移住サポーター

チャレンジするまちの移住支援最前線①飯舘村

2021年11月18日
飯舘村
  • チャレンジするまち
  • 里山暮らし

飯舘村役場 村づくり推進課定住交流係
主査 松本義之さん

  • おすすめの移住者向け移住支援制度は?
    • 移住の際に必要な住宅の建築や購入、修繕に使える飯舘村移住定住支援事業補助金
  • どれぐらいの人が移住している?
    • 72世帯・100名以上(2016年4月~2021年10月)
  • どんな人に移住して欲しい?
    • モノや心を分かち合い、一緒に復興に取り組みたいというような若い層の方

モノや心を分かち合い、ふんわりやっこく迎える村

――飯舘村の避難指示解除は平成29(2016)年でしたが、本格的に移住者支援には取り組み始めたのはいつ頃からでしょうか。

避難指示解除の翌年、平成30(2017)年に、現在私が所属している定住交流係の前身となる「移住定住交流推進対策室」が立ち上がりました。その後2020年に現在の組織となり今日に至っています。

定住交流係では、電話、対面、メールでの移住相談に3名体制で対応しています。簡単な移住相談だけではなく、空き物件の内覧や就職希望先の見学に村職員が同行するなどのサポートをしています。また、村はいくつかの行政区に分かれていますので、ご相談者様の年齢や個性などを把握したうえで、どの行政区にマッチしそうか、また空き家をご案内する際も、空き家の持ち主の方と相性が良さそうかといったところまで配慮しながら案内しています。この点に関しては、他の自治体様に比べて丁寧にできているのではないかと思っています。

――移住の促進、支援に向けて、村ではどのようなビジョンを掲げていますか?

村が2021年に策定した第六次総合振興計画においては、移住促進への大きな柱として「モノや心を分かち合い、ふんわりやっこく迎える村」というテーマを掲げています。お互いに助け合える地域をつくり、新しく移住される方を柔らかく迎えていきたいというメッセージを込めています。

そのうえで、「明日が待ち遠しくなるようなワクワクする楽しいふるさとを作りたい」という村長の想いのもと、みんなで楽しみながら一緒に暮らせるふるさとにすべく、またそれに取り組んでくださる方達が活躍しやすいような環境を作るべく、取り組みを進めているところです。

小学校の無償化など子育てを手厚く支援

――これまでに移住された方の数はどれぐらいになりますか?

移住の際に必要な住宅の建築や購入、修繕に使える「飯舘村移住定住支援事業補助金」を使って移住された方が2021年10月現在で72世帯、100名以上いらっしゃいます。この補助金は定住の意思を表明することで支給されるものです。

「飯舘村移住定住支援事業補助金」は、新築の場合かつお子様がいる場合などいくつかの条件を満たすことで最大で500万円、空き家を購入された際に最大200万円、空き家を購入後リフォームする場合等に最大100万円を補助しています。この制度を使った方の中には、補助金を使い家を購入し訪問看護のお仕事を起業された方などもいます。

――中古や空き家物件の供給状況はいかがでしょうか。

移住者が100人規模で増えたこともあり、正直なところ空き物件が非常に少ない状態です。「空き家バンク」を立ち上げて空き家のマッチングもしていますが、まだまだ絶対数は少なく、需要に供給が追いついていません。この地域の暮らしに興味を持ってくださっている方なので、飯舘村でなくても地域の一員として移住していただけることは大変うれしいです。もし飯舘村の中で物件が見つからない場合はただお断りするのではなく、川俣町さんなど近隣の自治体と連絡が取り合っておつなぎするような体制を取っています。

――移住される方々はどういった年齢層や家族構成の方が多いでしょうか。

定年後にスローライフを送られる目的のシニアの方や、小学生のお子様と移住され新たに農業を始められたファミリーの方など、いろいろな方が移住されています。

――お子様がいる世帯への特別な支援などはありますか。

先ほどもお話しした通り、住宅の新築や購入時の補助金がお子様の人数などの要件によって増えることがあります。

小学校や認定こども園は無償化を進めていますし、子育てについては手厚く支援する方針です。

ただし、これらは移住者に限らず村民すべてに適用されるものです。村長の基本的な考えは移住者と元の住民を分け隔てなくサポートすることであり、その方針のもと、誰もが使える制度の整備が進んでいる状況です。

一緒に復興に取り組んでくれる若い方にぜひ来ていただきたい

――移住された方々に対してイベントなどを企画することはありますか?

2020年、2021年と、定住支援の一環として村の主催で移住者交流会を開きました。25名程の方が集まって交流を図りましたが、村の魅力についていろいろな意見が出ました。村内でお店を開業したある方からは「不安だったけれど地元の方の協力のおかげで楽しくやれている」という声が聞かれましたし、自然が豊かでいいという人もいれば、人間関係が温かくていいという人もいます。田舎ですので夜は非常に暗くなりますが、それが落ち着いて好きだという方もいました。移住者の中でも好きなポイントがバラバラですが、裏を返せばいろいろな魅力があるということだと思っています。

イベント以外に、移住された方の暮らしや仕事ぶりについてYouTubeの飯舘村公式チャンネルでの発信も始めています。

おいでよふくしまけんいき 福島県飯舘村

――移住者の方にぜひおすすめしたい仕事や振興している産業などはありますか?

主要な産業は、やはり農業です。震災前の飯舘村といえばブランド牛の「飯舘牛」が有名でした。村としては、その復活に向けてまずは畜産農家を増やす方針を立てています。また、カスミソウやトルコギキョウ、アルストロメリアといった花きの栽培に取り組む方を増やしたいとも考えています。

――今後どのように移住者のみなさんの支援・サポートしていきたいですか?

これから移住をされる方へのサポートはもちろんですが、すでに移住された方々の定住支援をより強化したいと思っています。先ほどもお話しした移住者同士の交流会を積極的に開くこと、定住に関するお悩みの相談をしやすい環境を作ること、移住者アンケートで定期的なヒアリングを行うことなどを考えています。

また、現在は勤務時間内の朝8時半から夕方5時15分の間のみの相談対応となっていますが、東京などで夜の時間帯に移住のセミナーが開かれていることを考えれば、毎日でなくてもスタッフが交代で夜の7時頃まで電話対応ができるような体制を取る必要もあるかと思っています。

――移住体験的なサービスもご用意されているとお聞きしました。

はい。コロナ以降ストップしてしまっていましたが、今後拡充していきたいと考えているサービスの一つです。詳しい内容は検討中ですが、滞在中に村の人との交流の時間を作ったり、就農体験をプログラムに組み込んだりなど、ソフト事業と組み合わせた移住体験の枠組みを作りたいと考えています。

復興を手伝いたい、一緒に復興に取り組みたいというような若い層の方にぜひ来ていただきたいと思っていますので、今後の新しい取り組みについては、まずは電話か村のウェブサイトのお問い合わせフォームからご相談いただけるとありがたいです。


■飯舘村役場 村づくり推進課 企画定住係
住所:〒960-1892 福島県相馬郡飯舘村伊丹沢字伊丹沢580番地1
Tel:0244-42-1613
https://www.vill.iitate.fukushima.jp/soshiki/14/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。