移住サポーター

チャレンジするまちの移住支援最前線③南相馬市

2021年12月28日
南相馬市
  • チャレンジするまち
  • 移住支援金

南相馬市役所 移住定住課
副主査 吉田亜衣さん

  • 南相馬市の産業の特徴は?
    若手起業家が増加するなど事業でチャレンジする人が増えてきている
  • どれぐらいの人が移住してきている?
    151世帯320人(2017~2020年度)
  • 移住者向けの主な支援策は?
    利用料が最大1ヵ月間無料の「お試しハウス」の提供や、5年以上の長期居住で県と市併せて最大450万円の住宅取得費を支援

新事業創出が盛んな「チャレンジのまち」

――南相馬市の移住者の状況を教えてください。

2017~2020年度は151世帯320人が移住しています(地域おこし協力隊として着任された方、市の移住相談窓口を利用された方、住宅補助事業を活用された方を計上)。年代別では20~40代が6割ほどで、子どもを連れたファミリー層も多くいます。直近の2021年12月は、移住支援金など支援制度が充実した影響もあってか、相談は月に15~20件と前年度に比べて増えています。

――産業の面で地域的な特徴について教えてください。

移住して事業を興す若手起業家が増えてきています。地域の課題からビジネスの創出を目指す「小高ワーカーズベース」が市と共同で運営している起業型地域おこし協力隊「Next Commons Lab南相馬」では、2017年から地域の課題解決や地域資源の活用を図りながら生業をつくる取り組みを続けています。3年の任期を終えた後も定住して事業を興す方もいるため、南相馬市からさまざまなチャレンジが行われていると感じています。

また、東日本大震災と原子力災害から新たな産業基盤の構築を目指す国の「福島イノベーション・コースト構想」を基に整備され、2020年3月に全面開所した「福島ロボットテストフィールド」には、ロボットの性能評価や操縦訓練ができる実験施設などがあります。現在は先端技術を扱う約20の事業者が入居しており、地元の雇用促進や人材の流入にもつながっています。

――現在、振興を図っている産業にはどんなものがありますか。

農業です。南相馬は、夏は涼しく、冬は雪がほとんど降らない温暖な気候で、多くの品目を育てやすい環境があります。特に米や秋冬野菜の生産がさかんで、中でもブロッコリーは県内有数の収穫量を誇ります。しかし、原発事故後に農業を辞めてしまった方も多いことから、旧避難指示区域内で農地を借り入れる方には最長5年間で年間最大15万円を補助する支援制度を行っています。移住して新規就農する方を対象とした、家賃や機械購入の費用の補助もあります。

地域おこし協力隊のインターンシップ制度を活用した、希望する農産物の生産者の下で農業を体験してもらう事業も行っています。先日は兼業農家を希望する方が4日間、小高区の農家で花卉栽培を体験されました。参加された方によると、実際に地域を見て、農家の方にお話を伺いながら作業を行うことで、イメージが湧き将来の参考になったと話をされていました。

切れ目ない子育て支援と遊び場が魅力

――南相馬市は原町区、小高区、鹿島区の3地区に分かれています。特に移住促進で力を入れているエリアはありますか。

小高区は2016年7月まで全域が避難指示区域だった影響で、市内の他の地域より人口が戻ってきていない状況にあります。このため市は、移住支援全般を担う「移住定住課」のほかに、小高区への移住促進に特化した「おだかぐらし担当」を小高区地域振興課に設けています。

小高区では特に住宅支援に力を入れており、起業や新規就農などを希望する移住者向けに1万6,500円から3万6,300円で原則1年間、広めの市営住宅を貸し出す制度があるほか、使用料が最大1ヵ月間無料で南相馬市の暮らしを体験できる「お試しハウス」を提供しており、就職活動や住居探しの間などに活用していただいているところです。また、市内では車移動が基本となるため、2021年8月からは1日単位で乗用車を貸し出すモニター事業も始めました。市内を見て回り、生活環境を確かめることができるので、ぜひ移住を検討している方に活用していただきたいです。

――市内全域で見ると、住宅の確保のしやすさはいかがでしょうか。

賃貸物件は、利便性が高い市街地の原町区を中心にアパートの空きが現在(2021年12月時点)500戸ほどあるようです。車があれば20分ほどで移動できるため、原町区に居住し、それ以外の地域で仕事をする方もいらっしゃいます。南相馬市で5年以上居住することを決めた移住者の方については、要件に該当すれば賃貸で18万円支援、戸建て住宅取得では、県と市の支援制度を併用して最大450万円の補助を受けることができます。

――市が行っている子育て支援策について教えてください。

子どもが生まれた時には、おむつや粉ミルクを購入できる2万円分の給付券と南相馬市産のお米30kgを贈っています。2021年度からは第3子誕生時に30万円の給付金が、小学校入学時には10万円が給付されるようになるなど充実度が上がりました。保育費は0~2歳児も無償です。3歳未満のお子さんを家庭で保育する場合は1ヵ月につき1万円の手当が支給される制度もあります。

これらの子育て支援は移住者だけでなく市内に住むすべての家庭が対象となります。私自身も3児の母親ですが、子育てする上では生活するにも習い事をさせるにもお金がかかるので、支援金は大変助かりますね。小高区には無料で遊べる屋内遊び場「NIKOパーク」があります。また、公園も多く、非常に子育て環境が整っています。

移住希望者と地元の交流機会をつくりたい

――移住について相談したい場合はどちらを訪ねればよいでしょうか。

移住相談窓口として、市移住定住課と、道の駅南相馬にある「南相馬市ふるさと回帰支援センター」の2ヵ所を設けています。窓口では移住を希望される方の話をしっかりと聞き、どのような生活を求めているのかを引き出していきたいと思っています。

窓口に来ることが難しい方向けに、移住を検討するために必要な情報や支援制度を24時間いつでも調べられるよう、LINEアカウント「みなみそうまからはじめよう」も開設しました。若い世代向けにFacebookや、Instagram(@minamisomakarahajimeyou)で南相馬市の暮らしや支援、セミナーなどの情報も発信しており、今後も内容を充実させていきたいと考えています。

まだ「支援制度を知らなかった」という声がとても多いです。どの制度を利用できるのか分からないとおっしゃる方も多いため、移住を希望される方がうまく支援制度を活用できるようにお伝えしていきたいです。

――市外からの交流人口拡大を図るサポーター制度も好評だとお聞きしました。

南相馬市では、南相馬市とつながりを持つ方、これから南相馬市とつながりを持ちたいと考える方との関係を深めるためのサポーター制度「南相馬市サポーター」を設けており、市外に約1,300人の会員がいます。年2回発行している会報誌の特集とリンクした現地ツアーも予定しており、移住の動機付けにつなげたいとも考えています。野馬追やサーフィン、地元のスイーツなど通常の観光パンフレットよりも深掘りした内容になっているので、南相馬市のことを知るにはうってつけです。

――どのような方に移住してきてほしいとお考えでしょうか。

起業などのチャレンジをしたい方のサポートは、市として今後も継続していきたいと考えているため、新事業創出などを検討されている方にはぜひとも南相馬市にお越しいただきたいと思います。また、子育て支援がとても充実していて子育てがしやすい環境が整っているので、子育て世代の方にもおすすめしたいです。


南相馬市役所 移住定住課
住所:〒975-8686 福島県南相馬市原町区本町2-27
Tel:0244-24-5269
https://www.city.minamisoma.lg.jp/attraction/index.html

南相馬市ふるさと回帰支援センター 
https://minamisouma-furusato.jp/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。