生活・その他

「サッカーの聖地」Jヴィレッジは技術と心を磨く恵まれた練習環境【楢葉町・広野町】

2024年10月28日

福島県の浜通り中部、楢葉町と広野町にまたがる「Jヴィレッジ」。Jリーグ公式戦やサッカー日本代表の合宿地として利用されているだけでなく、サッカースクールとして浜通りを中心に選手が集まってきます。国内屈指の環境でサッカーができて、高レベルなプレーを見れる機会も多い、そんなJヴィレッジスポーツクラブ(以下、JヴィレッジSC)にお邪魔して子どもたちがどんなふうにサッカーに向き合っているのか聞いてきました。

幅広い年代を育成するサッカークラブ

JヴィレッジSCは、中学生年代のジュニアユースと小学1年生から6年生を対象としたジュニアの「クラブチーム」、幼児から小学6年生まで幅広い年代を対象にした「スクール」の2つで構成されています。2024年8月時点でジュニアユース27名、ジュニア67名、スクール48名が日々練習に励んでいます。
案内してくれたのは、ジュニアの監督を務める齊藤真悟さんです。青森県弘前市出身で、小学校教員を20年務めた経験があり、子どもたちへの指導は折り紙付きです。

楢葉町や広野町エリアの人口増加によって、JヴィレッジSCに通う選手たちも増えてきているといいます。

「近年、ようやくまちが元の姿に戻ってきています。ただ、生活が元通りになったのかというとそうではありません。戻ってきたご家族の中には、子どもに習い事をさせたいけどそういう場所がない、もしくは習いたいものがなく、とりあえずサッカーができる環境があるから通わせてみようと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか」

南相馬市やいわき市など、遠方の地域からのニーズも高く、練習は学校が終わった後なのでバスでの送迎も行っているそうです。

ジュニアの3年生はボールコントロールを重視した練習が中心

最高クラスの環境で技術と心の育成をサポート

JヴィレッジSCの環境面でのメリットは、なんといっても美しい人工芝で練習ができること。屋内練習場も利用できるため、天候に左右されず練習できるメリットもあります。

「スポーツ少年団やクラブチームの多くは、学校のグラウンドで練習しているところがほとんどです。土のグラウンドはイレギュラーにボールが弾むこともあり、上達に時間がかかる場合もあります。けがのリスクも高まります。反面、芝のグラウンドはボールの転がりもスムーズ、イレギュラーに弾むことも少ないので、ボールの扱いやパスの精度は向上します」と齊藤さん。

恵まれた施設で小さい頃からサッカーに慣れ親しむことは、技術の向上だけではなく、心の成長にもつながるといいます。

「選手たちにいつも言っていることは、『日本一恵まれた環境でサッカーができることを、当たり前に思わないこと。上手になりたい、技を磨きたいという気持ちを忘れずに、感謝してサッカーをやろう』ということです。恵まれた環境が当たり前だと勘違いしてしまうと、選手として人として感謝する気持ちを失ってしまいます。サッカーの技術よりも、感謝する気持ちや自分が恵まれていることに気づく大人になるように、心の育成にも努めています」

ジュニアの小学1・2年生はボールに慣れることから始まります

ハイレベルなプレーを身近に感じられる環境

「私たちには日本一恵まれた施設でサッカーができる楽しさや、サッカーのおもしろさを伝えていく役目がある」と語る齊藤さん。Jヴィレッジでは、JヴィレッジSCのほかにも、巡回指導として年に数回、楢葉町や広野町の保育施設を中心にサッカー教室を行い、小さい頃からサッカーに親しめる機会を設けています。また、楢葉小学校内にある放課後児童クラブでも月2回、サッカーを教えています。そうした体験の後にスクールに入会した子どももいるのだそう。

いわき市在住でジュニアの主力選手として活躍する、小学6年生の伊藤太陽さんも体験会から入会した一人。「5歳の時、スクールを見学して、サッカーっておもしろそうだと思って入りました。練習が楽しいので移動は大変ではないです」と話します。

ジュニアの中心選手として活躍する伊藤さん(左)

JヴィレッジSCのOBのなかには、全国大会に出場する強豪、山形明生高校(山形県)や仙台育英高校(宮城県)でプレーしている選手もいます。サッカーJ2のジェフユナイテッド市原・千葉でプロ契約を果たした齋藤来飛(らいと)選手(現ラインメール青森)も2016年から3年間所属していました。震災後の休止期間があっても選手たちを育成し続けた活動が実を結び始めています。

Jヴィレッジは2024年から全国高等学校総合体育大会(インターハイ)サッカー競技大会の固定会場となり、全国から集った強豪校が熱戦を繰り広げています。ハイレベルなプレーを間近で見ることができる貴重な機会になっています。

「全国から集まった強豪校の選手たちが大舞台で活躍する姿はすごく格好よかった」と伊藤さん。高校最高峰の戦いの熱を直に感じたようで、「もっと練習して自分も全国大会に出られるような選手に成長して、将来はプロのサッカー選手になりたい。目標とする選手は日本代表の遠藤航選手とJ2いわきFCの下田栄祐選手です!」と興奮気味に話してくれました。

またJヴィレッジは、公益財団法人日本サッカー協会による選手のエリート教育機関「JFAアカデミー福島」の活動拠点にもなっています。男子は中学3年間、女子は中高6年間のプログラムで、特に女子は日本代表に選出されている選手も多くいます。これまでにJヴィレッジSCから加入した選手はいないといいますが、近くで練習を見かける機会もあることでしょう。こうした刺激のある環境に身を置くことは、子どもたちの目標が見つかるきっかけになるかもしれません。

サッカーに打ち込むにはこの上ないほどの環境がある楢葉町・広野町エリア。いわき市に移住して8年となる齊藤さんも、福島での暮らしを楽しんでいるそうです。

「出身の弘前市に比べ、雪もほとんど降りませんし暖かい。雪国育ちの私からすれば最高です。夏も涼しくて過ごしやすい。新鮮でおいしい魚介類がいつでも食べられるのがいいですね。町も復興が進み、整ってきました。暮らしやすくて地元に帰りたくなくなってしまいます」

温暖で暮らしやすい気候の楢葉町と広野町には、国内最高クラスの施設で子どもたちがサッカーに打ち込めるJヴィレッジがあります。施設は常時、開放されていてレストランやショップ、蹴球神社などの見どころもあります。見学を兼ねて足を伸ばしてみてはいかがでしょうか。

■Jヴィレッジスポーツクラブ
所在地:〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字美シ森8
https://j-village.jp
<平日の練習日>
・ジュニアユース(13~15歳)…週3日(火・木・金曜 19:00〜21:00)
・ジュニア(小学1年生~6年生)…週2日(水・金 17:30〜19:00)
・Jヴィレッジスクール(幼児~小学6年生)…週2日(火・木曜 17:30~18:20)
<入会・見学に関するお問い合わせ>
TEL 0240-26-0111

※内容は記事公開当時のものです
文・写真:和田学