移住サポーター

チャレンジするまちの移住支援最前線④浪江町

2022年1月14日
浪江町
  • チャレンジするまち

浪江町役場 企画財政課
課長補佐兼定住推進係長 礒貝智也さん

  • 移住の現状は
    町内人口のうち約3分の1が移住者
  • どんな人に移住してもらいたいか
    事業などで新たなチャレンジをしたい方、町内企業で働く人、新規就農者
  • 具体的な移住支援策は
    相談窓口担当者による町内案内や最大1ヵ月間の「お試し暮らし」など

約5年で町内人口の3分の1が移住者に

――浪江町にはどのぐらい移住者の方がいらっしゃるのでしょうか

浪江町は2017年3月に避難指示が一部解除され、住民の帰還が始まりました。町内の居住人口は震災当時約2万1,000人だったのに対し、2021年12月時点では約1,700人です。現在の町内人口のうち、およそ3分の2が帰還された町民の方で、3分の1が移住者となっています。日本全国どこにもない比率なのではないでしょうか。

――それほどまでに移住者が多い町で、移住者と帰還町民との関係性についてはどのように見ていますか。

町民のみなさんは「移住者にどんどん来てもらい、町を元気にしてもらいたい」と思っていると感じています。浪江町は昔から飲食店などが多く、もともと町外から人を受け入れる雰囲気が根付いています。

私自身も東日本大震災後に移住してきましたが、よく聞く地元のしがらみのようなものは感じたことがなく、暮らしやすさを感じています。

――浪江町の特徴についてどのように捉えていらっしゃいますか。

町民のみなさんは「この地で楽しいことをどんどんみんなでやっていきたい」、「足りないものがあれば自分が実現させる」などと、町を盛り上げようとしている方が多いと感じています。そうした「人の魅力」から、町にわくわく感が溢れています。

事業者の再開支援はもちろんですが、町では新しい企業の誘致にも力を入れています。進出を考えてくださる企業には「ゼロからのまちづくりの段階にある浪江町は、新しいことにチャレンジできる環境がある」と伝えています。例えば水素の利活用に向けた実験が進められていたり、2021年3月には無印良品様が全国で初めてとなる道の駅への出店を「道の駅なみえ」で実現したりしていただいてます。新しいことが実現できるこのような雰囲気は、個人で新しい事業を始めたいという方にも同様のことが言えると思います。

――移住してきてほしい方のイメージはありますか。

町では2035年までに住民帰還と移住による約8,000人の目標人口を掲げており、新たな産業や仕事の創出により新しいチャレンジができるまちを目指していきたいと考えています。

町は移住のターゲットとして、3つを掲げています。1つ目は、この地域の社会課題を解決し強みに変えるための新しい取り組みや事業で、何らかの新しいチャレンジをしたいと思っている方。東日本大震災と原発事故で被害を受けた浪江町は社会課題の多さという意味では他にはない環境ですので、様々な角度で新しい挑戦ができるフィールドが広がっているのではないかと思います。

2つ目は町内の企業で働く方です。町では、雇用の場の創出のため産業団地を4つ整備し、さらに5つ目の産業団地の設計に着手している最中ですが、全体の8割ほどが埋まってきている状況です。これらの新設される工場や企業では約700人もの人材が求められています。

3つ目は新規就農者です。浪江町は農業のまちでもあり、復興のためには基幹産業の再生が必須です。徐々に農業の復興が進んでいますが、他地域と同様に高齢化や後継者不足の課題と相まって農家同士が互いに支え合う地域の仕組みが難しくなりつつあります。 この3つがターゲットとなりますが、いずれにしても新しいことをやろうとしている方を積極的に受け入れていきたいです。

「お試し暮らし」で町の生活を1ヵ月体験

「お試し暮らし」で利用できる「いこいの村なみえ」のコテージ

――町の移住支援について教えてください。
2018年からまちづくり会社「一般社団法人まちづくりなみえ」に委託して移住相談窓口を設置しています。町による移住促進政策が本格化した2021年度からは業務内容を拡大し、相談に訪れた方がワンストップで住まいや仕事の相談ができるような体制を整えました。移住支援で最も重要なことは、住まいと仕事をうまくマッチングできるかだと考えており、その点を今後も強化していく予定です。

相談窓口では、移住相談者の要望に沿って町内を案内する取り組みも行っています。宿泊する方には1人1泊当たり2,500円を5泊まで補助する制度もあります。

2022年初旬には、移住希望者向けの新しいウェブサイトも公開予定です。移住を考えたときに検討しなければならない事柄を分かりやすく伝えるなど、移住希望者の疑問に答えるウェブサイトを構築していきたいです。

――「お試し暮らし」による支援もあるとか。

実際に浪江での暮らしを体験してみたいという方向けに、2021年7月から「いこいの村なみえ」内のコテージで「お試し暮らし」ができる制度を始めました。1ヵ月30泊分を2万円で提供しています。2021年12月までに4組が利用し、そのうち2組が移住しました。実際に町で生活してもらうことで、移住後の暮らしがイメージしやすくなるのではないかと感じています。 今後は「お試し暮らし」の期間をより充実した時間にしてもらうために、就労体験ができる仕組みをつくっていきたいです。移住を希望される方は様々な職場を見てみたいでしょうし、企業にとっても雇用する際の安心感につながるかもしれません。現在、町内で求人を出している企業と準備を進めています。

移住希望者と町民が交わるきっかけをつくりたい

――住宅の供給状況はいかがでしょうか。

復興関連事業の関係で、年度が変わるタイミングに賃貸物件の空室が増える傾向があります。町内の不動産会社からは、町内で働く人を700人増やしたいという町の計画を基にしても対応できるとの回答をいただいているため、この先も住宅の供給能力はあるとみています。

移住者を対象とした住宅支援では、賃料を月額1万円補助する制度があります。また、賃貸住宅で暮らす18歳未満の子どもがいる町内世帯には、3万円を上限に家賃の半額を支援しています。

――子育て支援についてはいかがでしょうか。

移住者に限らず、第2子までは出産祝い金を1人当たり5万円、第3子誕生時には20万円を支給する制度があります。また、小・中学校の制服代や学用品代などは町が補助しています。現在は浪江高校が休校中のため町内の高校生は周辺の広野町や南相馬市まで鉄道やバスで通う必要がありますが、公共交通機関の利用料金を補助することで負担軽減を図っています。

――起業支援で計画していることは何かありますか。

現在、JR浪江駅前の再整備事業を進めています。その中にコワーキングスペースやレンタルオフィスを作る計画があり、個人事業主の方や浪江で事業を起こす方の需要に応えられる場所にします。起業セミナーの開催も検討しています。

――今後やってみたい支援についてお考えを教えてください。

2022年度は、移住希望者と町民をつなげるための交流の場を作ります。2021年度に「地域サポーター制度」を検討し予算化していましたが、新型コロナウィルス感染症の影響で実施ができていません。新型コロナウィルス感染症の状況を見つつ、2022年度中に事業を軌道に乗せて移住希望者と町民の関係性を築くきっかけづくりをしたいです。


浪江町役場 企画財政課 移住推進係
〒979-1592 福島県双葉郡浪江町大字幾世橋字六反田7-2
Tel:0240-23-5764
https://www.town.namie.fukushima.jp/soshiki/2/

一般社団法人まちづくりなみえ
〒979-1513 福島県双葉郡浪江町幾世橋字大添52-1
Tel:0240-23-7530
Mail:info@mdnamie.jp
http://www.mdnamie.jp/immigrat/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。