【企業紹介】最速の情報収集と解析で災害対策の課題に挑む

2022年12月20日
  • 事業紹介
株式会社テラ・ラボ 代表取締役
松浦孝英 氏
1999年、モバイルITコンサルティング会社を起業。その後、中部大学職員を経て、中部大学国際GISセンターの研究員として長距離無人航空機の研究を行い、2014年に株式会社テラ・ラボを創業。2021年に福島南相馬市に同社の工場を竣工し、雇用促進と新たな産業創出を推進する。

大規模災害時に「誰よりも早く現場の情報を届ける仕組みを作る」
そんな決意のもと生まれたのがテラ・ラボだ。長距離無人航空機を用いた情報収集と中部大学発の地理情報システム(GIS:GeographicInformation System)技術を組み合わせ、被害の軽減を目指す。

現場の判断を左右する「情報」の課題に挑む

2011年の東日本大震災。
松浦さんの地元は南海トラフに位置し、他人事ではない現状を目の当たりにした。

「何かしなければ」と強い使命感を抱き、着目したのが災害対策本部での課題だ。
重複する情報投入や組織間の情報断絶により災害対策本部が最適な判断をするには情報が足りていなかった。被災地全体の状況把握には空撮が有効だが、危険な場所において、有人飛行には限界がある。
そこで松浦さんが着手したのが、無人で長距離飛行が可能な航空機を活用した情報収集と解析技術を組み合わせ、集約した情報を提供するサービスの構築だ。

▲長距離飛行が可能な無人航空機が飛行高度、緯度経度と共に被災地の空撮データをリアルタイムで車両型地上支援システムに共有することでスピーディに状況を把握する。

技術者と行政、二人三脚で立ち向かう

同社が挑む領域を持続可能なビジネスにすることは非常に難しい。
しかし、復興と災害対策のために「何でもやる」と本気で挑もうとする南相馬市の行政とともにこの挑戦が始まった。
2019年、南相馬市の福島ロボットテストフィールドに研究開発拠点を設置。
同年、台風19号が全国に大きな被害を及ぼしたが、同社は福島県南相馬市内の被災場所を空撮。
得られた情報から3Dデータを作成し、行政の対策本部に状況を報告。この情報から避難誘導がなされ、人的被害を免れた。
まさに技術者と行政が一体となった最先端の災害対策が始まったのだ。
次なる目標はさらに広大な地域の調査に向けた長距離無人飛行。本州縦断距離約1500kmを超える約2000kmの連続飛行を目指す。

▲福島ロボットテストフィールド(RTF)全域を使用した実演デモで使ったドローン。背後にあるのは車両型地上支援システム。被災地でも通信が可能な衛星通信回線、携帯電話通信回線が確保でき、ここでドローンから得た情報を解析し、3次元データ化する。これらに必要な大容量の電力も発電することができる。

あなたの専門知識を災害対策に活かして

「自分のパーソナリティは特定の領域にしか活かせないと思ってしまいがちですが、別の分野でも活かせることがあると思うんです」と松浦さん。
これまでにも修士や博士などを採用しており、社員の中には元は化学(人工たんぱく質)の研究者だった人もいる。
入社後、専門外のGISの研究開発はミスマッチのようにも思われたが、自分の知識を活かせる事に気づき、活き活きと開発をするようになった。

「大切なのは課題に対して自分の知恵を活かして掘り下げていけるかどうか。私達のビジョンに共感し、果敢に挑戦する情熱のある人を求めています」。
(文・伊達山 泉)