【企業紹介】「クフウ」が切り拓くサービスロボットの新たな道

2022年12月16日
  • 事業紹介
株式会社クフウシヤ 代表取締役
大西威一郎 氏
1977年生まれ。兵庫県神戸市出身。
明治学院大学経営学部を卒業し、システム開発会社での営業職、CAEソリューション会社での技術職を経験。2009年に法政大学ビジネススクールでMBA経営管理修士を取得。2012年に中小企業診断士として相模原市産業振興財団に採用された。
2014年に株式会社クフウシヤ創業。

市場の大きな産業用ロボットに多くの企業が参入する中、自律移動し人と協働する機能を持ったサービスロボットには未開拓の領域が多く残されている。ニッチなニーズを発掘し、大企業にはできない、ベンチャーならではの新たなものづくりに挑戦し続けるのがクフウシヤだ。

ニッチなニーズを捉え数多くの新規開発にこだわる

「相見積もりをかけられるような開発は、行わない。まだ世の中で確立された技術がない、ノウハウがないロボットを開発していく」と自社の強みを語る。

2014年の創業当初は、産業用ロボットのシステムインテグレーションから始まったが、産業用ロボットの市場に入り込める余地は少なく、目をつけたのが業務用のサービスロボットだ。
話題になったものの一つが、2020年に南相馬市のホテルに導入されたドライ清掃ロボット「Asion」。
ホテルのオーナーから得た隠れたニーズから、水を使用せずにゴミを吸引するドライ型の自律移動清掃ロボットが当時はまだ世の中に存在していないことに気づいたのが始まりだった。
自律移動に特化した「土台」を徹底的に開発し、運搬や警備、案内など必要な仕事に応じて機械を載せ替えることで、比較的安価で信頼性の高いロボット製品を生み出せる「工夫」も同社ならではの思想だ。

▲ 福島県南相馬市のホテルに導入されたドライ清掃ロボット「Asion」。点字ブロックや自動ドアの溝など、ヒトが日常的に活動しているが、これまでの掃除ロボットには困難だった環境でも掃除ができる。

南相馬市全体が「開発拠点」に

2019年より福島ロボットテストフィールド(FRTF)に南相馬事務所を構えた。
本社のある相模原市と南相馬市がロボット産業振興で交流があったのがきっかけだ。

「ベンチャー企業の支援制度が豊富で、ファブレス企業なので、周辺に経験豊富な様々な領域のものづくり企業があり、試作開発や製造がすぐにできるというのがFRTFの魅力ですね」と大西氏は話す。

例えば福島イノベーション・コースト構想推進機構の知財戦略の制度を活用し、特許出願を進めることができた。そして何より、福島12市町村移住制度を活用し、拠点常駐エンジニアを2名採用できたのが大きかったという。
開発と実証のスピードも上がり、世界初となる階段を自律走行するロボットの開発も進んでいる。

▲ 福島県南相馬市の福島ロボットテストフィールド(FRTF)の研究拠点で、ドライ清掃ロボット「Asion」の開発を行った。

無類のロボット好きを待っている

同社の開発はオープンソースであるROSを利用した新規開発がほとんどのため、類似開発の事例はもちろん、開発のガントチャートすら存在しない場合がほとんど。
エンジニアの半分はロボコン出身者で、平日の夜も土日も自宅で自分の趣味として自作ロボットをつくっているような仲間たちだ。
納期や予算に追い込まれるような開発はしないと固く誓い、実際に残業時間ゼロ・年間休日135日という安定した労働環境を整えてきた。

「ソフトからハードまで一貫して作り込む楽しさがあります。ソフト開発がメインで、機械と電気については試作レベルであれば設計と試作を社内で行いますが、量産は協力会社と協業するので、とにかく開発に没頭できる。ロボットを愛するロボットエンジニアの仲間を求めています」と大西氏は意気込んでいる。
(文・秋永名美)