【開催報告】 2025.12.17 多様な人材を活かして成果を上げる 働きやすい環境づくりオンラインセミナー「持続可能な経営に向けた職場づくり」

2025年11月1日
  • イベント

2025年12月17日、「多様な人材が働きやすい職場づくり」がテーマの第3回目のセミナーをオンラインにて開催しました。

ミライズ株式会社専務取締役の高橋理里子氏をお呼びし、「持続可能な経営に向けた職場づくり ~福島県内の具体的な取組の紹介~」と題してご講演いただきました。当日の内容をレポートします。

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【講演】「持続可能な経営に向けた職場づくり ~福島県内の具体的な取組の紹介~」

「『働きやすい職場づくり』にどう取り組むのか」「福島県の中小企業でも実践できるのか」
そんな問いに対し、福島県内企業4社の取組事例とその成果をもとに、組織開発・人材育成の視点から職場づくりを支援してきた高橋氏よりお話しいただきました。また、職場づくりの実践にあたって活用できる助成金等の情報についても紹介されました。

講師:ミライズ株式会社 専務取締役 高橋理里子氏

ワークライフバランス実現に向けて

ワークライフバランスとは、性別や年齢、家庭状況に関わらず、誰もが自分の人生と仕事を両立しながら、無理なく働き続けられる状態を指します。重要なのは、これは「一部の人のための配慮」ではなく、職場全体の働き方の設計そのものだという点です。

一方で、育児や介護など特定の事情がある人だけに配慮する「ワークファミリーバランス」にとどまっている職場では、業務が一部の人に偏り、「頑張っている人ほど忙しい」「声を上げた人だけが配慮される」といった不公平感が生まれやすくなります。こうした状態は、個人の問題ではなく、仕事の進め方や役割分担、意思決定の仕組みが整理されていないことが原因で起きています。

ワークライフバランスが進みにくい背景には、

・ 長時間労働を前提とした業務設計
・ 制度はあるが「使える雰囲気」になっていない風土
・ 特定の人に依存した属人的な業務
・ 対話やマネジメントの不足

といった、組織の構造的な課題があります。

これらを個人の努力だけで解決することはできません。だからこそ、仕組みと風土の両方を見直し、職場全体で働き方をアップデートしていくことが、結果として生産性の向上や人材の定着につながります。

現場で変化を起こした企業の取組事例

働き方や職場環境のアップデートを行った、福島県内の4つの企業の事例をご紹介します。

取組事例① 株式会社福良梱包(福島市)

段ボールなどの梱包資材を製造販売する株式会社福良梱包では、恒常的な長時間労働や、特定の従業員への業務の集中、個人プレーが多く協力体制が取りづらい等の状況にありました。これらを踏まえ、「社内連携を強化する」「属人化や偏りを解消して残業を減らす」という2つの目標を設定しました。

取り組んだことは大きく2つです。1つは業務の計画と振り返りを毎日行うこと。残業はしない前提で就業時間内に終わらせられるよう毎朝業務スケジュールを立て、退社前に予定通り進んだか振り返ることで、自分の時間の使い方を可視化することに取り組みました。

もう1つは、業務を付箋に書き出して、緊急度・重要度の2軸で作ったマトリックス図に貼ることで業務状況を見える化し、業務の依頼時などに互いに確認できるようにしました。すると、業務をたくさん抱えている人に依頼業務がさらに舞い込んでいる事態に気づき、業務の優先順位付けをチーム内で調整できるように。相手の業務状況がわかることで、急な休みの時もフォローできる体制にもつながりました。

チーム全体としては協働意識が非常に高まって助け合いが自然に生まれるようになりました。さらにこの取組期間中、残業時間を前年比25%削減(40時間→30時間/月)し、初めに掲げた2つの目標を達成することができました。

取組事例② 林精器製造株式会社(須賀川市)

時計ケースなどの精密金属部品を製造している林精器製造株式会社では、経営企画グループが取り組みました。経営企画グループは総務と企画の2チームで構成されており、勤怠管理やISO対応などそれぞれ専門的な業務を担当しているために連携が難しく、進捗状況の把握にも課題がありました。これらの状況から、「コミュニケーションを活発に」「属人化を解消して休みを取りやすく」「定時で帰れるチームに」という3つの目標を立てました。

まず、現場の困りごとや業務の実態を丁寧に棚卸しし、見える化と情報の流れの整理を実施。付箋を活用してチーム全員が意見を出しあったことで、見落とされがちな課題も出て、課題の優先順位づけなどの整理ができました。

そして業務の連携や引継ぎをしやすい状況を作るためにも、業務内容と技術レベルを一覧にしたスキルマップを作成。これにより業務の偏りが可視化できるようになり、属人化の解消につながる多能工化の土台を築くことができました。

また、皆で共有する日報に自由コメント欄を設けて雑談ができるようにすると、そこから直接の対話が増え、業務上のコミュニケーションも活発になり、結果としてチーム力の底上げにつながりました。

取組事例③ 株式会社和泉電機(南会津町)

電気工事を請け負う株式会社和泉電機では、現場への直行直帰が多く、コミュニケーションが全般的にとりにくい環境でした。情報共有や相談の時間をとりにくかったり、新たな案件が発生した際に誰が現場の近くにいるのか特定できず無駄な移動時間が発生したり、また倉庫での探し物に時間がかかりすぎているという課題もありました。これらの状況を踏まえ、「情報共有の質を高め、柔軟に協力できる体制づくり」と「作業効率を改善して働きやすさを実感できる環境づくり」に取り組むことになりました。

まずはリアルタイムで情報共有できるように、話し合いの上、電話やショートメール、ビジネス用のコミュニケーションツール等、様々な方法を試しました。その結果、LINE WORKSというビジネス用ツールを利用することで、直行直帰の従業員を含め情報をリアルタイムで届けられ、コミュニケーションをとれるように。多くの情報が行き交う中で、連絡の重要度や誰に向けた連絡なのかもわかりやすいため、コミュニケーションの質も高まり、移動の無駄や業務の偏りを大幅に軽減することに成功しました。

また、倉庫の整理については、1人が担当していたのをチーム全員で整える仕組みに変更。皆で大まかな分類ルールや配置のアイデアを出し合い、整理を進めた結果、探し物の時間が短縮され、その時間を本来の業務にあてられるようになり、目標を達成することができました。

取組事例④ 伊達貨物運送株式会社(伊達市)

運送業の伊達貨物運送株式会社では、総務経理部門で取り組みました。この部門では業務が担当制で属人化されており、それぞれの進捗状況を把握できていないために、一部の人に負担が集中して長時間労働が起こっていました。また、昔からのやり方を続けており、業務改善や効率化という課題も。そこで、「業務を効率化して、全員が定時に帰れる職場を目指す」「業務を見える化して、誰でもできる状態を作り、属人化を解消する」という2つの目標を設定しました。

まずは1日の時間の使い方を見える化し、時間を意識して業務を行うことが可能に。1人1人が予定時間内に業務を終わらせるなど、業務効率化と生産性向上を実現しました。

また、当日の予定表を共有のExcelファイルに入力することで、互いの仕事も見える化しました。納期が近い業務などに集中するための「集中タイム宣言」や、お客様への「不在時の対応のお願い」も入力するルールにし、互いの忙しいタイミングや、逆に声の掛けやすいタイミングがわかるように。また手が空いている人は自ら進んでサポートが必要な人を助けることもできるようになりました。

さらに、経理専用システムが入った、共有で使用するPCの使用予定表を作ったことで、無駄な待ち時間の削減や、PC利用の優先順位を検討して使用時間を調整することにもつながり、作業効率も向上しました。

「働き続けたい」と思われる組織の共通点

このように数多くのコンサルティングを重ねる中で気付いた、皆が生き生きと働いていて定着率が高い企業の共通点をお伝えします。

まずは「①負担が偏らない」こと。退職理由の多くは、仕事の偏りや不公平感によるものです。誰がどれだけ仕事を抱えているのか、どの業務が属人化しているのか。それらが一目でわかるようにできると、属人化や負担の偏りの解消につながり、皆が働き続けられる環境が整います。

次に「②上司との関係性が良い」こと。上司との関係性も退職理由の常に上位にあげられます。安心して相談できる上司がいるということだけで、現場の安心感は大きく変わります。人が定着するかどうかは、誰と働くかという影響がとても大きいです。

「③風通しが良い」というのは、必要な情報が必要な人に届くことです。情報が流れることに伴い、声掛けや確認のコミュニケーションが増えると、ミスや誤解が生まれにくくなり、相談しやすい雰囲気もできてきます。

そして、「④無理を前提にしない働き方」。仕事が個人に依存して互いの状況がわからないと、現場は疲弊してしまいます。業務の優先順位や段取りをつけていくことで、仕事の進捗を予測できるようになり、現場の気持ちは確実に軽くなります。

「⑤小さな声が拾われる」ことも大事です。人の心は突然折れてしまうわけではなく、小さな違和感の積み重ねがもたらすのです。ちょっとした不安、ちょっとした疲れ、ちょっとした理不尽。これらを見逃さず誰かが気にかけられる職場環境が大事です。

「⑥役割・意義が伝わる」とは、誰かの役に立っているという感覚があり、自分の仕事の意味が分かっていることです。感謝やフィードバックは仕事のモチベーションに直結します。働き続けたい理由が自然に生まれるので、これらを丁寧に伝えることが必要です。

行動への一歩「制度と支援の活用」

福島県では様々な制度や支援がありますので、ぜひ活用ください。

① 福島県企業の魅力アップ奨励金

女性管理職の増加などを応援する「女性活躍支援コース」(各20万円)、各休暇制度の取得推進などを応援する「働き方改革支援コース」(各10万円~30万円)、男性育休取得などの企業内第1号の誕生を応援する「ファーストペンギン応援コース」(各20万円)の3つのコースがあります。

詳しくは県のWebサイトをご確認ください。

② 働きやすい職場環境づくり推進助成金

こちらは福島県次世代育成支援企業認証(※次の項目に詳細を記載)を取得した企業に交付されます。ソフト事業用とハード事業用の2種類あり、いずれも補助率3/4以内で上限50~100万円まで費用を助成してもらえます。

詳しくは県のWebサイトをご確認ください。

福島県次世代育成支援企業認証制度について

「『働く女性応援』中小企業認証」と「『仕事と生活の調和』推進企業認証」の2つがあります。中小企業は両方、大企業は後者が対象です。採用面でもいいアピール材料になりますので、ぜひご検討ください。

詳しくは県のWebサイトをご確認ください。

講演まとめ

持続可能な経営のためには、ポイントが2つあります。

1つ目は、「選ばれる組織になるための見える化」です。求職者は、会社の中の様子や、どんな人が働いているのかを応募の判断材料にしています。写真でも一言でも、従業員のリアルが見えるよう発信してください。

2つ目は「続けられる職場にするための使える化」です。どんなに素晴らしい制度を導入しても、使えなければ意味がありません。実際に使った従業員の声を社内外に広め、また上司が積極的に「制度はどんどん使って」と発信してほしいです。

この「見える化」と「使える化」の両輪で持続可能な働き方を実現し、人材の定着、新しい仲間を呼び込む力をさらにつけていってもらえればと幸いです。


今回の講演を受け、ふくしま12市町村移住支援センターでは引き続き、女性をはじめとする多様な人材が働きやすい環境づくりの支援を進めてまいります。