チャレンジするまちの移住支援最前線⑨富岡町
一般社団法人とみおかプラス
移住相談担当 辺見珠美さん
- 「とみおかプラス」とはどんなところ?
移住前後で気軽に足を運べる「よろず相談所」のようなところにしたい - 主な支援制度は?
子育て世帯への奨励金や、住宅取得に最大300万円などの支援制度を用意 - どのような方に移住してきてほしい?
足りないものを補うことを楽しみながら、一緒に地域づくりを楽しんでくれる方
3月に移住相談窓口をオープン
――とみおかプラスとはどんな団体ですか?
富岡町を思うあらゆる人と人をつなぎ「未来に向けたまちづくり」を主導しているまちづくり会社で、町から移住相談対応業務などを請け負っています。私はとみおかプラスの移住相談担当として、相談会などで出会った方々から移住に関する相談を受けています。とみおかプラスの事務所は、1月に町内の複合商業施設「さくらモールとみおか」から町が借り上げた元写真館の建物内に移転しました。準備期間を経て、3月15日に移住相談窓口をオープンします。
――辺見さんご自身も移住者だとか。
はい。東京の出身で、放射線や原子力に関する勉強をしていた大学時代に東日本大震災が起こりました。ボランティアとして放射線測定や富岡町から東京に避難してきた子どもたちへの学習支援を行う中、当時川内村にあった「福島大学うつくしまふくしま未来支援センター」のいわき・双葉地域支援サテライト(現・富岡サテライト)で放射線担当の職員を募集していることを知り、大学卒業後の2012年に川内村に移住しました。その後、浜通りでは川内村、いわき市、富岡町の3市町村で暮らし、川内村、楢葉町、富岡町の3町村で仕事をしてきました。
富岡町に移住して仕事をする中で、学生時代から関係のあった富岡町の方ともっと関われる仕事をしたいという思いが生まれてきたんです。そんな時に移住相談担当としてのお誘いを受け、富岡町の方と他の地域をつなぐ仕事ができると思い、昨年7月にとみおかプラスへ入りました。浜通りの複数の自治体で生活をしてきた経験も生かしていきたいと考えています。
――実際にお住まいになられた感想はいかがですか。
双葉郡は気候が穏やかですね。川内村は自然が豊かで、皆さんが思い描く里山暮らしができます。富岡町はショッピングモールもあるので買い物にも便利です。また、海のレジャーも楽しむことができます。
――辺見さんが福島で暮らし続ける理由はどんなところにありますか。
富岡町を含む双葉郡全体でさまざまな活動をする中、日々の暮らしの楽しさから、離れがたい人のつながりの強さを感じています。そのつながりの深さが私をつなぎ留めているように感じますね。
移住する子育て世帯に手厚い奨励金制度
――町の主な支援制度について教えてください。
子育て世帯への支援として、中学3年生までの子どもがいる世帯が移住する際には1世帯当たり30万円と、子ども1人当たり年間18万円を3年間受けられる「子育て世帯奨励金交付制度」があります。住宅関係では、条件付きで住宅の新築、中古購入、リフォーム費用として最大300万円を補助する制度を用意しています。
――住宅の供給事情についてはいかがでしょうか。
賃貸住宅の家賃相場は、復興関連事業の影響で高めの状況が続いています。単身用のアパートはたくさんある一方、ファミリー層向けの住まいの確保が課題です。移住相談窓口では今後、不動産会社さんからご協力をいただきながら、住まい情報の提供などを行っていけたらと考えています。
――実際にどのくらいの世代の方が相談に来られますか。
20代から50代まで幅広い世代の方がいらっしゃいます。現在は単身の方からのご相談が多いです。
――町の基幹産業にはどんなものがありますか。
この地域は震災前から農業が盛んです。震災後は、鳥獣被害を受けにくいタマネギの一大産地化を目指しています。町では新規就農者に対し、最大2年間、月10万円の収入補填と上限7万円の家賃補助をする支援制度を用意しています。また、農業だけでなく、皆さんの働く場となる企業誘致を進めています。産業団地も整備し、主に製造業の進出が進んでいます。仕事自体は福祉関係をはじめさまざまな職種の求人情報をご提供できる状況にありますが、廃炉関係等の復興関連のお仕事が多い印象です。
――辺見さんご自身、暮らしの中で町に対して「もっとこうあってほしい」と思うことはありますか。
町内会など自治会の機能再開が、地域のコミュニティー再生につながると思っています。現在は自治会長などの方が避難していることで機能できていない自治会も多くあるため、民間ならではのフットワークの軽さを生かして手助けしたいと思っています。
「よろず相談所」のような窓口にしたい
――移住相談窓口をどのような場所にしていきたいですか。
移住前はもちろん、富岡町で暮らし始めてからも気軽に相談しに来られるような「よろず相談所」のようにしたいと考えています。ふらっと来た地元の方もお茶が飲めるような、人と人が出会える場にしたいというイメージもありますね。
私の場合は富岡町に移住する前から、町で暮らす知人にあれこれ相談することができていましたが、町に縁がなく移住して来られる方はそういった環境にないケースがほとんどではないかと思います。私が知人にそうしてもらったように、今度は私が親身に相談に乗り、移住者の方とつながることで、安心して移住できる場をつくりたいです。
――2022年度の移住支援に関する計画について教えてください。
まずは今回整備した移住相談窓口の機能をしっかり果たしていくことを第一に考えつつ、2022年度は移住体験ツアーの実施を計画しています。移住を検討している方に実際に町にお越しいただき、暮らしのイメージを膨らませてもらいたいと思っています。相談窓口の隣には「お試し居住(宿泊)体験」ができる施設を整備しておりますので、ぜひご活用いただきたいと思います。
また、移住地の候補に富岡町を挙げてもらうためにはまず、町のことを知ってもらうことが重要です。2021年度に引き続き、「とみおかくらし」の発信に力を入れていきたいです。
――どのような方に移住してきてほしいとお考えでしょうか。
今の富岡町には、足りないものがたくさんあります。足りないものがあるからこそ、チャレンジできたり、夢をかなえることができたりする「余白」があると感じています。その余白を楽しみながら、地域をカラフルに彩っていきませんか?そんな能動的な地域づくりを一緒に楽しんでもらえるような方に来てもらえるとうれしいです。
■一般社団法人とみおかプラス
住所:〒979-1111 福島県双葉郡富岡町大字小浜字中央338
Tel:0240-23-6919
Email:tomiokaplus@gmail.com
https://tomioka-plus.or.jp/
■富岡町移住相談窓口 とみおかくらし情報館
https://www.tomioka-iju.jp/
※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。