインターネットで調べてみると、未だに原子力災害の被災地といったネガティブな情報が多い状況ですよね。正直私自身、移住する前は浪江町に対して「本当に移住しても大丈夫かな?」と少し不安に感じていました。しかし、いざ住んでみるとそうした不安はだいぶ払拭されましたし、インターネットからは見えてこない町のいいところがたくさん見つかりました。美味しいものや綺麗な景色など、そういった浪江のさまざまな魅力を、移住者ならではの視点を活かして発信してきたいです。
――最後に、今移住を考えられている方々に向けてメッセージをお願いします。
少しでも移住に興味を持ったら、ぜひ実際に足を運んでいただきたいです。浪江町のある浜通りは、まだ立ち入りができない地区もあったりして、復興があまり進んでいないイメージもあるかと思います。しかし、その部分だけをみてネガティブなイメージを持ってほしくないんです。
足を運び、地元の人や文化に触れてみると、きっといいところがたくさん見えてきます。足を運んだからこそわかるその土地の美味しいもの綺麗な景色を味わってから、じっくり移住を考えてみるのもいいのではないでしょうか。
及川 裕喜(おいかわ ひろき) さん
岩手県陸前高田市出身。地元や地元で約10年にわたり作業療法士として働いた後、2020年に浪江町に移住。映像制作事務所「Link Films」を設立し、浪江の魅力を発信する動画や地域企業のPR動画などを制作している。
※内容は取材当時のものです。
文:永井章太 写真:佐久間正人