【開催報告】2025.11.14 多様な人材を活かして成果を上げる これからの職場づくりセミナー 第2回「人材を活かすカラフルな働き方の実践」

2025年12月19日
  • イベント

2025年11月14日、「多様な人材が働きやすい職場づくり」がテーマの第2回目のセミナーを、ふくしま12市町村内の企業を対象にゆめはっと(南相馬市)にて開催しました。

株式会社ケイリーパートナーズ代表取締役の鷲谷恭子氏をお呼びし、第一部では「人材を活かすカラフルな働き方の実践 ~1日2時間から働けるワークシェアの仕組みづくりから~」と題してご講演いただき、第二部では企業の働き方の悩みを出発点に改善アクションプランを作成するワークショップを実施しました。当日の内容をレポートします。

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【第一部】講演:
「人材を活かすカラフルな働き方の実践~1日2時間から働けるワークシェアの仕組みづくりから~」

鷲谷氏が代表取締役を務める株式会社ケイリーパートナーズでは、21名の女性がテレワークや子連れ出勤、短時間勤務を柔軟に組み合わせて勤務しています。講演では、同社のワークシェアやテレワークの構築実践、DX(デジタルトランスフォーメーション)活用事例について、また同社が支援する県内事業者の働き方改革の成功事例についてお話いただきました。

講師:株式会社ケイリーパートナーズ 代表取締役 鷲谷恭子氏

1. ケイリーパートナーズを設立した経緯と、多様な働き方に関する取組み

株式会社ケイリーパートナーズでは、経理や総務などのバックオフィス業務の外注先として企業をサポートする事業と、企業・団体の働き方改革やキャリア支援を行う事業を展開しています。

2時間から働ける仕組みや、属人化をなくすためのワークシェアを取り入れ、一人一人が幸せに、そして安心して働ける環境づくりに力を入れています。従業員は20名ほどで、すべて女性。子育てや介護、自身の健康課題と向き合いながら働いているメンバーがたくさんいます。勤務形態は現在、在宅が48%、オフィスが32%となっており、子連れ出勤も可能にしています。社員満足度は9割を超えていますが、日々悩みながら経営に向き合っています。

福島県における仕事や働き方の現状を見て

福島県では高校卒業後、就職や大学進学などで県外へ出て行ってしまう女性がとても多い一方、配偶者の転勤などに伴って転入する30歳前後の女性もたくさんいます。ただ、その女性たちの求める仕事と企業側が求める働き方にギャップがあり、8時間フルタイムで働いてほしい企業とフルタイムで働けない時期がある女性で、うまくマッチングしないという現状があります。

自身が仕事と子育ての両立という壁にぶつかった経験や、このようなミスマッチを目の当たりにしたことから、子育て等をしながらでも働くことができてキャリアアップを諦めなくていい組織を作りたいと思い、2019年にケイリーパートナーズを設立。「なぜ8時間働かなければならないのか」という疑問から、2時間で働ける仕組みづくりをスタートしました。

2時間から働ける仕組み、ワークシェア、DX化を取り入れた働き方

弊社では、勤務できる時間を6時~19時までとしています。その中で早朝の2時間のみ在宅勤務する人もいれば、オフィスに出社してフルタイムで働く人、在宅勤務で長時間働く人など、様々な働き方の人がいます。

突発的な休みが発生することの多いメンバーなので、業務の割り振りに関しては属人化せずにワークシェアすることを徹底しています。支援先ごとに3名前後でチームを組み、1人が休んでも他の2人が引き継ぎ、業務を切れ目なく回すことができています。1人でできる仕事を3人で回すなんて、非効率に見えるかもしれません。しかし、人間の集中力が持つのは2時間と言われていますので、1人が息抜きをしながら6時間仕事をするよりも、2時間しっかり集中できる3人で仕事をする方が効率的だという考え方をしています。

サイボウズOfficeやGoogle Workspaceなどのクラウドツールを活用して、常にリアルタイムで情報共有しているため、在宅勤務などで離れていても業務の引継ぎもスムーズで、ワークシェアや2時間からの勤務が可能になっています。

2. 現場で生まれた働き方改革の実践例

ここからは、弊社が支援した企業や団体の、働き方改革の成功事例を紹介します。

変革を止める4つの思い込み

事例を紹介する前に、次の4つの声が職場にないか確認していただければと思います。もしあればそれは思い込みなので、変革に取り組むにあたり捨ててほしいのです。

  1. 「人が足りないから無理」
    業務を細かく分解することで、アウトソーシングなどの解決手段を見つけることにつながります。
  2. 「上が決めれば動く」
    現場はまず小さな一歩を踏み出すこと、上は現場に任せる勇気と見守る覚悟が必要です。
  3. 特殊な業種の「うちは特別だからうまくいかない」
    仕事は特殊でも、働き方を考える上での他業種との共通点は必ずあり、できることもあります
  4. 「制度が整ってないから動けない」
    制度を整えるのは大変で時間もかかります。まずは小さく実践、現場検証をしてQuick Win(小さな成功体験)を目指し、自社に合うものを見つけて制度設計につなげていくのがいいのではないかと思います。

働き方改革の実例を業種ごとに紹介

弊社が支援した働き方改革の実例を紹介します。業種ごとに典型的な例を挙げています。

【製造業】属人化型:一人に頼りすぎる職場の再設計
「あの人に頼めば大丈夫」という安心感から陥りがちなのが、属人化です。ある製造業の企業ではバックオフィスの業務が属人化し、担当者が休むと業務が一気に滞っていました。担当者の抱えている仕事をできるだけ小さく分解し、本当にその人がやらなければいけない仕事なのか議論を重ね、外注や社内での担当変更、パートタイマーに任せるなど、他の人に渡せるものを作ると、チームで協力できる体制が整い、月次処理もスケジュール通り完了できるようになったという例がありました。

【建設業】フルタイム前提型:柔軟性に乏しい現場の再構築
ある建設業の企業ではフルタイム勤務が暗黙の前提になっており、求人を出しても女性の応募が少ないという課題感がありました。弊社の支援を通して、今は子育てや介護などの事情がありフルタイムで働けないけれど、その企業の仕事に興味があり、いずれはフルタイムで働きたいという潜在人材がたくさんいることに気づき、そのような人をパートタイマーとして迎えることにしました。

社員の業務を棚卸しし、パートタイマーに任せられる業務を切り出してマニュアルを作り、就業規則の見直しも進め、もうすぐ採用がスタートするという嬉しい報告を聞いています。

【医療・介護】情報断絶型:紙と感覚に頼る現場の見える化
医療や介護、教育現場では、たくさんの人が現場で働いています。皆それぞれ忙しいため集まる時間が持てず情報共有が難しいという状況において、提案したのはデジタル活用です。スマートフォンで入力できる日報のフォーマットを作り、上長にリアルタイムに報告できるようにしました。また利用者対応の悩みなど、別部署も含め情報を共有し合うことで解決につながるというメリットも生まれました。

デジタル化には、月々数百円で使えるツールやサービスがたくさんあります。本来重点を置くべき利用者対応に時間を割けるようになると、結果としてチームの一体感が生まれ、サービスも向上するという好循環が生まれました。

【サービス業】ピーク集中型:多様な人材でワークシェア
サービス業は、1年または1日の中で繁忙期(時間帯)と閑散期(時間帯)があることが多いです。繁忙期(時間帯)に対応するためフルタイムの社員を増やした結果、人件費は増えたのに、来客がピークアウトすると人手が余ってしまうという経営課題を抱えているという声をよく聞きます。

相談を受けた企業は、窓口業務のビークの時間帯には担当者が休憩もとれないほど忙しいという状況でした。1日の中で来客が集中する時間帯を特定し、その時間帯で手が空いている人はいないかを可視化してもらいました。するとピークの時間帯に別部署から応援を呼ぶ、あるいはパートタイマーを配置するという対応ができ、窓口の接客品質を保ちながら現場が穏やかに回るという状況を作ることができました。

【その他】事務系、農業での実例
その他、事務系の仕事がメインの企業では、タスクを整理してできるものは外注し、滞りがちな業務からマニュアルを整備するなどした結果、小さなことからチームで助け合えるようになり、依頼の対応漏れや属人化を解消することにつながりました。

農業では、医療・介護で例に挙げた情報断絶型と、製造業で例に挙げた属人型の課題の組み合わせが多いです。こちらもデジタルをうまく活用して離れていても情報共有ができる仕組みを整えることで、属人化を解消できた事例がありました。

3. まとめ

たくさんの事例をお話した中で、自社で困っていることと重なる事例や、気になる着眼点があったのであれば、それを持ち帰っていただければ幸いです。現状を大きく変えることは難しくても、例えば一つの部署で試してみるなど、小さなことから始めていただければと思います。

その小さな一歩からいい影響が組織全体に広がっていきます。最初に変化を起こせる場所、最初にできることを見つけて、行動することから始めてみてもらえればと思います。

【第二部】課題深堀りワークショップ

引き続き鷲谷氏のファシリテーションのもと、3名1組のグループに分かれ、働き方の悩みを出発点に改善アクションプランを作成するワークショップを行いました。

まず、第一部の講演を聞いての気付きについてシェアをしました。
「スタッフ間のコミュニケーションは取れているけど、それぞれが今どんな作業をしているのか見える化できていない。見える化ができれば、助け合えたりして業務が効率化するのではないかと思った。」
「これから村づくり会社を作りたいと思っている。ケイリーパートナーズのような2時間から働ける仕組みや在宅でもできる仕組みが作れれば、スタッフを雇用する際に、様々な方を巻き込むことができるのではないかと感じた。」
など、自分事に置き換えた課題がでました。

これらの気付きについてグループ内で深掘りやアドバイスを話し合い、鷲谷氏にも実例などを教えていただき、最終的に、その課題を解決するためにできる最初の一歩をそれぞれ決めて宣言。
「今スタッフ間で使用しているWEBカレンダーに、出張や会議の予定だけでなく、タスクについても細かく記載してもらうことで、作業の見える化を行いたい。」
「村づくり会社を立ち上げる際にどんな仕事が発生するかを書き出し、チームでどのように分担できるか考えたい。」

組織が良くなる未来が少し見え、参加者の表情が明るくなってワークショップを終えました。