生活・その他

ふくしま12市町村の伝統や文化に触れられる夏のイベント6選

2023年6月23日

福島12市町村には、地域で守られ続ける伝統行事や祭りが数多くあります。中には重要無形民俗文化財に指定されているものや、遠方から足を運ぶ人がいるほど人気の祭りも。夏以降は、各地で祭りが盛り上がる季節です。今回は、福島12市町村の夏を彩る注目の祭りを6つご紹介します。

相馬野馬追(南相馬市他)

相馬野馬追は南相馬市を含む福島県相双地域の祭りで、その歴史はなんと1,000年以上!平安時代、相馬氏の祖といわれる平将門が下総国(現在の千葉県)の領内で馬を捕らえ「御神馬」として神前に奉納したことがはじまりといわれています。相双地域では、相馬家の氏神である妙見をまつる相馬三社(相馬太田神社・相馬小高神社・相馬中村神社)の祭礼として受け継がれてきました。

祭りは3日間にわたり行われ、その見どころの多さも人気の理由の一つです。相馬市、南相馬市、双葉郡の旧標葉郡(浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)の3地区から江戸時代の領地の区割りである5つの「郷」ごとに騎馬武者が集結し、各郷が所属する相馬中村神社(相馬市)、相馬太田神社(南相馬市原町区)、相馬小高神社(南相馬市小高区)の3陣に分かれて出陣します。

初日は各神社で「出陣式」が行われ、人々が声援を送る中、騎馬武者が列をなして本祭りの会場となる雲雀ケ原 (ひばりがはら祭場地へ向けて進軍を開始。甲冑姿の騎馬部者が一般道を練り歩く姿は戦に向かう武士そのもので、見る人を圧倒します。

最もにぎわいを見せるのは、2日目の本祭り。約400騎の騎馬武者が勇壮な姿で進軍する「お行列」、旗を掲げながら人馬が一体になって疾走する「甲冑競馬」、御神旗を数百の騎馬武者が奪い合う「神旗争奪戦」など、戦国絵巻のような光景に、会場が歓声と熱気に包まれます。

祭りを締めくくるのは、3日目の「野馬懸(のまかけ」。古式に則った神事で、騎馬武者が野馬を神社境内に追い込んだ後に素手で捉えて神前に奉納し、地域の平和と安寧を祈ります。

国指定重要無形民俗文化財に指定され、遠方からも多くの見物客が訪れる相馬野馬追。地元住民にとっても町のシンボルのようなものであり、古くから大切にされてきました。相双地域では馬を飼育する人も多く、祭りが近づくと随所で乗馬の練習をする人も見られるなど、馬と暮らす文化が根付いていることがわかります。

■相馬野馬追
開催時期:2023年は7月29日(土)〜31日(月)

メイン会場
<甲冑競馬・神旗争奪戦>
雲雀ケ原祭場地(〒975-0051南相馬市原町区橋本町4-13-27)
<野馬懸>
相馬小高神社(〒979-2102南相馬市小高区小高古城13)
※出陣式
・相馬中村神社(〒976-0042 相馬市中村北町140)
・相馬太田神社(〒975-0052 南相馬市原町区中太田舘腰143)
・相馬小高神社(〒979-2102南相馬市小高区小高古城13)
HP:https://soma-nomaoi.jp

標葉郷野馬追祭(浪江町)

相馬野馬追にあわせて、浪江町では、相馬野馬追に向かう標葉郷(しねはごう (浪江町、双葉町、大熊町、葛尾村)に所属する騎馬武者を見送り出迎える「標葉郷野馬追祭」が開催されます。

初日は本陣(浪江町中央公園)から出陣。浪江町内を進軍しながら、神旗争奪戦などが行われる南相馬市の雲雀ケ原祭場地へ向かいます。2日目は相馬野馬追祭のお行列や甲冑競馬、神旗争奪戦を終えた騎馬武者が浪江町内を一巡する「凱旋行列」や、御神旗を奪い合う「標葉郷神旗争奪戦」が行われます。

騎馬武者の勇ましい姿や神旗争奪戦の迫力ある光景は圧巻!せめぎ合う馬たちの壮烈な姿を間近で見られるのも魅力です。

■標葉郷野馬追祭
開催時期:相馬野馬追と同日
出陣式・標葉郷神旗争奪戦会場:中央公園(〒979-1521浪江町権現堂北深町41-2)

麓山の火祭り(富岡町)

「麓山の火祭り」は、富岡町の麓山神社で400年以上続く、五穀豊穣や家内安全を祈る伝統行事です。長さ約3mの松明を白褌姿の若衆が担ぎ、「せんどー!(千灯)」の掛け声とともに山を駆け上がる姿は圧巻!

松明(たいまつの重さは約40kg。勢いよく燃える炎と男たちの勇猛な姿に、会場の熱気は高まります。山頂では万歳三唱が行われ、下山後は境内を33周して神事が締めくくられます。神事でありながら仏教の盆踊りで締めくくられる神仏習合の祭りで、福島県指定重要無形民俗文化財に指定されています。

地元住民の活力を呼び覚ます麓山の火祭り。東日本大震災後は中止が続いていましたが、2018年に復活。新型コロナウイルスの影響でその後も中止を余儀なくされましたが、伝統ある祭りを絶やしてはならないと、今でもその文化は守られ続けています。

■麓山の火祭り
開催時期:毎年8月15日 ※2023年は8月15日(火)に4年ぶりの開催。
会場:上手岡麓山神社(〒979-1141 富岡町麓山2)

天山祭り(川内村)

山林に囲まれた川内村で昔から大切にされてきた「天山祭り」。趣のある茅葺き屋根が魅力の天山文庫で年に一度開催されるお祭りです。

天山祭りを語るうえで欠かせない人物が、詩人・草野心平です。生前、川内村の豊かな自然と温かな人柄に心を打たれた草野氏は、村に足繁く通ったといわれています。1960年に名誉村民に選ばれた際には、3,000冊もの蔵書を川内村へ寄贈。それをきっかけに村民が協力して1966年に建てられたのが天山文庫です。

天山文庫の建設以降は、草野氏と村民との交流を深めることを目的に、天山祭りが毎年開催されてきました。草野氏亡き後も、近隣住民がお酒や料理を持ち寄り、草野氏の詩の朗読や町獅子による郷土芸能の披露などが行われています。天山祭りに足を運んでみれば、草野氏が川内村に惹かれた理由を知ることができるかもしれません。

■天山祭り
開催時期:毎年7月第2土曜日 ※2023年は7月8日(土)に開催(飲食はなし)
会場:かわうち草野心平記念館 天山文庫(〒988-0388 川内村上川内早渡513)
HP:http://www.kawauchimura.jp/page/page000108.html

コスキン・エン・ハポン(川俣町)

川俣町で1975年から毎年開催されている、日本最大級の中南米音楽祭「コスキン・エン・ハポン」。南米アンデス山脈に住む先住民に伝わる民族音楽「フォルクローレ」を愛する大勢の人が集まり、現在では180グループ以上が参加する、国内外から注目される音楽祭です。

名前の由来は、本場アルゼンチンのコスキン市で開催される音楽祭。フォルクローレは、縦笛のケーナやハーモニカの原型ともいわれるパンフルート、十弦小型ギターのチャランゴ、打楽器のボンボなどで奏でられ、「コンドルは飛んでいく」などの曲が有名です。1999年からはパレードも行われるようになり、幼稚園児から大人まで多くの町民が南米の民族衣装を着飾って町を歩き、音楽や踊りの文化を楽しんでいます。小学生にはケーナが配布されるなど、町を挙げて音楽祭を盛り上げています。

■コスキン・エン・ハポン
開催時期:例年10月 ※2023年は8月11日(金・祝)〜13日(日)
会場:川俣町 中央公民館ホール(〒960-1463 川俣町樋ノ口11)
HP:https://www.cosquin.jp

都路灯まつり(田村市)

「都路灯まつり」は2003年から開催されている田村市五大夏祭りの一つです。会場のグリーンパーク都路内には約1万本もの竹灯が灯り、地上の天の川のような光景が広がります。

会場では郷土芸能や音楽ライブを楽しむことができ、地元の特産品を味わえる露店なども軒を連ねる、家族みんなで楽しめるアットホームな雰囲気です。竹灯をともす作業は当日ボランティア参加も可能で、参加者には記念品のプレゼントもあります。

■都路灯まつり
開催時期:毎年8月上旬 ※2023年は8月5日(土)15:00~
会場:グリーンパーク都路(〒963-4702 田村市都路町岩井沢北向185-1)

まとめ

夏以外でも、双葉町では2023年に町内開催が復活した「双葉町ダルマ市」が1月に、楢葉町では木戸川の上流にある大滝神社の神輿が太平洋まで下り潮水を浴びる「大滝神社の浜下り行事」が4月に行われるなど、福島12市町村には地域に根ざした魅力ある祭りがたくさんあります。

各市町村の祭りに参加してみると、普段とは異なるまちの魅力を見つけられるかもしれません。ぜひ実際に足を運んで、まちの熱気に触れてみましょう。

具体的な開催日程や内容については、各市町村のホームページなどをご確認ください。

※内容は公開当時のものです。
文:山田康平
写真提供:相馬野馬追執行委員会、浪江町、富岡町観光協会、川内村観光協会、川俣町、田村市