支援制度

福島12市町村は新規就農がしやすい? 各自治体の農業の取組などの特徴を紹介!

2022年3月28日
  • 支援制度解説マンガ

お米や野菜はもちろん、フルーツ、地鶏、ブランド牛など、多彩な農産物を生産する福島県。東日本大震災以降、福島の農業は風評被害もあり大きな苦境に立たされましたが、生産者のみなさんの努力のもと、よりおいしく、より安全に生まれ変わっています。

福島では今、県外から移住し新規就農する人も積極的に受け入れています。ここでは福島12市町村の農業の現状と新規就農者の受け入れ体制についてご紹介します。

福島の農業の「今」

全国有数の農業県である福島県。農林水産省の発表では、福島の農業は長く年間2,000億円以上の産出額を誇ってきました。しかし、2011年の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故により状況は一変。風評被害もあり、同年の農業産出額は統計を取り始めてから初めて1,000億円台に落ち込みました。

県では、避難指示が出された12市町村だけでなく全県において、出荷されるすべての農産物に対する放射線量のモニタリング検査を実施。全国に類を見ない厳しい検査基準において安全性が確保されたものだけを出荷することで消費者に安心・安全をアピールし、少しずつ信頼を回復してきました。現在では検査で出荷停止となる農産物はほぼゼロ。農業産出額も2016年以降は2,000億円台を回復し、力強い復活を見せています。

農業は福島12市町村において古くから地域の基幹産業となっていましたが、各自治体では今、その復興とさらなる振興を図るべく、新規就農者を受け入れるためのさまざまな施策を導入しています。ここでは各自治体の取組をご紹介します。

南相馬市

南相馬市では、県内有数の生産量を誇るブロッコリーを始めとする野菜の他、梨やイチゴなどの果物などの生産も盛んです。

そんな南相馬市では、市外から移住し就農する人を、賃貸住宅の家賃の一部を最長2年間補助する「移住就農者家賃支援事業」で支援しています。補助する額は月額最大6万円となっています。

また、野菜・果樹・花き農家として新規就農する人に向けた「農業用機械購入支援事業」、50歳以上65歳未満の新規就農者を対象とした「新規就農給付金事業」など、新たに農業を始める人に向けた制度が充実しています。

田村市

油などに加工されるエゴマの生産が盛んな田村市。ピーマンやいんげんの生産でも全国トップクラスの収穫量を誇っています。

田村市では、新規就農者が農業用機械や資材等を購入する際に上限50万円を支援する「新規就農者経営発展支援事業」、市内で新規就農した人または新規就農を計画している人に対して経営スキルの向上を目的とした農業先進地等への視察研修費を支援する「農業者スキルアップ支援事業」など、農業関連の多くの支援制度を用意しています。

川俣町

トルコギキョウやアンスリウムといった「花き」の栽培が盛んな川俣町。その生産量は全国トップクラスを誇ります。

川俣町では、県外から移住しトルコギキョウや川俣シャモの生産のために新規就農する人に対して最大200万円を交付する「就農者確保移住支援金」を用意しています。また、避難対象地区となっていた山木屋地区でのトルコギキョウやアンスリウムの生産量を高めるため、都市部在住の方を対象に地域おこし協力隊員を募集しています。

浪江町

浪江町では、コメに加えダイコンや白菜、長ネギといった野菜の生産が盛んです。

町では、移住し新規就農する人に対し、営農開始時の自己資金の負担軽減や経営発展に必要な設備投資への支援として1経営体あたり上限100万円を支援する「新規就農者経営発展支援事業」を用意しています。また、就農を希望しその研修などのために町に訪問、滞在をする際の移動手段としてレンタカーを利用する場合、レンタカーの費用を一回あたり5万円を限度に補助する「新規就農者確保のための移動手段支援事業」もあります。

双葉町

原発事故以前はコメやホウレンソウ、ミニトマトなどの栽培が盛んだった双葉町。2022年6月に一部地域での帰還が実現することを受け、町では将来の農業の復興に向けた「双葉町地域営農再開ビジョン」を策定。新規就農者を呼び込むため、農業経営や栽培技術、販路の確保などにおいて支援制度や体制を整備し、新たな担い手の確保を積極的に推進する方針を打ち出しています。

大熊町

原発事故以前は梨やキウイフルーツなど果物の栽培が盛んだった大熊町。2018年にはイチゴの大規模生産・販売を手掛ける「ネクサスファームおおくま」が設立され、町の新たな特産品となっています。

大熊町では、関東圏の大学生を対象とした農業インターンシップや食を通じて生産者と交流するバスツアー「大熊フードキャンプ」の実施などにより、大熊町の農業の認知拡大を図っています。また2021年には「大熊町営農再開ビジョン(骨子)」を発表。地元農業の本格的な復興に向け歩みを進めています。

富岡町

原発事故以前はコメの生産が盛んだった富岡町。試験栽培期間を経て2018年から通常栽培が復活し、IT技術も取り入れた新しい農業の推進に取り組んでいます。

富岡町では、町内で独立し新規就農する人に対して最大2年間、月10万円の収入補てんと上限7万円の家賃補助を行う「とみおか『新たな担い手』応援事業」を展開しています。また、町内の農業法人や農業団体、認定農業者などから農業技術の指導を受け新規就農する人に対して最大2年間、月6万円の生活費補助と月上限5万円の家賃補助を行う「とみおか『農業研修』応援事業」もあります。いずれも町内で年間150日以上農業に従事する満18歳~満50歳の人が対象となります。

楢葉町

原発事故以前からコメや柚子の生産が盛んだった楢葉町。近年は新たな特産品としてサツマイモの生産に力を入れています。

楢葉町では、新規就農者や農業法人へ就職する人、または農業研修で町に長期滞在する人に向け、賃貸住宅の家賃月額の1/2(上限2万円)を補助する「楢葉町新規就農者賃貸住宅家賃補助事業」を用意しています。また、サツマイモの生産に新たに携わる人に対して農業用機械およびビニールハウスの購入価格の3/4(上限100万円)、1aあたりの苗代および生産資材費相当額を交付する「楢葉町甘藷(かんしょ)栽培支援事業」も展開しています。楢葉町甘藷栽培支援事業に関しては楢葉町甘藷生産部会に加入することが条件となります。

広野町

コメの生産に加え、東北としては温暖な気候を活かしミカンの栽培も行われている広野町。最近では新たにバナナの栽培も始まりました。

広野町では、町で就農する人が農業大学校などで技術を学ぶ場合に奨学金を支給する「広野町農業次世代人材育成奨学金」の制度を用意しています。就学後5年間町内で農業に従事するなどした場合、奨学金の返済が免除されます。

飯舘村

震災以前はブランド牛として高い評価を得ていた「飯舘牛」。飯舘村ではその復活に向けた取組が進んでいます。また村内では花き栽培も盛んです。

飯舘村には、村内で新規就農する人、また就農を予定する人に対し年間最大120万円を最長2年間補助する「新規就農・起業活動補助金等」の制度がありますが、2021年度に終了予定です。新しい支援制度が発表された際はこのサイトでもあらためてご紹介します。

葛尾村

牛や養鶏などの畜産が盛んな葛尾村。現在の出荷量は震災前よりも増えているそうで、村の基幹産業として広がりを見せています。2018年にはかつらお胡蝶蘭合同会社が設立され、村の新たな特産品として首都圏などに出荷されています。

葛尾村では2021年度に農業分野(酪農・肉牛・羊・山羊)において地域おこし協力隊員を募集するなど、新たな農業の担い手の確保に取り組んでいます。

川内村

高原野菜やきのこの出荷が多い川内村の農業。近年は新たにワイン用ブドウの生産にも力を入れ、2022年3月には「かわうちワイナリー」で初めての川内産ワインが完成しました。

川内村では、村内で新規就農する人に対し、単身の場合10万円、夫婦の場合15万円を開始月から36ヵ月を限度に支給する「川内村新規就農者支援事業助成金」を用意しています。

まとめ

ここまで、福島12市町村がそれぞれに取り組む新規就農支援の制度について、各市町村の特産品なども織り交ぜながらご紹介しました。

いずれの市町村でも農業の真の復興はまだまだこれからですので、農業のフィールドで地域に貢献や自分らしい生き方に挑戦するチャンスが福島12市町村にはたくさんあります。ぜひこの記事を参考に、農業での移住を検討してみてはいかがでしょうか。

未来ワークふくしまでは、各市町村の就農支援制度などをまとめて紹介しています。こちらもあわせてぜひご覧ください。
https://mirai-work.life/agri12/

※内容、支援制度は2021年度当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。