移住サポーター

チャレンジするまちの移住支援最前線⑫森雄一朗さん(ならはみらい)

2022年3月22日
楢葉町
  • 移住相談窓口

一般社団法人ならはみらい
移住促進係 森雄一朗さん

  • どんな経緯で移住支援に携わっているの?
    大学時代に楢葉町で情報誌を作る事業などに携わったことをきっかけに移住
  • 相談を受ける際に心掛けていることは?
    相談者のものさしに合った情報をお伝えし、正しく移住の決断をしていただく
  • 今後どんなことをしていきたい?
    移住者や町民に「このまちに住み続けたい」と思ってもらえるような取組

大学時代に通った町。その変化を見逃したくなかった

――出身は群馬県だそうですが、楢葉町と関わるようになった経緯を教えてください。

大学生のころ、「人見知りの自分を変えたい」と考え、所属していた復興支援団体の活動で月1回のペースで楢葉町に通い、町役場や楢葉町のまちづくり会社である一般社団法人ならはみらいなどにサポートをしてもらいながら、町民の方達と情報誌を作る活動などをしていました。その時に、学生の私たちに対しても対等に、同じ方向を向いて活動してくださる町の方々の存在がすごく大きかったんです。当時は、ならはみらいが借り上げている住宅に泊まっていたのですが、近所の方にも本当のご近所さんのように接していただき、「受け入れてもらえた」という印象をもつことができました。人見知りだった自分を変えることもできましたし、バイトしてサークルに行って遊ぶ、というだけではない、熱中できることを見つけることができました。

――移住を決めたきっかけは何だったのでしょうか。

いつか楢葉町で暮らしたいと思いながらも就職活動をし、一度は地元の銀行に就職しました。しかし、私が就職した2018年の楢葉町は、現在ならはみらいが事務所を構えている「みんなの交流館ならはCANvas」ができたり、Jヴィレッジの一部施設が再開したりと、町がどんどん変化していく時期でした。就職後も休日には定期的に楢葉町に通っていましたが、学生時代のように、町の変化の中に一緒にいることができないような気がして、もどかしい思いを抱いていたんです。移住できなかった時の後悔と、移住して失敗する後悔をはかりにかけた結果、半年で銀行を辞め、移住する決意をしました。

――現在のお仕事について教えてください。

ならはみらいで移住や定住、関係人口の創出に関する事業や、空き家・空き地バンクの運営などを担当しています。私が所属する移住促進係は2021年7月に立ち上がったばかりで、移住に関する仕組みづくりや情報提供を行っています。 関係人口の創出としてはこの1年ほど、大学のビジネスコンテストで出たプランの実証の舞台として、廃業した旅館の記憶を模型として残していく取組のコーディネートを行うなどの連携事業を進めてきました。私自身、大学時代の活動から移住への思いが芽生えた当事者でもあるので、この取組で学生が楢葉町と深く関わるきっかけになることを期待しています。

「正しい決断」のために適した情報を伝えたい

――移住相談窓口は2022年4月からはならはみらいに一元化されます。

一番は、相談者に適した情報をお伝えすることを大切にしたいと考えています。移住後のミスマッチを防ぐためにも、相談者のものさしに合った情報をお伝えし、正しく移住の決断をしていただくことが、我々の役割だと思っています。移住相談窓口は、2022年夏にかつてダンススクールだった建物をリノベーションしてオープンする予定です。

――これまで森さんが接してきた移住検討者の方、また実際に移住された方の年齢層はどのぐらいですか。

20代後半から30代の方が多いですね。最近では若いUターンの方が目立っていて、同世代として心強く感じています。

――空き家バンクのご担当でもあるということですが、現状はいかがでしょうか?

古い家の多くは震災後に取り壊されてしまったため、空き家は少ないですが、一方で空き地は増えています。町内では不動産会社の事業展開も活発ですが、ならはみらいでは住まいに関する情報を調整する役割も担っており、最近も町内の事業所から「新しく採用する方の住宅を探している」という問い合わせを受け、不動産会社や町役場、貸家を持っている個人の方に連絡して調整した事例もあります。

――仕事選びの状況としてはいかがでしょうか。

求人数自体はかなり多いです。ただし、飲食系や工場、警備の仕事が多い一方でデスクワークは少ない状況です。来年度には町内の求人を集めたウェブサイトを立ち上げる予定で、今は情報の収集をしています。募集をしている企業の社長や採用担当者のインタビューを盛り込んで、働くイメージが湧くようなサイトを目指しています。

「この町に住み続けたい」と思ってもらえる取組を深めていく

――念願の移住。実際に暮らしてみていかがでしょうか?

例えば缶ゴミは月に一度しか収集されないなど、実際に生活してみないと見えてこない不便さもあります。あとは、一緒に飲みに行けるような同年代は少ないと感じますね。銀行員時代は同期が100人以上いて、配属先にも年齢が近い先輩が多かったので、正直ギャップはあります。同い年の方に会う機会があると、かなり盛り上がります(笑)。

一方、小さな町ならではのことかもしれませんが、生活でも仕事でも、何かしらの声を上げると、どこかしらでその声を吸い上げてもらえるような空気感があります。困ったことがあれば頼れる方が多く、いろいろと面倒を見てくれるので、心強いですね。

――移住して良かったと感じるのはどんな時ですか。

どんな仕事をするにしても、ターゲットになる誰かしらの顔が浮かんできます。どのようなことをしたらその人達に喜んでもらえるか、具体的なイメージを持ちながら考えられることがやりがいになっています。

――楢葉町の魅力についてはどのように感じますか?

全部が「ちょうどいい」ことかなと思っています。都会でもないし、田舎でもないし、そこまで不便でもない。人はもちろん温かいですが、近所の方にガツガツ干渉されるわけでもない。いろんな面でちょうどいいまちだと思います。

――今後予定している施策について教えてください。

移住して来られた方の中には、スノーボードがうまいとか、マーケティングのノウハウを持っているとか、何かしらの強みを持っている方が多いので、移住者の方に講師になっていただき、いろいろな講座を開けたらいいなと考えています。移住者から吸収したノウハウを取り入れることで町の大きな変化につながることもあると思いますし、知識を共有することで移住者と元々の町民のみなさん、また移住者同士のつながりが少しずつ大きくなっていくような、関係づくりに貢献できる企画を練っていきたいと考えています。

――今後どんなことに挑戦していきたいとお考えですか。

これからもさまざまな方と関わることで新しい風を取り入れていき、町民や町に関わってくれる方に「ここに住んでいてよかった」「住み続けていてよかった」と思ってもらえるような取組をさらに深めていきたいです。


一般社団法人ならはみらい
住所:〒979-0604 福島県双葉郡楢葉町大字北田字中満260番地 みんなの交流館ならはCANvas内
Tel:0240-23-6771
https://narahamirai.com/

■移住相談窓口 ならはスタートアップ・プレイス CODOU/コドウ
住所:〒979-0513 福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字堂ノ下6番4
Tel:0240-23-6271
https://try-naraha.jp/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。
文:五十嵐秋音 写真:杉山毅登