チャレンジする人

飯舘村で手にした、自然の中で暮らし働く夢

2022年3月7日
飯舘村
    • 木こり
    • 林業
    • 移住のきっかけは?
      木こりとして、自然豊かな場所で暮らす夢を叶えたいと思ったから
    • 移住して良かったと感じるところは?
      身近に手つかずの自然や良質な水がある
    • 移住を希望される方に向けてメッセージを
      最初から定住を前提とするのではなく、まずは気軽に移住してみてはいかがでしょうか

    宮城県仙台市から飯舘村に移住し、林業に従事する佐々木淳一さん。幼い頃から山が遊び場だったという佐々木さんは、考え方もまさに自然体。移住後の生活の変化への不安よりも「木こりになりたい」という自分の夢を叶えるべく移り住み、里山暮らしを満喫しながら働いています。そんな佐々木さんに、飯舘村での暮らしについてお聞きしました。

    災害の現場で活躍する木こりの姿に惹かれ自らもその道へ

    ――以前から自然豊かな場所で暮らしてみたいと思っていたそうですね。

    仙台のまちなかの出身ですが、幼い頃から友達と山に遊びに行って「秘密基地ごっこ」や「探検隊ごっこ」をするような、自然が大好きな子供でした。大人になってからもキャンプや釣りなど自然と接するレジャーを楽しむうちに、「いずれは自然の中で暮らし、働きたい」という憧れを持つようになりました。

    自然の中で暮らしたいと思っていたのにはもう一つ理由があります。以前、仙台で大通りに面した家に住んでいた時、車の音や歩行者の話し声が気になって寝られない日が何度もあったんです。そんな経験から、日常的に「静かな里山で暮らしたい」という思いが深まっていきました。

    ――移住を考えるようになったきっかけを教えて下さい。

    きっかけは災害ボランティアとして訪れた千葉県での経験でした。木こりの方々が倒れた木を撤去するためにチェーンソーで切断する姿を目にしたんです。瞬間的に「かっこいい。自分もやってみたい」と思いました。それ以降、林業に携われる場所や自然に囲まれた住まいを探し始め、たどり着いたのが飯舘村でした。飯舘村には、その両方を得られる場所がありました。2020年に思い切って移住を決断し、現在は森林組合の一員として働いています。

    ――新しい土地でのお仕事や暮らしは慣れないこともあると思いますが、いかがですか?

    移住前、仙台では携帯電話の基地局を設置する作業員として働いていました。アンテナの取り付け工事で高さ約40メートルもの鉄塔に登ることもあったため木こりの仕事にはすぐ慣れることができると思っていましたが、実際には高所作業は行わないと分かり、経験は活かせていません(笑)。それよりも仕事を教えてくれる地元の組合員の方々とうまく馴染めるかどうかが不安でしたが、「若い人が来てくれた!」と歓迎してくれたので、その不安はすぐに払しょくされました。元農家の組合員の方から野菜のおすそ分けをいただくこともあります。

    私が移住したのは39歳の時でしたが、当時の森林組合では私が唯一の30代。高齢化が進んでいるのが現状で、今も中心となり活動されているのは60代の方です。70代で現役の先輩もいらっしゃいます。

    ――実際に木こりのお仕事をされていかがでしょうか。

    一人前の木こりになるには3年かかるといわれています。今、その半分ぐらいの月日が経ちました。木を倒すためには傾きなどを見極めて倒す方向を考えなくてはならないのですが、木が腐っていると予定通りいかないこともあります。また、失敗して木が縦に裂けてしまうと木材としては使い物にならなくなってしまうので、見極めが必要です。そのようなところはまだまだで、難しいところですね。

    自然に囲まれた理想の里山生活を実現

    ――住居の確保はどのようにされたのでしょうか。

    村役場の移住定住窓口で相談し、一軒だけその時たまたま空いていた住宅を借りることができました。森林組合の仕事が始まるタイミングでもあったので、選ぶ余地もなくそこに住むことを決断しましたが、理想としていたのどかな里山生活ができているので結果的に満足しています。村役場では最近「空き家バンク」を立ち上げたようなので、村内での住まいの選択肢は徐々に広がっていくのではないでしょうか。

    ――どんなところに飯舘村の魅力を感じますか?

    自然の豊かさと、野生動物の生活が身近に感じられることです。仙台で暮らしていた頃は見たこともないような希少な野生生物を何度も見かけていますが、豊かな自然と良質な湧き水のおかげでそのような環境が作られているのだと思います。自宅の生活用水はすべて湧き水でまかなっているので水道代は無料ですし、おいしい水がいつでも飲めます。

    ――移住を決めた際に、ご家族やご友人の反応はいかがでしたか。

    避難指示が解除されて復興が着々と進み、帰還者の方や移住者の方が増えてきているという情報は入ってきていたので、ネガティブなイメージはなかったようでした。

    ――日々の生活の中で村での暮らしに不便を感じるようなことはありませんか?

    特にありません。村内にお店が少ないことはわかっていましたし、ある程度の不便は覚悟のうえで移住をしました。コンビニもありますし、道の駅に行けば安くて新鮮な野菜も手に入るので、食事に関しても困りません。まとまった買い物がある時は、車で約20分の川俣町や東北中央自動車道の無料区間を使って約40分の相馬市まで行きます。

    移住したいなら勢いが大切

    ――これからの目標について教えて下さい。

    移住者である私を快く受け入れてくれた森林組合の先輩方に教わりながら、一人前の木こりを目指して成長していきたいです。また、自宅敷地にある畑で野菜を育て、いずれは「半自給自足生活」をしたいと思っています。

    ――今後の飯舘村にどんなことを期待しますか。

    変な言い方かもしれませんが、あまり発展しすぎないでほしいです。自然に囲まれたこの環境と丁度いい不便さが気に入って移住をしたので、特に何かが変わってほしいとは思いません。

    ――最後に、移住を検討中の方へメッセージをお願いします。

    都会にお住まいの方が地方へ移住をすると、都会の常識が通じないことがあると思います。しかし、その違いを面白がる余裕やあまり深く考えすぎないことが大切かなと思います。最初から定住を前提に移住を考えてしまうと不安に思う材料が次々に出てきてしまって決断できなくなってしまうと思うので、まずはお試し感覚で期限等を区切って移住をしてみるのもいいと思いますよ。

    佐々木 淳一(ささき じゅんいち) さん

    1981年生まれ。自然に囲まれた暮らしと林業に関わる機会を求めて2020年に宮城県仙台市から飯舘村へ移住。飯舘村森林組合の一員として働いている。休日は豊かな自然の中でキャンプや釣りなどのアウトドアライフを楽しんでいる。

    聞き手:髙橋晃浩 文:永井章太 写真:佐久間正人