移住サポーター

チャレンジするまちの移住支援最前線⑥川俣町

2022年1月26日
川俣町
  • チャレンジするまち
  • 移住支援金

川俣町役場産業課
(中央)課長補佐兼商工交流係長 藤原貴範さん
川俣町移住・定住相談支援センター
(右)後藤晃治さん
(左)菅野浩市郎さん

  • 町の特性は?
    買い物施設も多く生活がしやすい。車があれば交通の利便性の高い「ちょうどいいまち」
  • どんな特産品があるの?
    伝統的な「川俣シルク」や「川俣シャモ」、トルコギキョウやアンスリウムといった花き
  • 移住者向けの支援制度は?
    移住支援金や結婚新生活支援奨励金、空き家の改修費補助や、特産品に関する新規就農者に対する支援金

――「川俣町移住・定住相談センター」の業務内容について教えてください。

後藤さん 移住を希望している方からの住まいや仕事などに関する相談業務をはじめ、移住関連イベントなどの情報発信、関係する支援金の案内と申請受付を行っています。

――移住相談はどのぐらい受けていらっしゃるのでしょうか。

藤原さん この相談窓口は2021年9月に開所しました。2022年1月までの約半年間でおよそ50件の問い合わせをいただいています。

――川俣町の地域的な特性について教えてください。

菅野さん 伝統的な産業として「川俣シルク」があり、昭和中後期くらいまでは人の交流が盛んな町でした。古くから交通の要所として縦横に幹線道路が通っているため福島市にも浜通りにもアクセスしやすく、県内各地を回るという方には交通的にも便利です。昔は鉄道がありましたが現在はなく、公共交通機関はバスが中心です。あとは、織物女工さんの関係もあるかもしれませんが、美容室や理容室が小さい町にしてはかなり多いですね。

藤原さん 今はだいぶ減ってしまいましたが、昔はお菓子屋さんも町内にたくさんあったんですよ。今もドラッグストアや商店、銀行が多く、町中心部は徒歩で生活に必要なものが十分に揃いますし、県庁所在地の福島市も車で約30分の生活圏内。自然豊かで、利便性も高い「ちょうどいいまち」です。この「ちょうどいいまち」という言葉は町のスローガンにもなっています。

――川俣町は南東部に位置する山木屋地区が避難指示区域に指定されました。原発事故後の人口の変化はいかがでしょうか。

藤原さん 山木屋地区は2017年に避難指示が解除されましたが、帰還住民は2022年1月時点で約半数にとどまっています。町内全体で見ても、約30年前、当時私の中学校の同級生は約300人ぐらいいましたが、今では出生数が50人ほどまで減ってしまうなど、震災後は特に人口が減少しています。そのため、コミュニティを存続させるには新しい外部の力を活用しなければならないと考えています。何らかの意識や目的を持って町に来てくれる方を呼び込んでいきたいです。

絹織物、地鶏、花き。特産品の魅力ある町

川俣町特産のトルコギキョウ

――主要な農産物にはどのようなものがありますか。

藤原さん 町ならではと言えば、花きですね。山木屋地区では30年以上前からトルコギキョウの生産が盛んで、ブランド化されているため生産者の収入は安定しています。しかし、生産者のうち約3分の2は後継者がいない状況です。

後藤さん 震災後は近畿大学からの支援を受けてアンスリウムの生産が始まりました。これまで国内で流通するアンスリウムはそのほとんどが輸入品でしたが、コロナ禍で海外からの流通が滞っているため単価が上がっており、追い風が吹いていると聞いています。

アンスリウム

――実際にはどのような方に移住してもらいたいとお考えでしょうか。

藤原さん 町の特産品を活用して何らかの事業を推進してくださる方です。4軒の織屋が残る「川俣シルク」や、地鶏として売り出している「川俣シャモ」を、企画力や発信力がある方の力を借りて町の魅力として活用していきたいですね。シャモは町内で食べられる店がなかなか増えない実情もあります。町では移住してトルコギキョウや川俣シャモの生産を行う方に対し、最大200万円の支援金を交付する制度もあります。

後藤さん 花きも含め、この規模の町でこれだけ多くの特産品があるのは非常に珍しいのではないでしょうか。

――特産品の活用としては、地域おこし協力隊の募集もされているそうですね。

藤原さん 現在(2022年1月)は川俣シルクやアンスリウム、トルコギキョウに関わってくださる協力隊員の募集を行っています。

川俣シルクは実際に技術を伝承してくれる方など担い手となる方はもちろん、営業や企画のスキルのお持ちの方に来ていただきたいと考えています。魅力的な特産品が多い一方、情報発信やPRはこれからになります。地域の飲食店と連携した企画やブランディング、販路開拓など、担い手になる以外にも移住希望者の方がこれまでのスキルを活かして挑戦できる募集案件もあります。

現在、3年の任期終了以降も独り立ちしやすくなる仕組みを構築しているところです。農業であれば農地や農機具などの確保の方法を伝えたり、起業するのであれば事業計画や資金確保のフォローをしたりなど、支援制度を体系立ててご紹介できるよう準備を進めています。協力隊でご活躍いただいた方に定着していただくためにも、任期後もチャレンジがしやすい仕組みをつくっていくことが大切だと思っています。

移住者向けに空き家の改修費用を支援

――住宅の供給事情はいかがでしょうか。

菅野さん 空き家がかなり多いため、県外からの移住者向けに空き家の改修費用として最大100万円を支援する制度があります。この制度をより有効に活用していただくためにも、町で管理している「空き家バンク」のデータがより拡充されればいいと思います。町内にはアパートや公営住宅もあり、住まいの選択肢は豊富です。今後は移住者を対象に町営住宅が利用しやすくなるような施策が検討されています。

――仕事の確保という面ではいかがでしょうか。

藤原さん 製造業や福祉施設など、働く場所は多種多様です。震災後、工業団地を中心にさまざまな企業を誘致しており、現在増設を考えている企業様もいらっしゃいます。

――町による子育て支援について教えてください。

菅野さん 移住者に限った話ではありませんが、子どもが生まれた時に住民登録から1年以上経過していれば10万円のお祝い金を受けることができます。また、子どもが小・中学校に入学する時には子ども1人につき5万円を支給する制度もあります。

――今後、移住支援策として強化していきたい点について教えてください。

菅野さん 「note」のアカウントでイベントの告知や移住者の紹介を行うなどさまざまな形で情報発信を進めています。町としての広報はこれまで町民向けのものに留まっていましたが、移住希望者へ情報を届けるためにも外部への発信に力をいれていかなければならないと考えています。


■川俣町移住・定住相談支援センター
住所:〒960-1492 福島県伊達郡川俣町字五百目30番地(川俣町役場西分庁舎1階)
Tel:070-4851-6912
Mail:iju@kawamata-gurashi.jp
https://kawamata-gurashi.jp/

※所属や内容、支援制度は取材当時のものです。最新の支援制度については各自治体のホームページをご確認いただくか移住相談窓口にお問い合わせください。