【企業紹介】大海原を滑空する飛行艇ドローンで驚きの世界を見せる

2022年12月21日
  • 事業紹介
株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー 代表取締役
金田政太 氏
東京工芸大学映像学科卒業。ケイケイアソシエイツにて広告映像や商品企画デザインの経験を経て、惑星探査ロボットの開発を行う株式会社ispaceの立ち上げに取締役として参加。2014年にスペースエンターテインメントラボラトリーを設立、代表取締役に就任。2021年9月ふくしま次世代航空戦略推進協議会を設立、会長に就任。

主流の回転翼型ドローンの連続駆動時間は短く、積載量にも限りがあり、離島の物流や、広域な範囲の調査は現状難しい。そんな課題に対し、スペースエンターテインメントラボラトリーが開発するのは、飛行機のような主翼を有する「固定翼ドローン」だ。これは離着陸に広いスペースを必要とするものの、圧倒的な時間・距離を飛ぶことができる。彼らの高い設計力と自動制御技術の実装力が、ドローン活用に新たな風を吹き込んでいる。

月面へのあこがれが、冒険家への一歩目をつくる

「航空宇宙技術の英知を掛け合わせ、今までにない輸送や探査ができる製品で皆をワクワクさせたい」と、金田氏は語る。
きっかけは、訪問した種子島宇宙センターにて目の当たりにした、ロケットの打ち上げだった。

「幼い頃から想像していた世界が夢物語ではないと気づいた経験でしたね」。
その後、合同会社ホワイトレーベルスペース・ジャパン(現、株式会社ispace)へ参画し、民間による世界初の月面無人探査を競うコンテスト「Google Lunar XPRIZE」にも挑戦。
そして2014年、冒険家になりたい、発明家になりたい、そんな幼い頃からの夢を実現するため、仲間とともに同社を設立した。

水上で離着陸する日本ならではのドローン誕生

金田氏らが開発を進めるのは、宇宙以上に未知と言われる海洋を調査する大型飛行艇型ドローン「HAMADORI6000」だ。広大な土地が少なく、海に囲まれた日本のような場所でも活躍できる、海や川から離着陸できるドローンだ。
小型の回転翼・固定翼ドローンでは搭載できなかった衛星通信機や船に積んでいた大型の海中センシング機器をも搭載可能にした。
これにより、マルチビームソナーによる測量や、海底状況の把握など海中の精密な調査を可能とするだけでなく、外国漁船の監視、物流など幅広い分野への展開が一気に見えてくる。
まさに、試作開発から製造まで一気通貫で行える技術力、未知に突き進むメンバーがいたからこそ誕生した機体だ。

▲川や海などの水面から飛び立ったり、着水できる飛行艇型ドローンHAMADORIシリーズ。

私にとってのシリコンバレーがここにある

過酷な環境への耐久や、波の上での離着陸の自動制御などの開発には莫大な予算と専門的なサポート、実証場所が必要だ。
2019年、同社は福島県南相馬市と連携協定を締結。福島イノベーション・コースト構想推進機構や相馬双葉漁業協同組合の協力で飛行艇型ドローンの飛行試験も開始した。

「南相馬市の製造業者はロボット開発経験をもっている方が多く、非常に高い理解度で依頼を受けていただけます。また、ベンチャーが多く集まっており、お互いの頑張りを横目で見られる環境も気に入っています」と金田氏は語る。
誰も見たことがないドローンの利用分野を切り拓く「現場」に飛び込んできてくれる仲間を待っている。
(文・小玉悠然)

▲HAMADORIシリーズの開発の様子。